住宅ローン金利はこう下げろ!銀行員が薦める金利交渉の流れ

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憧れのマイホームの購入に欠かせないのが、住宅ローン選びですね。

住宅ローンとは人生の3分の1以上のお付き合いになりますから、少しでも低金利の銀行を選びたいものです。

しかし、借入先の銀行の選び方がわからず、ローンのことは不動産業者やハウスメーカーに任せてしまっているかたも多いと思います。

ちょっとの損なら許せるかもしれませんが、数千万単位のローンとなると、金利が少し違うだけで最終的に大きな違いになります。

知らないだけでとんでもない損をしてしまうかもしれません。

しかし、住宅ローンや銀行に詳しくない私たちが、金利を抑えるにはどうすればいいのでしょうか。

そこで今回、地方銀行にお勤めで住宅ローンの審査に携わっていた現役銀行員の伊藤さんに、都市銀行や地方銀行で住宅ローンを組むとき、金利を抑えるにはどうすればいいかをインタビューしました。

インタビュー内で伊藤さんは、金利の抑え方をアドバイスする一方、金利が安いという理由だけでネット銀行を選ぶべきではないともお話されています。

素人の私たちからすると、役立つテクニックが満載なので、ぜひ読んでみてくださいね。

※編集より補足
記事中の「業者」は、不動産業者やハウスメーカーのことを指します。

今回インタビューにご協力いただいたのは...

名前:伊藤 和夫(仮名)
性別:男性
勤めている金融機関:地方銀行A銀行
勤めている期間:1991年~2015年現在
主な仕事内容:営業・融資担当

この記事のアドバイザー情報

  • 工藤 崇ファイナンシャルプランナー

    (株)FP-MYS代表取締役社長兼CEO。フィンテックビジネスの導入をFP視点でサポート。各種メディアでの執筆、セミナー講師、相談業務など実績多数。

  • 稲葉 秀樹住宅ローン業界の従事者

    分譲住宅、注文住宅に関わる営業を25年行っています。住宅ローンに関しては、同業他社の営業マンにアドバイスをさせていただくことも。住宅ローンに力を入れている金融機関(支店、担当者ごとに)の精査も行なっています。

  • 中丸 沙織住宅ローン業界の従事者

    中古物件の販売、物件選びの注意点、資産価値を上げ快適な住空間を造るリノベーション、資金計画などトータルでお客様にご提案しています。英語での不動産営業、外国籍の方への不動産仲介経験あり。住宅ローンアドバイザー。

素人でもできる!住宅ローンの金利を抑える方法

お話をうかがったのは、現役の銀行員 伊藤和夫さん(仮名)。

大学を卒業してから20年近くも地方銀行のA銀行にお勤めされている現役の銀行員です。

現在は本社で大口の資産運用などを扱う部署に所属されているそうですが、支店時代には住宅ローンも数多く担当されていました。

今回は、「都市銀行や地方銀行で住宅ローンを組む際、できるだけ金利を抑えるにはどうすればいいか」について、詳しいお話をうかがっていきます。

金利を抑えるための4ステップ

住宅ローンの金利を抑えるためには、何をすればいいのでしょうか。

ここでは4つのステップにわけて話を進めていきます。

― 住宅ローンの金利を抑えるためにはどうすればいいのでしょうか?

初めて住宅ローンを組む場合、銀行選びを住宅販売のハウスメーカーや不動産業者に丸投げしてしまうお客様が多いようです。

しかし、「金利を少しでも抑えたい」と思うなら、受身になってはいけません。

お客様自身でよく調査して、自分から積極的にアピールする必要があります。

― 具体的に、どのようなことをすればいいでしょうか?

このような手順を踏むといいでしょう。

  • 1銀行の住宅ローンのスペック(金利等)を比較
  • 2ハウスメーカーや不動産業者と相談
  • 3銀行に金利引下げ交渉
  • 4優遇金利をうまく使う

次章から、それぞれのステップについて具体的に説明していきます。

銀行の住宅ローンのスペック(金利等)を比較

何事も下調べが必要です。

では、具体的にどのような点をチェックすればいいのか聞いてみました。

― 何を調べればいいのでしょうか?

まずは、候補となる銀行(自分が利用できる銀行)の住宅ローンについて情報を集めましょう。

例)

  • 都市銀行
  • 地方銀行
  • ネット銀行
  • 信用金庫

それぞれの公式ホームページをみれば、住宅ローンのことも詳しく載っています。

なお、ネット銀行は、住宅ローン業界では後発なので、顧客獲得に熱心です。

そのため、都市銀行・地方銀行に比べてサービスが先行している印象があります。

― どのような点に注目すればいいでしょうか?

次のような点を比較・検討してみてください。

  • 金利
  • 団体信用生命保険
  • その他サービス

金利

― 現在の住宅ローンの金利相場は?

2015年現在、住宅ローンの金利はおおむね1%前後の低金利になっています。

都市銀行・地方銀行・ネット銀行の間に大きな差はないといっていいでしょう。

複数の銀行の金利をピックアップしていくと、相場がわかってくると思います。

主要銀行の住宅ローンの金利(変動金利)

  銀行名 基準金利
(店頭金利)
適用金利
都市銀行
三菱UFJ銀行 2.475% 0.775~0.975%
みずほ銀行 2.475% 0.775~0.975%
三井住友銀行 2.475% 0.775~0.975%
地方銀行 横浜銀行 2.475% 0.725%
近畿大阪銀行 2.675% 0.775%
福岡銀行 3.075% 1.325%
ネット銀行 ソニー銀行 1.889% 0.889%
楽天銀行 1.308% 0.658~1.308%
イオン銀行 2.370% 0.570%
住信SBIネット銀行 2.775% 0.65%

※2015年現在

固定金利と変動金利のイイトコどり?ミックス型の住宅ローンとは?

工藤 崇(ファイナンシャルプランナー)

ミックス型は諸刃の剣です!

最近は固定金利と変動金利を組み合わせる「ミックス型」と呼ばれる商品が増えています(短期固定金利と長期固定金利の組み合わせもあり)が、利用には注意が必要。

というのも、ミックス型住宅ローンは、固定金利分で金利上昇リスクを低減できる一方、金利が下がったときは固定金利分の金利負担が大きくなります。つまり、"諸刃の剣"なわけです。

2016年に日銀がマイナス金利を導入したため、現在の金利は前例がないほどの低水準になりました。この先、さらに低金利になる可能性は低いため、現時点だと住宅ローンは固定金利がオススメ。

これから住宅ローンを利用する場合は3年程度の短期間の固定金利からはじめて、変動金利に切り替えることも視野に入れていきましょう。

工藤 崇(ファイナンシャルプランナー)

※編集より補足
基準金利(店頭金利)とは、その銀行の基準になる金利で、上限金利といってもいいでしょう。また、適用金利とは、実際にお客様に適用される金利で、ほとんどのお客様はこの適用金利が設定されます(ただし、審査の結果、返済能力が低いと判断されたお客様には基準金利が設定されることもあります)。ですから、金利を比較するときは各行の適用金利をチェックしてください。

団体信用生命保険

― 団体信用生命保険とは何でしょうか?

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡したり、重度障害を負ったときに、返済を肩代わりする保険です。

住宅ローンの契約者は団信への加入が義務付けられています。

団信は、死亡と重度障害に対する保障が一般的ですが、最近は三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)の保障が付いているものが多いです。

― 団信の保障内容は銀行によって差があるのでしょうか?

はい。

保障内容は、銀行によって異なります。

いくら金利が低くても、団信の保障が乏しいと万一のとき困ってしまいますよね。

そのため、団信も必ずチェックする必要があります。

また 、保障内容によって金利が上がることがあるので、そちらも欠かさずチェックしてください。

主要銀行の団信の特約

  銀行名 団信の特約 保険料
都市銀行
三菱UFJ銀行 七大疾病保障付き ローンの残高による
みずほ銀行  三大疾病保障特約 +0.3%(金利に上乗せ)
八大疾病保障プラス ローンの残高による
三井住友銀行 三大疾病ワイド保障+5 +0.3%(金利に上乗せ)
地方銀行 横浜銀行 八大疾病保障特約 +0.3%(金利に上乗せ)
近畿大阪銀行 がん100%保障プラン +0.1~0.2%(金利に上乗せ)
福岡銀行 三大疾病+5つの重度慢性疾患保障 ローンの残高による
ネット銀行 ソニー銀行 三大疾病特約 +0.3%(金利に上乗せ)
楽天銀行 ガン保障特約付き +0.3%(金利に上乗せ)
失業保障・入院保障特約 ローンの残高による
イオン銀行 八大疾病保障付 +0.3%(金利に上乗せ)
住信SBIネット銀行 八大疾病特約 なし

※2015年現在
※死亡と重度障害に対する保障は除いて表示

その他の特約について

共働き夫婦には連生団信もおすすめ

上の表にある特約付き団信のほかに、夫婦で契約し、どちらかが死亡または高度障害を負ったときに保険がおりる「夫婦連生団信」もあります。

一般的な団体信用生命保険の場合、主債務者が夫、連帯債務者を妻としてローンを組むと、夫が亡くなった時しか保険がおりず、妻が亡くなって所得が減っても、夫ひとりでローンを払い続けないといけませんでした。

しかし、夫婦連生団信は(主債務者ではない)妻が亡くなった場合でも団体信用生命保険が適応され、ローン残債がゼロになります。

ちなみに、似たような名前のローンとして「ペアローン」があります。ペアローンは夫婦それぞれでローンを組むため、残されたほう(夫または妻)はローンを払い続ける必要があります。

夫婦連生団信は、住宅金融支援機構の「デュエット」(特約料は一人分の1.56倍)、三井住友銀行の「クロスサポート」(保険料は基本金利に+0.18%上乗せ)などが有名ですね。

稲葉 秀樹(住宅ローン業界の従事者)

その他サービス

― 他はどんなところをチェックすればいいですか?

特典やサービスについても調べておきましょう

たとえば、イオン銀行で住宅ローンを組むと、イオンでの買い物がすべて5%オフになるという特典があります。

また、支店やATMが身近にあるかどうかの利便性も考慮すべきですね。

返済手数料について

繰り上げ返済手数料、一括返済手数料も調べておきましょう。

また、最低繰り上げ返済額も各銀行それぞれ設定していますので、事前に調べておくといいですね。一括返済手数料は売却時にもかかる経費です。

ローンを最長期間で契約しても、実際は繰り上げ返済を前提にしている方がほとんどです。定年退職時の退職金で一括繰り上げ返済をする方も多いですね。変動金利のリスク軽減のためにも、繰り上げ返済を念頭においておきましょう。

中丸 沙織(住宅ローン業界の従事者)

審査の厳しさ

― これはスペックとは関係ないのですが、審査が厳しい銀行とそうでない銀行を見分けることはできますか?

一概に言えませんが、ある程度の傾向はあります。

たとえば、地方銀行のなかでも、第一地方銀行に分類される銀行は審査が厳しいです。

第二地方銀行第三地方銀行信用金庫の順に審査が通りやすくなる傾向にあります。

また、第一地銀と比べると、都市銀行は意外に通りやすいと言われているんです。

ちなみに、審査に通りやすい銀行のことを我々の業界でラストリゾートと揶揄することがあります(笑)

地域に参入したての銀行が狙い目

最近になって住宅ローンに力を入れだした銀行(なかでも地銀や信用金庫等)と、他の地域から進出し住宅ローンに力を入れようとしている銀行は、比較的審査が甘い傾向があります。

後から参入してきた銀行は、既存の銀行から顧客を奪い、給与振り込みや光熱費の自動引き落とし、自銀行が提携するクレジットカードを発行してもらい、なんとか自銀行に顧客を囲い込もうとします。そのための策のひとつに、住宅ローンの金利優遇があります。

ですので、もし近所に新しく銀行ができて、目立つように住宅ローンのキャンペーンを行っていれば、ねらい目といえるでしょう。

稲葉 秀樹(住宅ローン業界の従事者)

ハウスメーカーや不動産業者と相談

ひととおり情報収集が終わったら、次はハウスメーカーや不動産業者に相談です。

このとき、どのようなことを相談すればいいのでしょうか?

― 銀行を選ぶときはハウスメーカーや不動産業者に相談すべきですか?

はい。

ローンの審査に通らないと、ハウスメーカーも不動産業者も困ってしまうので、彼らは低金利でローンが組めるよう積極的に動きます。

ハウスメーカーや不動産業者は、審査に通りやすい銀行や、金利の交渉をしやすい銀行の情報をたくさん持っています。

また、銀行同士のライバル関係もわかっています。

たとえば、「A銀行はB銀行に対しライバル心を持っているから、競合させれば金利の交渉をしやすい」というコアな情報を持っているのです。

業者に相談して情報をもらえれば、候補を絞り込みやすくなるでしょう。

― 金利について相談しておくべきですか?

はい。
調べておいた金利の相場をもとに、「金利は○%くらいに抑えたい」と希望を伝えておきましょう。

変動金利・固定金利のどちらを選ぶべきかも相談してみてください。

※編集より補足
住宅ローンの金利には、契約時からずっと金利が変わらない固定金利と、半年ごとに金利が見直される変動金利があります。固定金利に比べると、変動金利は低金利ですが、返済中に金利が上昇するリスクがあります。どちらがお得かは、その時の経済状況によるので、一概にいえません。

― 業者と銀行が結託していた場合、お客さんに不利なローンを勧めることはありませんか?

それはあるでしょうね(笑)

たとえば、銀行が不動産業者に融資をする見返りとして、「住宅の契約が取れたら、うちの銀行で住宅ローンを組むよう誘導してね」とお願いしているケースがあります。

この場合、お客様も相場がわからないと太刀打ちできません。

その点、事前にいろいろな銀行のスペック(金利等)を調査しておけば、相場がわかっているので安心です。

ただ、たとえ銀行と業者が結託していても、お客様にやたら高い金利を提示するようなことはないと思います。

これだけ情報が溢れている世の中では、すぐにおかしいと気づかれてしまいますから。

銀行に金利引下げ交渉

銀行が絞り込めたら、いよいよ住宅ローンの事前審査に申込みます。

では、「いつ」「どのように」金利引下げの交渉をすればいいのでしょうか?

― 「いつ」「どのように」金利引下げ交渉を行えばいいのでしょうか?

金利の引下げ交渉は、手慣れている業者が行うケースがほとんどです。

お客様が1人で交渉にあたることは、まずありません。

ケースバイケースですが、次のようなパターンが多いですね。

  • 業者が銀行に交渉
  • 本審査への申込みの際、業者がお客様と一緒に交渉

― 業者はどのように金利の引下げを交渉するのですか?

事前審査の前後に、電話などで銀行と交渉します。

たとえば、「A銀行とB銀行も検討しているけど、金利○%にしてくれればおたくの銀行に決める」などといって駆け引きするのです。

このとき、銀行から「金利を○%に引下げるので他を見ずにウチに決めてほしい」などと提案することもあります。

いずれにせよ、このとき交渉するのは業者なので、お客である私たちは前もって業者に希望を伝えておくことが大切です。

※編集より補足
住宅ローンの審査は、通常、事前審査本審査の二段階に分かれます。事前審査に通らないと本審査に進むことはできません。

― 複数の銀行に事前審査を申し込むと交渉しやすいのでしょうか?

お客様によってケースバイケースです。

たとえば、A銀行・B銀行・C銀行の3つに絞り込んでいる場合、3つとも事前審査に申込むお客様もいますし、事前審査はA銀行だけに絞り込むお客様もいます。

事前審査の申込みについて

事前審査の申込みは3社以内に収めたほうがよいでしょう。

事前審査に申込むと、銀行はお客様の信用情報を信用情報機関に照会します。照会履歴は信用情報機関に残りますので、別の銀行が照会した際に「前に別の銀行が調査した」ことがわかります。

したがって、複数の銀行へ事前審査を申し込むと「このお客、ないしは物件に何らか問題があって、どこも融資が通らないから、うちに事前審査を出したのかな?」と勘ぐられてしまう可能性があります。事実、「うちが3社目以内なら事前審査するけれど、4社目なら受け付けない」とハッキリ話すメガバンクもありました。

そして、過去に金融事故など思い当たるフシがあるなら、正直に業者の担当さんに伝えましょう。もしくは、自分で信用情報を取得し、業者さんに確認してもらうのもよいでしょう。そのうえで、銀行への対策を考えてもらうとよいと思います。

稲葉 秀樹(住宅ローン業界の従事者)

業者が「審査通過は難しい」と判断した場合、複数の銀行に事前審査を申込むパターンが多いと思います。

このあたりの作戦は業者に任せたほうがスムーズにいくでしょう。

― お客さんが業者と一緒に銀行で交渉するパターンもあるのですね?

本審査に申込む際、ほとんどのお客様が業者と一緒に銀行にいらっしゃいます。

ここも金利引下げ交渉のチャンスですが、やはり交渉は業者が行うことが多いですね。

もちろん、同席しているお客様が、「おたくの銀行の金利は1.2%となっているけど、A銀行では0.8%と書いてあった。それくらいに抑えることはできないの?」とハッパをかけるのはアリです。

しかし、まったく下調べせずに、無茶苦茶な低金利を吹っかけても効果はありません。

やはり、事前の調査・比較にもとづく提案をする必要があります。

― 金利引下げの交渉を断られることは?

収入に対してローン総額が大きい場合、また過去に延滞があるなど属性が悪い場合は、引下げ交渉そのものを断られることがあります。

ただし、そういった人は事前審査の段階で落とされるので、本審査への申込み時に断られることはまれです。

優遇金利が適用される条件とは?

一定の条件に当てはまれば、金利をさらに下げることができます。

いわゆる優遇金利です。

ここでは優遇金利についてお話を聞いています。

― 優遇金利適用の条件にはどのようなものがありますか?

次の条件にあてはまれば、住宅ローンの金利をさらに引下げられるかもしれません。

  • 1普通口座を給与振込口座にする
  • 2普通口座を口座振替の指定口座にする
  • 3銀行が提携しているクレジットカードを作る
  • 4銀行のカードローンに申込む

これらの条件にあてはまれば、利率はそれぞれ0.1%ほど下がります。

ただ、これらはいずれも私が勤めている銀行の条件なので、詳しい内容は銀行によって異なります。

優遇金利のことは、銀行側から提案してくることもありますが、お客様から積極的に申し出てもOKです。

― 定期預金があれば優遇されるでしょうか?

定期預金をしていれば必ず優遇されるとは限りません。

優遇されるためには、数千万円以上の預貯金が必要でしょう。

ネット銀行で住宅ローンを組むべきでない3つの理由

ここまでは、都市銀行・地方銀行の住宅ローンについてお話を聞いてきました。

では、ほとんど話に出てこなかったネット銀行はどうなのでしょうか?

伊藤さんいわく、「ネット銀行を積極的におすすめできない理由がある」とのこと。

その理由とはいったい何でしょうか?

― 新規で住宅ローンを組むなら、ネット銀行のほうが低金利ですよね?

一概にいえませんが、ネット銀行の金利は低い傾向にありますので、お客様によっては、最初からネット銀行で住宅ローンを組まれていますね。

ただし、徐々にその差は縮まっていて、最近は1%も差はありません。

ただし、ネット銀行で住宅ローンを組むと、以下のようなデメリットがあることも確かです。

  • ハウスメーカーや不動産業者が嫌がる
  • 手続きに手間がかかる
  • 審査に柔軟性がない

ハウスメーカーや不動産業者が嫌がる

― ハウスメーカーや不動産業者は、なぜネット銀行を勧めないのですか?

ハウスメーカーや不動産業者は、都市銀行や地方銀行と長年の付き合いがあります。

一方、ネット銀行とはお付き合いがありません。

ハウスメーカーや不動産業者が勧めるのは、都市銀行や地方銀行、信用金庫などです。

「やりにくい」「面倒」という理由で、ネット銀行を勧めないのです。

― もしハウスメーカーや不動産業者に、「ネット銀行で住宅ローンを組みたい」と言った場合、どうなるのでしょうか?

ハウスメーカーや不動産業者は、ネット銀行の利用をとても嫌がると思います。

もちろん、最終的にはお客様が決めることなので、拒否はできませんが。

最近はハウスメーカと提携する銀行が増えてきている?

ハウスメーカーが間に入ることによるメリット

最近は、業者が間に入って手続きを進めるネット銀行も登場してきています。

たとえば、楽天銀行は特定のハウスメーカー等の業者と提携しています。住信SBIネット銀行はARUHI(旧SBIモーゲージ)が店頭代理店になっているため、こちらも業者から申請することが可能です。

◎業者が間に入る事によるメリット

  • 書類の不備等のチェックが事前にできる
  • 必要な書類(謄本、契約書コピー、建築概要書 等)を業者がすべて用意してくれる
  • ローン契約に関する重要事項を説明してもらえる(業者が間に入らないと、お客様ご自身が契約書を読んで理解する必要があります)
  • 団体信用生命保険のオプションや火災保険などに関するアドバイスもしてもらえる
  • 引渡し(融資実行日)をあらかじめ設定できる

業者に住宅ローンの手続きを進めてもらうことは、お客様、売り主、不動産業者、司法書士など関係者すべてにとってメリットがあるといえますね。

中丸 沙織(住宅ローン業界の従事者)

手続きに手間がかかる

― ネット銀行で住宅ローンを組むと、手続きが面倒なのですか?

はい。

ネット銀行で住宅ローンを組む場合、お客様自身が行う事務手続きが多くなります(ただし銀行への来店は不要)。

たとえば、下記のような事務手続きが必要になります。

  • 物件の明細書・物件案内書・間取図等の発行を依頼し、コピーを取る(図面は大きいのでコピーを取るのが大変)
  • 登記簿謄本・構図・地籍測量図等を法務局へ取りに行く(法務局は平日しか空いていない)

提出書類は銀行によって異なりますが、だいたいこのような書類が必要です。

もし、都市銀行・地方銀行で住宅ローンを組むなら、これらの手続きはすべて業者と銀行が代行します。

また、ネット銀行はある程度金利が決まっているので、提示された金利からさらに引下げたい場合は自分で電話をかけて交渉しなければなりません。

交渉についても業者の協力を得られない可能性が高いので、相応の覚悟が必要だと思います。

住宅ローンをネット銀行で組む場合について

業者がネット銀行を嫌がる理由は、「やりにくい」「面倒」ということに加えて、買主の口座に住宅購入代金が入金される(融資実行)タイミングが不確実という点が挙げられます。

通常の銀行の場合、不動産の引き渡しのために売主、買主、登記を行う司法書士が銀行に集まったタイミングで、買主の口座に代金が入金されます。これなら業者もその場で入金を確認できるので安心です。

しかし、ネット銀行の場合は勝手が違います。まず買主(お客様)自身が融資実行の日取りや、登記を依頼する司法書士の段取りなど、すべてを調整しないといけないため、融資実行のタイミングがなかなか決まらないことがあります。売主にとっては代金受取日が確定しないと、自社の借入金の返済や下請け業者等への支払いなどに不都合が生じます。万一、代金が予定どおりに入金されなかった時のことを考えると、心配で任せられないというのが本音なのです。

稲葉 秀樹(住宅ローン業界の従事者)

審査に柔軟性がない

― ネット銀行だと審査は厳しいのでしょうか?

厳しいかどうかはわかりませんが、柔軟性は低いですね。

都市銀行や地方銀行のほうが融通は利きます。

都市銀行や地方銀行は、お客様と直接会って話すので、細やかな対応ができるのです。

たとえば、返済能力が微妙なお客様でも、金利を少し上げるなどの工夫をすれば審査に通過させることができます。

また、親御さんが財産をお持ちなら、それを考慮するケースもあります。

一方、ネット銀行の審査は、基本的にすべてコンピューターが行うので、基準を満たさなければ即否決。

特に自営業の審査は難しいです。

収入証明書などの書類を提出してもらいますが、それだけでは判断しづらい部分もあります。

自営業なら、ネット銀行よりも地方銀行・都市銀行のほうが、審査に通りやすいかもしれません。

最後に、都市銀行・地方銀行とネット銀行の違いを下記の表にまとめてみました。

  都市銀行・地方銀行 ネット銀行
金利
(適用金利)
0.7%~1.3%(※1) 0.5%~1.3%(※1)
団信の特約 三大疾病保障特約等 三大疾病保障特約等
業者の対応 金利交渉に積極的 金利交渉にはノータッチ
手続き 少ない(銀行や業者が代行するため) 多い
審査 場合によっては融通をきかせてくれる 融通はきかない

※1
2015年現在の代表的な銀行の金利相場をピックアップしたものです(いずれも変動金利)。

インタビューを終えて

住宅ローンの金利を抑えたいなら、しっかりと下調べをしたうえで、自分の希望を伝えることが大切なのですね。

しかし、最近は住宅ローンの金利がそもそも低いので、交渉を行っても大幅な引下げは難しいようです(すでに1%前後のところも多いですが、これは住宅ローンとしてはかなりの低金利です)。

そのため、最初から交渉そのものを行わないケースも増えているそうです。

最後になりましたが、伊藤さんには、返済中の住宅ローン金利を借り換えなしで下げる方法についても話をうかがっています。

借り換えを検討しているなら、ぜひこちらも目を通してみてください!

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