過払い金の返還拒否!こんなときはどうすればいい?

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前回の記事では、「実際に過払い金請求を行う際の手順」についてまとめました。今回は、「無事に返還が進んだ場合のモデルケース」と「拒否されたケース」について検証していきます。

【今回の特集記事を最初からご覧になる場合 『自分でできる!カンタン過払い金請求法!まずは今の状況を確認する!』からお読みください】

無事に返還が進んだ場合のモデルケース

内容証明が相手方に届くと、通常は、相手方から返信の手紙、ないしは電話連絡が入ってきます。満額の返還に応じてくれるようなときは、その旨の連絡が入ります。多くの場合、消費者金融側から「減額して欲しい」という交渉の電話がかかってくることが多いようです。

比較的良心的なところで、70~85%程度の金額を提示してくるケースが多いようです。経営が厳しいと、40%減から80%減の提示をしてきたり、分割での返還や、半年以上先の返還期日の指定をしてくるケースもあります。

もし、期日の2週間を過ぎても連絡がないようなときは、こちらから、確認をかねて相手方へ電話を入れてもかまいません

過払い金の減額請求に応じるか応じないか?は、債権者であるあなたに決定権があります。満額でなければ譲らないと突っぱねるのも自由ですが、その場合、相手も同様に態度を硬化させて、法的な措置(少額訴訟や、支払督促手続...後述)へと移行せざるを得ない可能性がでてきます。そうなると、素人が処理するのは難しいケースもあるでしょうし、時間も費用もかさみ、返還請求額に対して割に合わなくなってしまいます

相手の提示する金額で満足できるのであれば、早期に決着することを優先して、減額に応じるのも選択肢の一つとして検討しておきましょう。

返還が確定すると、返還金の振込みがなされます。相手方からは、(名称は会社によって違いますが)「返還によって和解したことを証明する書類」が送られてきます。これに記名捺印をして返送すれば、過払い金返還請求手続きは完了となります。

拒否されたときはどうしたらいい?

「相手が内容証明の受け取り拒否をしたらどうするの?見てなければ請求が有効とは言えないんじゃないの?」と心配される方がいますが、これは大丈夫です。

受け取り拒否は、「一旦届いたものを、受け取らないという意思表示をした」という意味になり、届いたことには変わりがないので開封していなくても法律上は届いたとみなされます

この場合、「受け取り拒否」とサインした郵便物が返送されてきますので、未開封のまま専用ファイルに保管して、早急に弁護士または、司法書士に相談しましょう。

ただし、居留守を使うなどで「不在配達」となり返送された場合は、「届いた」とはみなされません。受け取り拒否よりも悪質な拒否の仕方とも言えます。このような場合も、返送された内容証明は未開封のまま保管して、同様に専門家に相談しましょう。

上記2点の場合は、相手方には返還する意思がないとみなされますから、少額訴訟や支払督促手続などの法律的な対応が必要になる可能性が高いです。

弁護士や司法書士の職印がついた内容証明や電話で、慌てて態度を変化させる場合も考えられますので、相談の後、相手の出方を見てその後の手続きを進めていきましょう。

少額訴訟

あくまでも満額返還に応じて欲しい、または、提示された金額が少なすぎるなどの状況のときは、裁判所を利用して訴訟(裁判)を起こして決着をつけることになります。

過払い金返還を目的に訴訟を起こす場合、「返してもらうべき金額(「訴訟物の価額」といいます)」によって、利用できる手続と裁判所が変わり、金額に応じて裁判所に納める手数料も変わって来ます。

請求金額が元利合わせて140万円までは簡易裁判所、140万円を越えると地方裁判所での裁判を行うことになります。

元利合計が60万円までは、簡易裁判所の少額訴訟が利用できます。

訴状は、簡易裁判所に3枚転写式の簡易な用紙が用意されていて、簡単に記入することが出来ます。手書きが大変という場合は、パソコンで作成して3枚同じものをプリントアウトして提出しても構いません。訴状には、

・ 取引があったこと
・ 過払いが生じていること
・ 請求をしたが、返還されていないこと

の経緯を、時系列に沿って簡潔にまとめます。

これに、取引履歴や、引き直し計算書、内容証明のコピーと配達証明ハガキのコピーなど、証拠となる書類をつけて提出します。手数料として、収入印紙と、訴状を相手に送るための切手代が請求されます。

裁判所の近くでも購入できる場合がほとんどですが、おおよその金額を聞いておいて、多めに用意しておくと、スムーズに進みます。

裁判は会議室のようなラウンドテーブルで行われ、会議のような雰囲気です。本人の訴訟が難しい場合は、弁護士のほか、認定司法書士も代理人行為ができるので、通常訴訟よりも使いやすい制度であるといえます。

訴状の作成が自分では難しい場合は、弁護士、司法書士に作成代行を依頼して進めることも出来ます。

ただし、相手方(被告)の申し立てにより、通常訴訟に移行する場合もあります。また、過払い金が高額に及ぶ場合は、利用することが出来ません。

裁判所:少額訴訟の説明
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_04_02_02/index.html

支払督促手続

相手方から返還の同意があったのに、期日を過ぎてもなかなか返還が行われないような状況で、金額が140万を超えるような場合は、支払督促手続を利用することも考えられます。

支払督促手続きは、金銭債権のみに利用できる裁判所の手続きです。裁判所を通じて相手方に書類が届いてから2週間までに相手から異議がでなければ、申立人の主張が一方的に判決されるものです。

少額訴訟のような金額の上限がないので、高額の過払い金でも利用することができます。所定の書類の提出(郵送で可)と審査だけで、訴訟のような弁論期日呼出がないため、裁判所に出向く必要もありません。手数料も、通常の訴訟のおよそ半額程度で済むことが多いです。

相手方に仮執行宣言付支払督促が発給されるため、差押などの方法で請求(過払い金)を回収することが出来ます。相手が交渉に応じる姿勢がなく、訴訟までするとは思っていないようなときにも、強い請求姿勢を示すという意味では効果が望める面もあります。

ただし、異議が出た場合は通常訴訟へと移行するため、相手から反論される恐れがあるときは不向きです。また、相手方の所在が不明の場合は、支払督促手続の利用はできません

書式は下記のホームページでダウンロードできます。これに、取引履歴、引き直し計算書、内容証明のコピー、配達証明ハガキのコピーなどを添付して、収入印紙、切手と一緒に裁判所へ提出します。(手数料も案内があります)

裁判所:支払督促手続
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_04_02_14/index.html

民事訴訟になった場合

支払督促の後、異議が出た場合、または、案件が複雑で上記の方法が採れないときは、訴訟を提起することになります。

訴訟を提起する場合は、通常は被告(この場合は消費者金融業者)の住所地が管轄となります。140万円までは、簡易裁判所で扱うことが出来ますが、それ以上は地方裁判所の案件となります。

過払い金返還請求訴訟(裁判)は、原告である債権者(借りた人)が、裁判所に訴状を出すところから始まります。訴状の作成そのものは、弁護士や司法書士などから助言してもらうことが出来て、雛形があれば、素人でも可能です。

しかしながら、訴訟は訴状を出して、終わりではありません。その後、何度も口頭弁論期日が来るたび裁判所に出頭しなくてはなりませんし、欠席すれば、相手の主張を認めたことになります。(口頭弁論期日は、第1回目のみ、欠席が認められます)

従って、本人訴訟であれば、日中仕事をしているサラリーマンの方は、そのたびに休みを取らなくてはならないことになります。

金銭債権の民事訴訟は、ほとんどの場合、弁論準備手続に入り、「準備書面」という書類を作って、お互いの主張を整理することになります。

この「準備書面」は、専門用語を理解していて、法律に適合した論旨を適切な語句で主張を書かなければならないため、素人には難しい作業になります。

不可能ではありませんが、この段階が必要となった場合は、本人訴訟はかなり難しく、弁護士(140万以下なら認定司法書士)に依頼をするほうがよいでしょう。

そもそも、訴訟というものは、精神的にとてもストレスが大きい活動でもあり、時間もかかります。手間や費用対効果を考えると、あまり得策とは言えません。なるべくなら、訴訟以外の方法を使って、解決ができないかを充分検討してみることをお勧めします。

金額が大きくなるほど、訴訟費用も高くなりますから、コストも考えて、ほどほどのところで引き下がる判断も必要でしょう。

過払い金の金額が100万円以下であるなら、返還だけを目的として、利息や遅延損害金までは請求しないほうが、短期間で返還してもらえることもあります。あまり、欲をかかないことも成功の秘訣です。

これから過払い金請求を検討しているのであれば、
現役弁護士が語る!これから過払い請求するときに気をつけること
も参考になると思うのでぜひお読みください。

【この記事の筆者】
槙野 由佳(仮名)
1960年代後半生まれ、浪費癖のある夫の度重なる転職のため、食費にも事欠く生活を強いられる。 物販系のクレジットカードでリボ払いの生活費を借りたことから、雪だるま式に膨らむ負債のために、夫婦の合算で700万の借金を負い、20代の大部分を、返済に追われる生活で過ごす。夫の自己破産をきっかけに離婚。自分名義の返済を続けるうち、金利の差額を利用して借り換えをすることで債務を縮小し、2年ほどで完済に成功する。 その後も、土地購入や再婚した夫の事業で巻き込まれ型のトラブルに遭遇する等、波乱に満ちた30代を過ごした。子供の手が離れた2年前より、夫の仕事の傍ら、フリーライターとして過払い金や借金返済、任意売却、公的福祉関連の記事を執筆している。

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