更新日:2016/04/29
「貯金をすべて妻に奪われた!」財産分与であなたの財産を守るには?
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評価を設定してください ×離婚により、元妻に預貯金などすべてを奪われ、最後は160万円もの借金を負うことになった慶尾さんの体験談をご紹介します。
離婚をすると、夫、もしくは妻の一方に多くの財産を取られてしまうケースが多く見られますが、泣き寝入りをする必要はありません。
今回は、慶尾さんの体験談をもとに、離婚後の財産分与について解説していきます。
財産分与とは、結婚生活の中で築き上げた夫婦の共有財産は双方で分けるというルールです。
慶尾さんは元妻にあっという間に預貯金を奪われてしまったわけですが、本当はどう行動すべきだったのでしょうか。
記事の後半で、「離婚後の財産分与」について弁護士の意見をもとに解説していきます。
- 財産分与の対象となる財産は?
- 財産分与はいつまでに行えばいいの?
- 具体的にどうやって財産分与を行うの?
体系的にまとめていますので、離婚を控えている方や離婚を検討している方は、後半だけご覧いただいてもよいと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
体験者の情報
名前:慶尾 六郎(仮名)
性別:男性
当時の職業:出版業
当時の年齢:44歳
当時の借金の合計額160万円
元妻にすべてを奪われ160万円もの借金を負うことに(体験談)
東京在住で比較的 高給取りな当時44歳の私は、順風満帆な生活を送っていました。
しかし、2008月1月のある日、突然、妻から離婚を言い渡されます。
さらに、その直後に実家の母が心臓病で倒れ、急いで帰郷しなければならない状況に。
パニック状態になった私は、妻に急かされるまま離婚届にサインし、故郷に帰りました。
幸い母の命に別状はありませんでしたが、心臓病なので油断はできません。
約2週間、休暇をもらい、入院する母に付き添うことにします。
そして、3週間後、母の容態もすっかり落ち着いたので、私は東京の自宅マンションに帰ることにしました。
「なんだこれ!」
玄関を開けた私の目に飛び込んできたのは、スッカラカンの部屋でした。
嫌な予感がしました。
私はとっさに銀行口座を調べようと思い、銀行のATMへ直行。
通帳をみると、案の定、その月の給料も、預金も、すべて持ち出されていました。
「どういうことだよ...」
とりあえず、元妻の携帯に電話をします。
すると、元妻はあっけらかんとした態度で、
「私は女だから一人で生きてくのに大変なの。あんた、男だからお金なくても大丈夫でしょ」
と言ってきたのです。
念のために弁解しておきますが、私は浮気もDVもギャンブルもしていません。
私の過失で離婚するわけではないので、慰謝料は発生しないはずです。
それなのに、預金や家具などの財産はすべて元妻に奪われてしまいました。
財布の中には3万円しか残っていません。
次の給料日までは3週間以上あります。
家賃や光熱費などを踏まえると、少なくとも15万円以上は必要です。
とにかく急場をしのぐため、私は人生で初めてキャッシングをすることになりました。
急場をしのぐために人生初のキャッシング
当時の私はDCカード、マルイカード、ライフカードを持っており、それぞれ100万円、40万円、5万円のキャッシング枠がついていました。
「とにかく家賃の安いアパートに引っ越さなければ!」
そう思った私は、近くの銀行ATMへ行き、DCカードを使って50万円をキャッシング。
そのお金を、引越し代、敷金、礼金などにあて、格安アパートに引っ越すことができました。
DCカードの支払方法はリボ払いなので、毎月の支払いは2万円で済みます(金利は15%)。
しかし、これが大きな落とし穴だったのです。
2万円のうち、元金の返済にあてられるのは1万6500円程度。
つまり、毎月3,500円もの利息を払うことになります。
このときは とりあえずお金が必要だったので意識していませんでしたが、まんまとカード会社の術中にはまってしまったのですね。
キャバクラにハマり急激に増えていく借金
離婚後、私は糸の切れた凧のように遊びまくりました。
暇があればコンサートに行き、CDをオトナ買いし、夜はキャバクラ通いの毎日。
気がつくと、DCカードのキャッシング枠の100万円を使い切り、マルイカードのキャッシング枠40万円にも手を出していました(マルイカードは月1万円の返済で金利は18%です)。
当時の私は中小出版社の記者で、そこそこの給料をもらっていたため、「借金なんてすぐに返せるだろう」と思い込んでいたのです。
借金が増え続けても気にせず、私は遊び続けました。
借金返済のため実家に戻ることを決意
お金のことを気にせず遊びほうけていた私ですが、毎月の返済が厳しくなると、「さすがにまずい」と気づき始めます。
そして、ようやく冷静になり、「総額160万円の借金をどうやって返していくか」真剣に考えるようになりました。
頭を悩ませた結果、私が出した結論は「実家に帰ること」。
実家に帰れば、家賃、光熱費、食費などの生活費はタダです(病気の母に土下座することになりますが)。
そして、勤めていた会社からは嘱託という形で仕事を振ってもらえることになりました。
こうして2010年4月、私は東京を出て、故郷の街に戻ったのです。
借金せずに済む方法があったのでは?遅すぎる後悔
今思い返すと、「なぜ」と思うことばかりです。
「なぜ元妻に取られたお金やモノを取り返そうとしなかったのだろう?」
弁護士に相談すれば、何か手を打てたかもしれません。
「なぜ親や友人を頼らなかったのだろう?」
恥を捨ててまわりに相談すれば、借金せずに済んだかもしれません。
「なぜ自暴自棄になって遊んでしまったのだろう」
もっとはやく冷静になれば、こんなに借金がふくらむこともなかったでしょう。
ただ、どんなに後悔しても時間はもとに戻りません。
残り40万円を切った借金を完済するため、しばらくは仕事に精進したいと思います。
泣き寝入りをする必要はなかった!財産分与とは?(編集より)
一般的な離婚では、結婚生活の中で築き上げた夫婦の共有財産は双方に振り分けられます。
これを財産分与といいます。
今回の体験者である慶尾さんは、元妻に預金や家具を一方的に奪われてしまいましたが、特に何も手を打ちませんでした。
もし、慶尾さんが財産分与のために手を打っていれば、少なくても家賃や生活費に困ることはなかったはずです。
そこで、ここからは弁護士のアドバイスをもとに、財産分与のポイントを解説していきます。
- 財産分与の対象となる財産・対象とならない財産
- 財産分与の請求期限
- 財産分与の3つの方法とそれぞれのメリット・デメリット
離婚を検討している、もしくは離婚後、一方的に財産を取られてしまった方に役立つ内容だと思います。
※
財産分与には、相手の離婚後の生活を一定期間保証することを踏まえて財産を分与する扶養的財産分与や、発生した慰謝料を含めて財産を分与する慰謝料的財産分与もありますが、今回は、「扶養や慰謝料支払いの必要はない」という前提で話をすすめます。
財産分与の対象となるものは何?
まずは、どんな財産が分与の対象になるのかを確認していきましょう。
代表的なものを下記に挙げてみました。
- 現金、預貯金
- 有価証券(株券、社債など)
- 家具、家電、車
- 不動産(建物、土地など)
- 美術品、骨董品(絵画、彫刻など)
- 高価な衣類(着物など)
- 高額な会員権(ゴルフ場など)
これらは結婚後に夫婦が得たものであれば、財産分与の対象となります。
名義は関係ありません。
たとえば、夫名義の口座にある預貯金も、妻名義で購入した株券も、夫婦の共有財産となり、財産分与の対象となります。
年金・生命保険・退職金も財産分与の対象
年金・生命保険・退職金も、場合によっては財産分与の対象となります。
年金
年金分割制度により、厚生年金と共済年金の年金記録を双方に分割することができます(夫婦どちらの名義であってもOK)。
対象となるのは婚姻期間中に納付した年金で、たいては2分の1ずつ振り分けられるようです(※1)。
※1
共働きで夫婦ともに厚生年金や共済年金に加入していた場合は、双方の年金記録を合算し、どのように分割するかを決めることになります。一方、どちらか片方が厚生年金や共済年金に加入しており、もう片方が扶養されている場合、平成20年4月1日以降の年金記録を2分の1ずつ振り分けることになります(平成20年4月1日より前の年金記録については、双方の話し合いなどで分割の割合を決めることになります)。なお、年金分割の手続きは、年金事務所で行わなければなりません。
生命保険
解約返戻金(※2)があるタイプの生命保険は、財産分与の対象になります(掛け捨てタイプの生命保険は対象外です)。
多くの場合、保険を解約しないまま「離婚時点での解約返戻金」を算出し(※3)、どの割合で分割するか決めることになります。
※2
解約返戻金とは、保険を解約した際に契約者へ払い戻されるお金のことです。
※3
離婚時点での解約返戻金(金額)については、保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。
退職金
退職金をもらえる可能性が高い場合は、財産分与の対象となります。
「退職金をもらえる可能性が高い場合」の明確な定義はありませんが、過去の判例を見るかぎり、下記のような条件を満たす必要があるようです。
- 会社が規定する退職金の支給条件を満たしている
- 会社の経営状況に問題がない
- (定年を含む)退職までの期間が10年未満
- 離婚時の勤続年数が20年以上
一方、下記のようなケースは財産分与の対象になりません。
- 退職までの期間が何十年もあり、退職金の発生が未確定の場合
- 退職金の発生から離婚までの間に退職金をすべて使ってしまった場合
退職金が財産分与の対象となる場合は、「退職金のうちどの部分が分与の対象となるのか」「どのような割合で分けるのか」などのことを決めなければなりません。
借金も財産分与の対象!
ここまではプラスの財産を挙げてきましたが、婚姻期間中に形成したマイナスの財産、つまり借金も財産分与の対象です。
代表的なものは下記です。
- 生活費や教育費を支払うための借金
- 家族の医療費を支払うための借金
- 自動車ローン
- 教育ローン
一方、下記のような借金は財産分与の対象になりません。
- 夫婦のどちらかが、収入に見合わない贅沢をするためにお金を借りた
- 夫婦のどちらかが、ギャンブルのためにお金を借りた
- 奨学金など結婚前から負っていた借金
また、借金が財産分与の対象になる場合は、「どちらが返済するか」「どういう割合で返済していくか」などのことを決めなければなりません。
住宅ローンを組んでいる場合はどうなる?
住宅ローンを組んでいる場合は、財産分与を行う時点の「住宅の価格」と「ローン残高」がポイントです。
「住宅の価格 > ローン残高」の場合は、住宅の価格からローン残高を差し引いた金額が財産分与の対象となります。
たとえば、住宅の価格が1,000万円、ローン残高が600万円の場合、400万円が財産分与の対象です。
一方、「住宅の価格 < ローン残高」の場合、住宅に財産としての価値はありません。
この場合は、「離婚後どちらが住むのか」「どちらが残高を支払っていくのか」「売却するのか」などを夫婦間で話し合うことになります。
いつの時点での財産が分与の対象になるの?
財産分与には基準時があります。
財産分与の基準時とは、「いつの時点での財産を基準に財産額を評価するか」という基準のことです。
財産分与の基準時は、離婚時または別居時です。
離婚時まで同居していた場合は、その時点まで夫婦が財産を積み上げてきたことになるので、離婚時にあった財産が分与の対象になります。
一方、離婚前に別居してしまった場合は、別居時にあった財産が分与の対象になります。
財産分与の対象とならないもの
次に、財産分与の対象とならない財産についても確認しておきましょう。
まず、結婚前から個人が所有していたものは財産分与の対象になりません。
たとえば下記のようなものです。
- 結婚前に個人で所有していた預貯金
- 結婚前に個人で購入した有価証券(株券、社債など)
- 結婚前に個人で所有していた家具、家電、車
結婚の時に実家からもらった財産(家具、家電など)も対象外です。
また、個人が相続や贈与で得た財産も、財産分与の対象外となります(相続時期や贈与された時期にかかわらず)。
たとえば、下記のような財産です。
- 個人が親から相続した現金や不動産
- 個人が他人から贈与された現金や骨董品
また、明らかに個人の持ち物と特定できるものは財産分与の対象になりません。
たとえば、女性用の衣類や化粧品は、明らかに妻の所有物なので対象外となります。
また、結婚指輪や婚約指輪、夫婦間のプレゼントも個人の所有物とされ、財産分与の対象外です。
財産分与はいつまでに終えればいい?
次に、財産分与請求の期限についてポイントを押さえておきましょう。
財産分与はいつでも自由にできるわけではなく、「離婚から2年以内」という期限が設定されています。
くれぐれも、「期限が過ぎて財産分与できなかった」とならないように注意しましょう。
財産分与の方法は3つ!それぞれのメリット・デメリット
財産分与には、下記3つの方法があります。
- 夫婦間で協議
- 家庭裁判所で財産分与請求調停(判決)
- 弁護士に依頼
ひとつずつ順番に説明していきますので、それぞれのポイントを確認しましょう。
夫婦間で協議
一般的なのは、「どの財産を」「どのように分けるのか」を夫婦間で話し合う方法です。
必ずしも財産を半分ずつにする必要はありません。
たとえ一方に財産が多く割り当てられることになったとしても、双方が納得すればOKです。
ただし、口約束だと後々トラブルになる可能性もあるので、離婚協議書と公正証書を作成しておきましょう。
離婚協議書は、「離婚の合意」「親権」「養育費」「財産分与」など夫婦で話し合った内容をまとめ、それに双方が合意したことを証明する書類です。
離婚協議書を書くにあたり、厳密なルールはありません。
よって、自分たちでも作成できますが、離婚協議書には法的効力がないので公正証書も作成しておきましょう。
公正証書とは、法律の専門家である公証人が法律に従って作成する、裁判の判決と同等の効力をもつ書類です。
たとえば、離婚協議書で財産分与の取り決めをした後、相手が支払いに応じなかった場合、通常は訴えを起こして判決を待たなければなりません。
一方、離婚協議書をもとに公正証書を作成しておけば、裁判なしで差押さえをして回収することができるのです。
公正証書は、公証役場で作成できます。
離婚協議書や離婚についての合意内容を公証人に確認してもらい、問題がなければ公正証書を作成します。
急いでいる場合、双方が揃って公証役場へ行き、その日のうちに作成することも可能です。
離婚協議書(もしくは同意内容のメモ)、双方の本人確認書類(運転免許証など)、分与の対象となる財産を特定するための資料(不動産の登記簿謄本、車検証など)が必要です。
また、費用は財産分与によって支払われる(受け取る)金額によって異なります。
たとえば、100万円以下なら5,000円、5,000万円超1億円以下なら4万3,000円の費用が発生します。
メリット:お金がかからない
財産分与をする際、家庭裁判所を通せば調停費用、弁護士を通せば弁護士費用が必要です。
しかし、夫婦間協議で解決すればこれらは不要です。
ただ、さきほど説明したように、公正証書を作成する場合は金額に応じた手数料がかかります。
デメリット:財産を正しく分けられないリスク
夫婦間の協議の場合、下記のような問題が発生するケースが非常に多いです。
- 分与の対象となる財産を把握していない
- 財産の価値を正しく測れていない・計算方法が間違っている
たとえば、専業主婦が不利な条件で財産分与に応じてしまうケースが少なからずあります。
結婚してからずっと専業主婦だった場合、基本的に世帯収入は夫が稼いだことになるので、立場の弱い専業主婦は不利な条件を飲んでしまうことが多いのです。
弁護士などの専門家に依頼すれば、「どの財産が分与の対象になるのか」「いくらまで分与するのが妥当なのか」などがわかります。
夫婦間の協議だと、財産を正しく分けられないリスクがあることを覚えておきましょう。
家庭裁判所で財産分与請求調停(判決)
家庭裁判所で財産分与請求調停を行えば、調停委員(※4)が夫婦間の協議を仲介します。
調停委員は双方の意見を個別に聞き、中立の立場で調停成立に向けた助言をしてくれるのです。
調停を希望する場合は、まずは相手方の住所を管轄する家庭裁判所にて、財産分与請求調停の申立てを行いましょう。
申立てにあたり、離婚時の夫婦の戸籍謄本や、夫婦の財産に関する書類(給与明細、退職金明細、預貯金通帳の写し、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書など)が必要になります。
なお、調停回数に決まりはありません(※5)。
また、調停で話がまとまらなかった場合は、審判(判決)が下されることになります。
この場合、原則として財産は半分ずつ分けられます。
また、相手が調停に応じず欠席した場合は、自動的に審判に移行します。
※4
調停委員とは、最高裁判所に任命された調停の立会人です。次のいずれかに該当する40歳以上70歳未満の人が任命されます。
・弁護士資格を持っている
・紛争解決に役立つ専門知識を持っている
・豊富な社会知識を持っている
※5
調停は基本的に1ヶ月~1.5ヵ月に1回のペースで行われ、1年以内(約10回)で終わるケースが大半です。
メリット:調停委員が話し合いを仲介
財産分与請求調停では、調停委員が双方から個別で話を聞きます。
たとえば、夫婦のみでは感情的になって話し合いがうまくいかなかったり、相手に会いたくない場合もありますよね。
調停であれば、第三者が間に入るので交渉がスムーズにすすみます。
メリット:費用が安い
財産分与請求調停には費用がかかりますが、収入印紙代と切手代をあわせて約2,000円。
とても安く済みます。
メリット:期限を延ばせる
原則、財産分与は「離婚から2年以内」でなければ請求できません。
そこで、期限が迫っている場合は、とりあえず財産分与請求調停の申立てをしてください。
期限内に申立てが受理されれば、たとえ調停成立日や判決日が期限を過ぎていたとしても、財産分与が可能です。
デメリット:調停委員は法律の専門家ではない
さきほど「※4」で説明したとおり、必ずしも弁護士が調停委員に任命されるとは限りません。
むしろ、弁護士が調停委員になるケースは非常に少ないのだとか。
そのため、法律知識を必要とする問題を調停委員に相談しても、正しいアドバイスがされない可能性が高いのです。
それどころか、離婚問題にあまり詳しくない調停委員が担当になることもあります。
調停委員の知識や経験はまちまちであることを覚えておきましょう。
デメリット:長期化の恐れ
財産分与請求調停は、どんなに早くとも1ヵ月に1回のペースですから、調停が長引けば結論が出るまでに時間がかかります。
デメリット:調停は平日の日中のみ
調停は平日の日中のみで、1回の調停には2~3時間かかります。
そのため、平日勤務の人は仕事を休まなければなりません。
弁護士に依頼する
夫婦間協議や財産分与請求調停で話がまとまるケースは、表立った問題がない場合です。
しかし、実際にはこのような問題があり、話し合いが進まないケースも多いです。
- 財産分与に関する相手の主張が疑わしい(妥当かどうかわからない)
- 相手が話し合いに応じない
- 相手が財産を開示しない
このような場合は、弁護士に相談しましょう。
メリット:正確な財産分与が期待できる
相手に提示された財産分与の提案が妥当なのかわからない場合は、弁護士に確認してもらいましょう。
どんな財産が分与の対象となり、どのように計算をするのが正しいのか、正確に教えてもらえます。
また、相手の主張に不備があり反対する場合、「弁護士の意見」とすれば相手にも納得してもらいやすくなります。
メリット:話し合いに応じてもらえる
相手が話し合いに応じない場合も弁護士に相談してください。
そういった場合、弁護士は財産分与請求の通知を相手方に送付します。
実際に弁護士からの通知を受けて焦って話し合いに応じたというケースは非常に多いです。
弁護士に依頼すれば、話し合いの場を設けるための対策を取ってもらえます。
メリット:相手の財産を知ることができる
相手が財産を開示しない場合に力になってくれるのが、弁護士会照会制度です(※6)。
弁護士は、弁護士会を通じ、官公庁や企業に必要な情報の開示を求めることができます。
たとえば、相手が預貯金の情報を開示しない場合、口座がある金融機関を特定できれば、残高の開示請求ができます。
また、相手が有価証券を隠し持っている場合、利用している証券会社を特定できれば、証券口座の情報を開示請求できます。
ちなみに、不動産の場合は弁護士会照会制度を利用する必要はありません。
不動産の所在地がわかれば、法務局にいって登記簿謄本を取り寄せることができます。
※6
相手が財産を開示しない場合、家庭裁判所の財産分与請求調停でも開示を請求することはできませんが、調停が不成立になって審判に移行する際、開示請求が認められるケースもあります。
デメリット:費用が高い
弁護士に依頼すれば、財産分与を適切に行うことができますが、その分 費用が高いです。
弁護士によって異なりますが、10万~20万円の着手金に加え、獲得利益に対して5~20%ほどの報酬金がかかります。
慶尾さんの場合はどんな手を打てばよかったの?
ここまでの説明を踏まえ、「慶尾さんのケースではどんな手を打てばよかったのか」をまとめてみましょう。
- 1「財産分与をしてほしい。すべての財産を開示してほしい」という旨を、メールなど証拠が残る形で元妻に伝える
- 2元妻が応じないなら、財産分与請求すると内容証明郵便(※7)で送る
- 3それでも、元妻が応じなければ、家庭裁判所で財産分与請求調停の申立てを行う
基本的にはこの流れですが、財産分与請求の期限が迫っている場合は、まっさきに財産分与請求調停の申立てを行いましょう。
一方、元妻が話し合いに応じた場合、元妻の出方によっては弁護士の力を借りるべきです。
たとえば、元妻の主張が妥当かわからない場合や、元妻が財産を開示しない場合は、弁護士の力を借りたほうがいいでしょう。
※7
内容証明郵便とは、郵便局が「いつ・どんな内容の文書を誰から・誰に送ったのか」を証明してくれる制度です。今回の場合は、文書に「財産分与について協議をしたい」と記載されていれば問題ありません。内容証明郵便を送る場合は、同じ文書を3通用意して(コピー可)内容証明郵便に対応している郵便局へ行きましょう。1通は相手に送り、1通は郵便局に保管され、もう1通は手元に保管することになります。念のため、印鑑も持っていきましょう。料金は通常の切手代に加えて430円かかります。差出人は、5年以内なら郵便局に保管されている文書を確認することができます。
財産分与の注意点まとめ
最後に、財産分与の注意点(特に重要な点)をまとめていきます。
とにかくはやめに行動すること
分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が得た財産なので、期限内であればいつ財産分与をしてもかまいません。
しかし、時間が経つほど財産が失われるリスクは高くなります。
たとえば、1,000万円の財産分与を請求する権利があったとしても、請求した時点で相手方に1,000万円を支払う力がなければ、取り立ては困難です。
また、時間が空くと「財産がある」という証拠がなくなってしまい、請求できる金額が減ってしまうこともあります。
もし、相手が財産分与に応じない場合は、まず家庭裁判所で財産分与請求調停の申立てをしておきましょう。
弁護士の力を借りたほうが良い
現在の日本では、離婚の際、夫婦間の協議で財産分与をしてしまうケースが多いです。
しかし、さきほど説明したように、夫婦間協議だと、「分与の対象となる財産を把握できていない」「財産価値や計算方法が正しくない」などの問題が起こる可能性が高いのです。
事実、夫婦間協議のあとに弁護士のところへ相談が持ちかけられるケースが多いのだとか。
財産分与の内容でわからないこと・不安な部分がある場合は、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
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