運命の相手は結婚詐欺の常習犯。5,000万を騙し取るその手口とは?

被害総額5,000万円の結婚詐欺。

今回は50代の独身女性が身も心もすべてを投じた男性に、5,000万円もの大金を騙し取られたときの体験談をお送りします。

彼女は詐欺師をまったく疑うことなく、次々とお金を渡してしまうわけですが、そこには詐欺師のどんなテクニックが使われていたのでしょう。

  • 結婚詐欺師は、どうやって相手の懐にしのびこむのか
  • 結婚詐欺師を捕まえて罰することはできるのか
  • 結婚詐欺師からお金を取り戻すことはできるのか

この事件の元担当刑事である筆者が、このようなポイントに着目しながら、事件の一部始終を紹介していきます。

私は大丈夫と思っているあなた。

もしかしたら、あなたこそ「結婚詐欺のターゲットになりやすいタイプ」かもしれませんよ。

※1
結婚詐欺とは、「結婚を名目に金銭をだまし取る犯罪」です。そのため、結婚を意識する言動がなければ、金銭をだまし取られても結婚詐欺には該当しません。また、単に結婚の約束を破ったという場合も、金銭がからんでいないため結婚詐欺ではありません。

被害総額5,000万円の結婚詐欺

今回 結婚詐欺の被害者になってしまった智子(仮名)は50代後半の未婚女性。

市内でも有名な大病院の看護師長をしているベテラン看護師です。

家には高齢の母親がいるため、仕事と介護に追われる忙しい生活を送っていました。

そんな智子の唯一のストレス発散法は「テレクラ」。

娯楽でしかなかったテレクラ遊びで、智子は思いがけず素敵な男性に出会います。

この出会いが、智子の人生を大きく狂わせることになるのです。

テレクラで思いがけず出会った紳士

智子が利用していたのは、プリペイドカードを購入して電話をかけるタイプのテレクラです。

夜、母親が寝付いた後、顔を見たこともない男性と会話をするのが唯一の楽しみでした。

ある日、智子がいつものようにテレクラ遊びをしていたときのことです。

テレクラを利用する男性の大半は、下心満載の卑猥な話をしてくるのですが、この日の相手は違いました。

「智子さんは、看護師さんなんですね」

「へぇ、家では介護もされているんですか。それは大変でしょう?」

相手の男性は、智子の仕事のこと、母親の介護のことを親身になって聞いてくれたのです。

その男性は竹山(仮名)と名乗りました。

年齢は60代で、今は中国語の翻訳業務を取り扱う会社を経営しているとのこと。

智子は、今までに出会ったことのない優しく紳士的な男性にすっかり夢中になってしまいました。

ふたりは電話番号を交換し、毎晩 電話でお互いのことを話すようになります。

恋人同士のような会話に、智子の想いは膨らみ続けるばかり。

「早く直接会って話してみたい」

久しぶりに恋愛感情を抱く相手を見つけた智子は、仕事や介護の疲れも忘れるほど有頂天になっていました。

出会って1週間で交際に発展

テレクラで竹山と出会ってから1週間後、とうとう智子は竹山と直接会うことになりました。

待ち合わせは市内のデパートの最上階にある喫茶店。

先に着いた智子が待っていると、1人の男性が近づいてきます。

「智子さん...ですよね?」

声をかけてきたのは、まさに「紳士」でした。

白髪交じりだが清潔にセットされたヘアスタイル、長身でがっちりした身体に清楚なジャケット姿。

竹山は、智子の想像以上に素敵な男性だったのです。

ふたりは、食事をしながら楽しい時間を過ごし、その日のうちに恋人の関係になりました。

プロポーズの日に500万円の無心

智子が竹山と付き合いはじめてから1週間後。

ふたりは九州の旅館に滞在していました。

そこで、智子は竹山からプロポーズされます。

「僕は仕事が忙しくて、なかなか家庭を大事にできないかもしれないけど、智子さん1人くらいなら幸せにできる。僕と結婚して欲しい」

竹山に夢中だった智子は、快くプロポーズを受け入れました。

「竹山さんと結婚すれば、仕事や介護だけに追われるだけでなく、1人の女性として安心して生きていける!」

智子にとっては、まさに幸せの絶頂です。

しかし、プロポーズと同時に竹山から意外なカミングアウトを受けます。

「実は、離婚した妻との間に高校2年生の娘がいるんだ。娘はオーストラリアに留学したがっているんだけど、経済的に難しくて...」

智子は、竹山の離婚歴にショックを受けましたが、「娘の留学費用が出せず困っている」という話をまったく疑いませんでした。

娘の留学に必要な費用は、学費や滞在費をあわせて約500万円とのこと。

肩を落とす竹山のことを助けてあげたい一心で、智子は決断します。

「あなたと結婚するなら、私も娘さんのためにできることをしたい。少しは貯えがあるし、ホームステイ費用、代わりに出してもいいよ」

智子には、仕事一筋の人生で貯えた預金が4,000万円近くありました。

旅行の翌日、智子は自分名義の口座から現金500万円を引き出し、竹山に手渡します。

竹山は智子の手を取り、「ありがとう、本当にありがとう」と繰り返します。

智子は竹山の力になれたことが嬉しく、ふたりの絆もよりいっそう深まったように思えました。

相次ぐお金の要求...総額は4,000万円に

竹山の要求はその後も続きました。

  • 翻訳会社の運転資金として500万円が必要だが、海外口座にお金が入っているため引き出せなくて困っている
  • 従業員 数十人分の給料(1000万円)を入れたバッグを落としてしまい困っている
  • 取引先を呼ぶパーティーを主催したが、代金である300万円を先払いしないとならない
  • 前妻との間にもう1人娘がいて、その子が医学部へ進学することになったが、入学金も含めた準備金が500万円は必要

このように、竹山はさまざまな理由をつけてお金を要求してきました。

ひどいときは、数日おきに別の要求をされることもあったようです。

それでも、智子は竹山を一切疑うことなく、喜んで自分の口座からお金を引き出し、竹山に手渡していました。

お金を手渡すと、竹山は大げさなほど感謝してくれるので、智子は「大好きな人の力になれて嬉しい」という満足感でいっぱいだったのです。

また、現金を手渡すだけでなく、智子が竹山にモノを買ってあげることもありました。

あるときは、竹山が「海外の要人と会う仕事だから、二流メーカーのスーツを着ていてはナメられてしまう」と言うので、スーツを新調することに。

高級デパートで仕立てた一流ブランドのスーツは、約80万円でした。

また、あるとき、待ち合わせの場所に遅れてきた竹山に理由を聞くと、「高速道路で車から急に煙が出て、止まってしまったんだよ」とのこと。

「車がなければ竹山さんが困るし、安い車では仕事に差し障りがあるのでは?」と思った智子は、竹山に1,000万円の高級外車を買ってあげることになります。

こうして、智子が竹山のために使ったお金は、食事代などの細かな支払いを含めると4,000万円以上にのぼりました!

しかし、智子が竹山を不審に思うことは一切ありませんでした。

竹山は、ことあるごとに智子に結婚の話をして、智子を安心させていたのです。

最後の要求は1,000万円の「事業資金」

ふたりがつき合い始めて2ヶ月が過ぎた頃。

竹山から、「今度、新しく貿易の会社を立ち上げたいと思う。そのための資金が1000万円は必要なんだ」という話がありました。

しかし、智子の口座には、もう次の給料日まで過ごすのがやっとのお金しか残っていません。

それでも愛する竹山を助けたい一心の智子は、仕方なく母親に相談することに。

ほとんど寝たきり状態だった母親に、「実は私...結婚相手がみつかったの」と打ち明けると、母親は大喜びで起き上がりました。

いつも「自分のせいで智子が女性としての幸せを諦めたのではないか」と自身を責めていた母親にとって、智子の言葉は涙がでるほどうれしかったのです。

そして、智子は母親に「結婚相手の彼が事業を立ち上げるのに1000万円必要なの」と相談します。

すると、母親は「私の国債を解約していいから」と、戸棚にしまっていた国債の証書と印鑑を智子に渡してくれました。

翌日、智子は仕事の合間を縫って銀行へ行き、国債を解約して1000万円を受け取ります。

そして、その日のうちに全額竹山に手渡しました。

「この会社がうまくいけば、僕たちの老後は安泰だよ」

「病院を退職後は新しい会社の役員になってほしい。いや、なんならすぐにでも病院を退職して役員に就任してもらおうか」

将来のことを楽しそうに話す竹山の笑顔を見て、智子は幸せな未来がくることを確信していました。

しかし、そんな未来は訪れません。

すべてウソ?探偵の調査でわかった衝撃の事実

智子が1000万円を手渡した翌日から、竹山と連絡が取れなくなりました。

携帯に電話をかけても、圏外のアナウンスが流れます。

何日かは「きっと仕事で忙しいんだ」「もしかして急に海外に出張したのかしら」などと思っていましたが、さらに数日経つと、今度は解約のアナウンスが流れるようになりました。

「もしかして、不慮の事故に遭ったのでは?」と智子は心配になりましたが、直接自宅を訪ねることはできません。

なぜなら、竹山と会うのは市内の喫茶店やレストランばかりで、どこに住んでいるのかは知らなかったからです。

智子は、竹山から何度か聞いていた「自宅はF市にある」という情報を頼りに、知り合いの探偵事務所に相談しました。

手がかりは、「自宅がF市内にあること」と「竹山が新しく立ち上げると言っていた会社の社名」のみ。

それらをもとに探偵が調査を行ったところ、たしかにその会社はF市にありました。

しかし、調査の結果、おかしなことがわかります。

まず、その会社は最近設立されたものではなく、もう何年も前に設立された会社ということ。

また、取締役は竹山という苗字でしたが、竹山本人ではありません

不信感をつのらせた智子は、探偵と一緒にその会社を訪ねました。

そこにあったのは、竹山が話していたような立派なオフィスではなく、いわゆるレンタルオフィスだったのです!

智子はここでようやく気づきました。

竹山は新会社なんて設立していません。

きっと、娘たちを援助したいという話もウソだったのでしょう。

最初から結婚するつもりなどなく、智子はいいカモにされていただけでした。

智子は、レンタルオフィスのビルから飛び降りたくなるほど絶望しました。

次々とあきらかになる真実

竹山からお金をだまし取られたことを確信した智子は、探偵にすすめられ弁護士に相談しました。

すると、弁護士からも「間違いなく結婚詐欺なので警察に告訴するべき」とアドバイスされたので、智子は警察署に告訴状を提出します。

その後、すぐに警察の捜査が始まり、竹山の素性は簡単に判明しました。

実は、智子に名乗った「竹山」の姓は元妻の姓で、離婚しているのは本当でしたが子どもはいません。

案の定、娘2人の留学話や進学話はすべてウソ。

また、竹山が智子から受け取った1000万円で立ち上げた(?)という貿易会社は、書類上 竹山の実弟が経営していることになっていましたが、実際は業務実態がないペーパーカンパニーでした。

さらに、出会ったときに竹山が「自分で経営している」と言っていた翻訳の会社は、存在すらしてなかったのです。

運命の相手は結婚詐欺の常習犯

さらに調べを進めると、竹山には結婚詐欺の前科があることがわかりました。

それも1件だけではありません。

なんと、4件もの前科があったのです。

そのすべてが、智子と同じような手口の結婚詐欺でした。

警察は約半年間の張り込み・基礎捜査によって、「竹山が智子に伝えた内容がウソだった」という証拠を次々と集め、逮捕状を取ります。

そして、ついに車で帰宅した竹山を確保してその場で逮捕したのです。

なんと、竹山はF市の郊外にある一戸建ての借家で、離婚したはずの元妻と同棲していました。

詐欺師の周到な計画!お金の行方はわからぬまま

竹山は素直に犯行を認めました。

しかし、これは竹山が反省していたからではありません。

竹山にとって、自分が捕まることは想定内でした。

自分がいつ捕まってもかまわないように、周到な準備をしていたのです。

竹山にとっての準備とは、「だまし取った現金を隠すこと」

竹山は、犯行について一切の否認をしませんでしたが、だまし取った現金の行方だけは「わからない」「日々の出費で使い切ってしまった」の一点張りでした(智子に購入させた高級外車等もとっくに売却済みでした)。

警察は、竹山だけでなく弟や元妻についても調べましたが、それで判明したのは竹山が高級クラブで豪遊していたことと、貿易会社の役員報酬として弟に500万円を手渡していたことだけ。

結局、5,000万円のうちほとんどの行方はわからぬまま。

現金がどこにあるのかわからなければ、竹山を訴えることもできません(※2)

現金がないと、竹山が智子からお金をだまし取ったことも、竹山に支払能力があることも証明できないからです。

今思えば、竹山が智子から手渡しで現金を受取っていたのも、口座に記録を残さないためだったのでしょう。

竹山の犯行は、はじめからすべて計画されていたとしか思えない周到な犯行でした。

※2
智子がだまし取られた現金を取り戻すためには、竹山に対してお金の返還を求める訴訟(民事訴訟)を起こす必要があります。

刑罰を軽くするため!?疑惑の再婚

竹山は、自分の刑罰を軽くするための対策も打っていました。

なんと、勾留中に弁護士を通じて元妻と再婚したのです。

一般的に、独身者より既婚者のほうが刑が軽くなる傾向にあります(※3)

真意はわかりませんが、仮に元妻との離婚が犯行前の下準備で、「逮捕後は刑を軽くするために再婚する」ということまで計算していたのであれば、夫婦そろって恐ろしい詐欺師ですよね。

※3
身元を保証する家族がいる場合、裁判官も「周囲の支えによる社会復帰が期待できる」という判断を下しやすくなります。そのため、独身者より刑が軽くなるケースがあります。

懲役5年の実刑判決も回収できたのは800万円

結婚詐欺の立件は難しいと言われています。

なぜなら、「だますつもりはなかった」「自分は結婚するつもりはなかった」という詐欺師の発言が虚偽であると証明するのが非常に困難だからです。

しかし、今回のケースでは、「娘の留学や進学」「車の故障」「事業の立ち上げ」などの話がすべてウソであることを証明できたうえに、竹山が犯行を全面的に認めたため、有罪判決となりました。

数回の公判を経て竹山に下されたのは、懲役5年の実刑判決です。

前回の結婚詐欺から約10年が経っていたものの、一切の反省がないと判断され、重い刑罰が下されました(※4)

そして、智子は竹山に対する損害賠償訴訟を起こします。

相手は過去に有罪判決を受けた詐欺師ですから、裁判では智子の主張が全面的に認められました。

しかし、竹山本人には(所在がはっきりしている)資産がありません。

だまし取られた現金のほとんどが行方不明なので、差押さえや強制執行などの法的手段を用いても回収できる見込みはありませんでした。

結局、智子が取り戻せたのはたったの800万円だけ(竹山の弟が役員報酬として受け取った500万円を含む)。

※4
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」で、懲役10年に該当するのは数十億円、数百億円をだまし取るような巨額詐欺事件です。一般的に検察官の求刑は「被害額1,000万円につき懲役1年」といわれていますので、竹山のケースは、ほぼ求刑通りの重い刑罰といえます。

結婚詐欺は人の心を深く傷つける凶悪犯罪

取り調べの過程で、被害者や参考人が犯人の顔を確認する面通しというプロセスがあります。

智子は面通しのとき、約半年ぶりに竹山の顔をみましたが、悔しさのあまり取り調べ室の外で泣き崩れ、しばらく泣き止みませんでした。

また、判決後も、智子はひどく落ち込んでおり、「貯めてきたお金を使い果たし、母の貯えにまで手をつけてしまった。これから先、どうやって生きていけばいいのかわからない」と肩を落としていました。

大金を失っただけでなく、結婚を約束した相手に裏切られた彼女。

心に受けた傷は深く、ショックや落胆は相当なものだったと思います。

元刑事が語る「結婚詐欺師に狙われやすい人」

今回の被害者は50代の独身女性でしたが、どういう人が結婚詐欺の被害に遭いやすいのでしょうか?

また、結婚詐欺に遭わないために、私たちが気をつけるべきことはあるのでしょうか?

結婚詐欺の主要ターゲットは中高年層

結婚詐欺師は、主に下記のようなタイプの人を標的にします。

  • 結婚に憧れているが、これまで縁がなかった
  • 夫や妻と死別してしまい、心の穴を埋められない

このような状況の人は、「この機会を逃したら後がない」「老後も独りで過ごすのはいやだ」という焦りがあったり、「こんな自分でも異性と認めてくれる人に出会えた」という喜びを感じやすかったりします。

こういったタイプの人がもっとも多いのは、40代~60代の中高年齢層です。

特に、見た目が派手じゃない、異性への免疫がなさそうな人が狙われやすいようです。

金銭要求をキッパリと断ることが大事

それでは、どうすれば結婚詐欺の被害に遭わないためには、どうすればいいのでしょうか。

結論だけを言えば、「金銭の要求を断ればいいだけ」なのですが、これが簡単ではありません。

結婚詐欺師は人たらしなので、「好きな人の力になりたい」という気持ちを巧みに利用します。

また、被害者は「この人が結婚してくれなかったら後がない」という不安があるので、多少の無理なお願いは聞いてしまうのでしょう。

しかし、相手が本当に「結婚したい」と思ってくれているなら、金銭の要求に応じなくても交際は続くはずです。

とにかく、金銭の要求に応じないことが大切です。

→ 詐欺の被害事例と対処法

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