更新日:2018/12/24
「その日のうちに借りられる」この誘惑に逆らえませんでした【体験談】
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評価を設定してください ×就職氷河期に、リーマンショック。
多くの若者が思うような仕事に就けない、また運良く就職できたとしても、契約社員や派遣社員など不安定な雇用形態のために、収入が上がらずに苦しんでいます。
そして、中にはこうした生活苦をきっかけに、消費者金融を利用する人たちがいます。
契約社員として働きながら、生活費の補填にキャシングを利用している、30歳の男性に話を聞くことができました。
体験者の情報
名前:武田 勝(仮名)
性別:男
職業:派遣社員(不動産会社勤務)
年齢:34歳
借入件数:3件
会社名(借入先):プロミス、アコム、楽天銀行スーパーローン
借入れが必要になった理由:生活費等のため
利用時期:2005年~現在
現在の借金の合計額:50万円
借入れに頼らなければ生活できない派遣社員
今回お話を伺ったのは、派遣社員として不動産会社にお勤めの武田勝(仮名)さん。白いワイシャツ姿にビジネスバッグを持つ彼は、いかにも真面目なサラリーマンといった風情の青年です。
しかし氷河期の就職難、リーマンショックなど、不況の影響を真っ向から受けてきた彼の人生は、決して楽なものではありませんでした。
学生時代に消費者金融から借入れをしたにも関わらず、就職が決まらずにアルバイト生活。
その後は契約社員や派遣社員として働きながら借入れを繰り返していて、生活はなかなか楽にならないようです。
そんな彼が借金を重ねてきた経緯と、現在の状況について語ってくれました。
きっかけは大学の学費を払うため
― 最初に消費者金融を利用したきっかけを教えて下さい。
2005年の冬頃、卒業を前にして大学院の後期の授業料が払えなくなってしまったことが発端です。
当時はコンビニのアルバイトで7~10万円の収入がありましたが、授業料に必要な額には及ばず、かといって不景気で苦しい状況にある両親にも頼ることができませんでした。
そこで苦肉と策として、消費者金融で借りることを思いついたんです。
プロミスで限度額いっぱいの20万円を借りて、アルバイトの収入と合わせて、どうにか授業料を納めました。でも金利がとても高く、18%もあったんです。
― 返済は順調でしたか?
お恥ずかしい話、一度も払うことなく1年もの間滞納をしてしまいました。「払いたくても払えない」と自分に言い訳をして、逃げていた部分もあったかもしれません。
実際、私が卒業する頃は「氷河期」と言われるくらいとても就職が厳しい時期で、自分自身も就職が決まらず、アルバイトで食い繋ぐ生活でした。そんな苦しい生活の中で、精神的に追い詰められていた面もあると思います。
― プロミスからはどのような督促がありましたか?
最初のうちは電話が掛かってきましたが、それも1ヶ月くらいでなくなりました。
それを良いことに放置していたのです。ところが1年後くらいに突然裁判所から通知がきたのでとても驚きました。裁判と言われても、イメージが湧かなくて。
裁判所から届いた訴状
― その経過を教えていただけますか?
青い封筒で裁判所から封書が届き、裁判所に出頭するように書かれた「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告書」と「答弁書」と「分割払いを希望される方へ」という文書が入っていました。
その答弁書にこちらの言い分を書いて送り返しました。
― 答弁書にはどんなことを書いたのでしょうか?
自分には支払いが難しいということと、延滞金について書きました。
延滞金は10万円だったのですが、当時の私にはとても払える額ではなかったんです。当時のアルバイト生活の苦しい現状も一緒に書きました。
その答弁書を送り返してから、2ヵ月後くらいに裁判所から和解案が送られてきました。
― 和解案の内容とは?
延滞金は免除されたのですが、月々1万2千円ずつの2年払いを提示されました。
金利については、正しいものなので払う必要があると書かれていました。その内容にも納得できたので、和解案の通りに支払うことに同意しました。
この頃は契約社員として出版社やウェブサイト制作会社などで働いていたのですが、契約が終了すればまた次の会社へというような不安定な状態で、生活は苦しかったです。
でもどうにか2年で完済することができました。
わずか2ヶ月で限度額まで借入れ
― 滞納をしたことで、やはり信用情報に記録は残ったのですか?
残りましたね。2005年からの5年間は借入れすることができなくなっていました。
でも2010年にはアコムから借入れが出来たので、そのころには信用情報からも消えていたのだと思います。
この時アコムから借りたのは、飲み会などの付き合いのための資金でした。とにかく自動契約機で、その日のうちに借りられるという誘惑に逆らえませんでした。
契約社員で月収は21万円程度でしたから、飲み会などの費用を捻出するのは厳しかったので。
その時はそのお金が絶対に必要だと思っていました。早く新しい職場に馴染みたかったので、付き合いには必ず参加するようにしていまし、仕事も覚えようと必死になっていた時期だったんです。
自分に返済能力があるのかとか、そこまで考えが及ばなかったかもしれませんね。
しかし最初は1万円だけのつもりが、たった2ヶ月の間に限度額の20万円に達していて。
月々1万円ずつの返済で、金利は17パーセントだったのですが、少し返して枠が空けばまた借りるといったことを繰り返していました。
もちろん生活は苦しかったのですが、月々の返済額は払えない額ではありませんでした。食費を切り詰めたりしましたね。1人暮らしだからどうにかなったのかもしれませんが。
しかしよくよく考えてみると、利息だけでも12~13万円払っていた訳で、結局完済するまでには3年間かかりました。
枠が空けばまた借りるスパイラル状態
― その後「楽天」からも借りたようですね?
プロミスやアコムなどの消費者金融のカードは、完済後に処分をしました。ですが生活が苦しいのは相変わらずで。
そんな時、楽天銀行が「ローンの契約をすると5000ポイントがもらえる」というキャンペーンをやっていて、しかもインターネット上の手続きだけで借りられるという手軽さも魅力だったので、ついつい契約を結んでしまいました。
銀行のカードだから消費者金融と違ってクリーンなイメージがあったことも契約に踏み切った理由かもしれません。
こちらも限度額の50万円を2ヶ月ほどで借りてしまいました。しかし金利は15%と安くはないですよね。結局は消費者金融から借りていた時と変わらないというか。
現在も月々1万5千円ずつ返済していますが、楽ではありません。借入れの枠が空けばまた借りるというスパイラル状態と言いますか、繰上げ返済もできていないのが現状です。
自分のお金と思わないこと
― ローンに頼ってしまう原因は何だと思いますか?
やはり今の収入が足りないからだと思います。特別お金の掛かる趣味もありませんし、今はそう頻繁に飲みに行くこともないので、贅沢をしているつもりはありません。
家賃や食費なんかの生活費の補填に利用しているかんじです。
もちろん今まで転職を繰り返してきたことや、アルバイトや派遣社員などの立場に甘んじていたことも、今の苦しい生活の原因の一つだとは思います。
けれども自分自身にも責任はあると思うのですが、その一方で「仕事がない」とか「雇用が安定しない」とか自分一人の力ではどうにもならなかった部分もあるんですよね。
そういった状況でキャッシングなどのローンに走ってしまったのは、ある意味追い詰められていたというか、そういう精神状態になっていたせいかもしれません。
弱っているところにそういったもの(ローン)があったという「良くないめぐり合わせ」とでも言いますか。それでも自己責任の部分が大きいとは思います。
― 消費者金融に頼らない方法はあると思いますか?
当たり前のことですが、「自分のお金と思わないこと」ですね。
財布の中のお金でやりくりすることが一番正しいことだと思います。少しだけのつもりでも、あっという間に大きな金額になってしまうので、結局は後から苦しくなってしまいます。
業者からしてみれば、自分のように少しずつ借りては返すを繰り返すお客が一番ありがたいのだと思います。利息もたくさん払ってくれる訳ですから。
― これからの不安はありますか?
楽天の返済がまだ4年くらい残っています。生活は楽ではありませんが、今のところ滞りなく返済できています。
しかし不安なのは今後も「ちゃんと返していけるか」ということですね。
もちろん今勤めている不動産会社の仕事を続けていくつもりではありますが、自分自身を含め今の世の中何が起きるか分かりませんから。
現状は蓄えも無くギリギリの生活なので、倒れる訳にはいきませんね。
忙しい仕事の合間にお話を聞かせてくださった武田さん。しんみりと語る様子から、経済的な負担だけではなく色々な気苦労があるのだと推測されました。
「自動契約機で、その日のうちに借りられるという誘惑に逆らえませんでした」というのも、ギリギリの生活の中で、若い彼にはフッとそこから開放されたい瞬間があったのでしょう。今後の彼の行方が気にかかります。
今回の武田さんのように、生活苦や低所得を理由に借入れを行う若者は少なくありません。
インターネットや自動契約機の普及で、キャッシングやローンは若者にとってより身近なものになりました。
しかし収入に見合わない借入れは、やがて自身の首を絞めることになります。例え生活が苦しくとも、借入れの際は「無理なく返済できるか」ということを、今一度考えてみることが大切です。
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