計算が苦手な人でもよく分かる!グレーゾーン金利の解説と具体例【Q&A】

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グレーゾーン金利。

少し前までニュースや新聞などで見かけることも多かったので、記憶に残っている方も多いと思います。

しかし、この「グレーゾーン金利」とはそもそも何なのか?、正確に理解しようとすると、これが意外にややこしいのです。

グレーゾーン金利の中身を正しく理解するためには、金利を制限する2つの法律-利息制限法と出資法-について学ぶ必要があります。

もちろん、「金利とはどういったものか」理解していることが大前提です。

本記事では、いまさら聞けない「グレーゾーン金利」について、下記の見出しに沿ってできるだけやさしく解説していきます。

そもそも金利ってなんだっけ?

グレーゾーン金利の話に入る前に、簡単に金利について説明したいと思います。「金利?そんなの知ってるよ!」という方は読み飛ばしてください。(金利の詳しい説明はこちらです。)

お金を借りると、借りたお金(元本)に利息をつけて返済しなければなりませんよね。

その利息がいくらになるのかを決めているのが「金利」です。金利は、通常1年単位、元本に対する割合(%)で表されます。

例えば、10万円を1年間借りるとしましょう。

金利が10%であれば、1年後に支払うお金は

元本10万円+利息1万円(=10万円×10%)=計11万円となります。

金利が15%の場合は、

元本10万円+利息1万5,000円(=10万円×15%)=計11万5,000円となります。

貸金業者としては、金利が高ければ高いほど儲かるわけですから、「できるだけ高い金利で貸したい!」ですよね。

しかし、金利は法律で制限されていて、自由に設定することはできません。

金利を制限する2つの法律によって生まれた「グレーゾーン金利」

2010年6月18日 改正貸金業法および改正出資法(以下、あわせて「改正法」)が施行されました。

これによって、貸金業者がお金を貸出す際の金利は、

元本 上限金利
10万円未満 20%
10万円以上100万円未満 18%
100万円以上 15%

上記利率に制限されるようになったのです。

例)
150万円貸出す場合、設定できる金利は15%以下
30万円貸出す場合、設定できる金利は18%以下

この制限は、もともと「利息制限法」という法律で定められていたものです。

利息制限法は、貸金業者に限らず、あらゆる金銭の貸し借りにおける金利を制限する法律ですが、違反したときの罰則はありません

金利を制限する法律はもうひとつあります。
出資法(出資の受入れ、預り金および金利等の取締りに関する法律)です。

出資法では、元本の金額にかかわらず、29.2%を超える金利での貸出しを禁止していました。(平成22年6月17日まで)

そして、これに違反すると、5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金が科される可能性があります。

さて、ここまでの内容を整理しましょう。金利を取り締まる法律が2つでてきたので、下記の表にまとめてみました。

  利息制限法 出資法
上限金利
  • 元本が10万円未満の場合、上限20%
  • 元本が10万円以上100万円未満の場合、上限18%
  • 元本が100万円以上の場合、上限15%
上限 年29.2%
(平成22年6月17日まで)
罰則 なし 5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金

つまり、改正法施行前(平成22年6月17日まで)は、29.2%を超える金利で貸出を行わない限り、処罰の対象とはならなかったのです。

もうおわかりだと思いますが、グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間の金利のこと。

元本別にまとめると、

元本 グレーゾーン金利
10万円未満 20%超~29.2%以下
10万円以上100万円未満 18%超~29.2%以下
100万円以上 15%超~29.2%以下

利息制限法には触れているけれども、出資法には触れていない何ともグレーゾーンな金利ということで、「グレーゾーン金利」という名前が定着しました。

改正法施行前は、多くの貸金業者がこのグレーゾーン金利でお金を貸出していましたが、改正法によって、出資法の上限金利が利息制限法と同じ水準(元本によって年15~20%)に下げられたのです。

ちなみに、改正貸金業法も、利息制限法の上限金利を超える金利での貸出しを禁止しています。

違反した場合、金融庁から営業停止処分を受ける可能性があります。

つまり、現在は、

元本 上限金利
10万円未満 年20%
10万円以上100万円未満 年18%
100万円以上 年15%

上記の利率以上の金利で貸出しを行うと、

  • 営業停止処分(改正貸金業法より)
  • 5年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金(改正出資法より)

以上のような処分を受ける可能性があるのです。

(このような消費者金融に関する細かなルールは、貸金業務取扱主任者試験のテキストなどで学ぶことができます)

払い過ぎた利息を取り戻せ!過払い金請求の大ブーム

改正法施行前まで、多くの利用者が貸金業者に言われるままグレーゾーン金利を支払っていました。利用者はそれが払い過ぎた利息であることを知らなかったのです。

しかし、ワイドショーがグレーゾーン金利の特集を組んだり、法律事務所が「払い過ぎた利息を取り戻せます!」というCMを流すようになると、利用者たちは「今まで支払ったグレーゾーン金利分の利息を返還するよう」貸金業者へ要求するようになりました。

これが俗にいう「過払い金請求」です。

過払い金請求が殺到したせいで、多くの貸金業者は倒産や経営危機に追い込まれました。もちろん大手も例外ではありません。

例えば武富士は、推計2兆4,000円億円の過払い金が発生し、2010年9月28日会社更生法の適用を申請しました。事実上の倒産です。

過払い金請求前に知ってほしい!思わぬ落とし穴

過払い金請求を検討する上で、知っておいてほしいことが3点あります。

改正法施行後はグレーゾーン金利が発生しない

2010年6月18日(改正法施行)以降に借りたお金について、グレーゾーン金利が発生していることはまずありません。

過払い金請求の権利は期限付きのもの

過払い金請求の権利は期限付きです。10年間行使しないと時効により消滅してしまいます。

では、この「10年」はいつからカウントされるのでしょうか?

普通は「返済時」からカウントします。通常のキャッシングやカードローンのように、分割で返済していく場合は完済時にカウントが始まります。

成果が出ないこともある

せっかく過払い金請求をしたのに、全く成果がでないこともあります。

例えば、借入先の会社が倒産してたら、取り戻すことはできませんよね。過払い金が発生の可能性があるなら、なるべくはやく行動に移しましょう。

過払い金請求するとお金はどのくらい戻ってくる?シミュレーション

最後に、過払い金請求でグレーゾーン金利分の利息を取り戻せた具体的なケースを考えてみましょう。

設定

仮にあなたが以下の条件でお金を借入れたとします。

時期:平成20年
金利:28%
借入れ金額:A社から5万円、B社から50万円、C社から100万円
借入れ期間:1年

1年後、あなたは、

A社へ
5万円+1万4,000円(=5万円×28%)=6万4,000円

B社へ
50万円+14万円(=50万円×28%)=64万円

C社へ
100万円+28万円(=100万円×28%)=128万円

上記の金額をそれぞれ返済しました。

その後、改正法が施行され、Lさんはグレーゾーン金利や過払い金請求の存在を知ります。

そして、A社、B社、C社に対し過払い金請求を行ったのです。

A社からは、
1万4,000円(=5万円×28%)-1万円(=5万円×20%)=4,000円

B社からは、
14万円(=50万円×28%)-9万円(=50万円×18%)=5万円

C社からは、
28万円(=100万円×28%)-15万円(=100万円×15%)=13万円

これらを過払い金-つまり、グレーゾーン金利の分の利息-として取り戻すことができました。

  借入額 借入れ時の金利 返済額(a) 改正法後の金利 返済額(b) 取り戻せる額
(a-b)
A社 5万円 28% 6万4,000円 20% 6万円 4,000円
B社 50万円 64万円 18% 59万円 5万円
C社 100万円 128万円 15% 115万円 13万円

この記事の筆者

里衣 重英(仮名)
1969年生まれ。法学修士。20年余りのサラリーマン生活(団体職員)を経て退職し、現在はフリーライター。10年以上法務部に在籍した経験を活かし、法律関係の記事を中心に執筆活動を行っている。自身の借金は住宅ローン程度だが、法務部時代に借金を重ねて債務整理を行った、あるいは行おうとしている個人や法人を相手にしている部署からの相談を多く受けていた経験も記事に活かしている。

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