更新日:2018/07/20
病気で休職してお金に困ったら、まず公的機関に相談を【体験談】
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評価を設定してください ×病気やケガで仕事を失い、生活に困ってしまったらどうしますか?そういう時は、まず役所に相談するようにしましょう。
今回、お話を聞いたのは、病気で仕事を休職し、生活費のためにお金を借りたという男性。彼はそのために、病気が悪化してしまいました。
体験者の情報
名前:上野 大志(仮名)
性別:男性
当時の職業:会社員~無職
当時の年齢::25歳
借入件数:4社
会社名(借入先):武富士など
利用時期:2005年~2008年
借金の合計額:220万円
もし病気になって、仕事ができなくなってしまったら?
お話をうかがったのは上野大志さん(仮名)、33歳。
彼は「クローン病」と呼ばれる難病を患っています。病気のために仕事を休むことになり、収入が減ってしまいました。
生活に困った彼は、借り入れを繰り返し、あっという間に債務超過状態に陥ってしまいます。
もし、大きな病気をして働くことができなくなってしまったら、どうしたらいいのでしょうか?
今回は上野さんに、仕事を失ってからどうやって暮らしていたのか、その体験をうかがいました。
突然、難病を発症し、生活が一変してしまった
― 当時はどんなお仕事をしていたのですか?
私は22歳で専門学校を卒業してから、東京にある大手企業でSE(システムエンジニア)として働いていました。
ところが25歳の時、突然「クローン病」という原因不明の難病にかかってしまいまったんです。
病気になってからは週に2~3日のペースで通勤していたのですが、それもだんだん厳しくなっていって...。
それで「休職扱い」にしてもらい、治療に専念することになりました。
― クローン病とはどのような病気ですか?
腸の中に潰瘍(かいよう)ができる病気で、腹痛や下痢が続きます。おかゆやうどんしか食べることができないので、体力がどんどん低下していくんです。
また下痢でトイレから離れられないので、通勤や長時間デスクに座っている仕事が厳しかったです。
― 休職中の収入はどれくらいでしたか?
「休職手当」を会社の保険から、1ヶ月12万円くらいもらっていました。でも7万円の家賃と生活費、さらに医療費がかかるで、完全に赤字です。
― 実家を頼ろうとは思わなかったのですか?
同じ頃、父がガンで亡くなったので、憔悴した母の姿を見たら言えませんでした。
難病は公的支援があるけれど・・・
― 医療費はどれくらいかかりましたか?
国が「難病」に指定している病気にかかった人は、公的支援を受けることができます。「難病医療費支援制度」といい、医療費の一部を国や都道府県が負担してくれるんです。
病気の種類によって支援の内容は違うみたいですが、私の場合は「月々40万円かかる薬を5千円で使える」という券が渡されました。
しかし病気になった最初の1年間は、その支援制度のことを知らなかったんです。「すべて自分で負担しなければならない」と思い込んで、治療費や薬代を自腹で払っていました。
医療費は毎月5~10万円くらいかかっていったと思います。
― 病院から「難病医療費支援制度が利用できる」という説明はなかったのですか?
病院側からは何の説明もなかったですね。それに体調が悪くて、支援制度があるかどうか調べる余裕もなかったのです。
― すでに支払ってしまった医療費を還付してもらうことはできないのですか?
さかのぼって還付を受けることは諦めてしまいました。病院や薬局の明細書を取っておいてなかったのです。
病院に頼んでみたら「明細書の再発行はできない」と言われてしまって。
もし明細書を取っておいていたら、100万円くらい還付してもらえたかもしれませんね...。
とにかく休職手当てだけでは、医療費も生活費も足りなくて、消費者金融を頼ることにしたのです。
「休職中」でも借りられた!
― 消費者金融からお金を借りることに不安はありませんでしたか?
正直気が進みませんでした。でも「テレビCMもやっているから大丈夫だろう」と思い、無人契約機に足を運びました。
― 「休職中」のことは、どのように説明したのですか?
復帰する予定だったので、「休職中」とは言いませんでした。収入証明書が必要でしたが、前年度の源泉徴収表で大丈夫でしたね。
勤め先が大手企業だったので、審査がスムーズだったのだと思います。
― 限度額はいくらでしたか?
クレジットカードが付いているカードで、キャッシング枠が30万円、ショッピング枠が10万円でした。金利は14.6%です。
とりあえず最初は15万円借りて、2ヵ月分の生活費に充てました。でも結局4ヵ月後には、限度額の30万円まですべて借りてしまいましたが。
― 返済は順調でしたか?
月々の返済額は1万円くらいなので、どうにか返していました。
この時は、「休職手当もあるから、返済できる」と思っていたんです。
いつの間にか、自分で自分の首を絞めていた
― さらに他社からも借り入れをしたのはなぜですか?
やはり生活費が足りなくなってしまったからです。すでに限度額いっぱいに借りていたので、次の業者に頼るしかありませんでした。
それに「1社目の審査に通ったので、次も同じようにいけるだろう」と思って。
―審査はどのようなかんじでしたか?
やはり自動契約機で申し込みましたが、審査は簡単に通りました。限度額は50万円です。
ただし金利は、「グレーゾーン金利」の撤廃前だったので、20%以上ありました。
―いくら借りましたか?
4ヶ月くらいで限度額の50万円まで借りてしまいました。
最初は生活費のために借りていたのですが、だんだん返済のために借り入れをするようになってしまって。
これで借金の合計額は80万円。でもまだ「職場復帰をしてボーナスで返せば大丈夫」と甘く考えていました。
― さらに借金は膨らんでいったのですね?
生活費も足りませんし、月々の返済も苦しい状態。そんな時に、増枠の案内があったんです。
最初に申し込んでから、半年後くらいのことでしょうか。
もちろんすぐに増枠をOKしましたが、これでさらに借金が増えてしまったんです。
最終的に100万円のキャッシング枠と50万円のショッピング枠を限度額まで使ってしまいました。
― 借金が増えて、不安ではありませんでしたか?
今思えば、自分の首を絞めているだけですよね。
でも当時は目先のことで頭がいっぱいで、「これ以上借りたら大変なことになる」という判断ができなかったのです。
これで月々の返済額は合計5万5千円になってしまいました。
光熱費を節約するなど努力はしていましたが、かなり厳しかったです。
クチコミで知った武富士の悪いウワサ
― さらにもう1社からも借りたんですね?
はい。でもこれまでの借り方とは少し違います。
金利は27%で、高金利です。でも1週間の無利息期間があるので、この期限内に返済してしまえば、金利はかかりません。
そこで返済の「つなぎ資金」として借りたんです。
つまり、数万円だけとりあえず借りて、他社の返済に一時的に充て、1週間以内に返済するという使い方をしていました。
私は「おいしいお客」ではなかったでしょうね(笑)。
― 武富士からも借りたようですが?
武富士はどうしてもお金が必要な時、一度だけしか使っていません。
なぜかと言うと、インターネットに「取立てが厳しく、悪い勢力が関係している」というクチコミがあったからです。弁護士事務所で働いている友達も、「あそこは止めた方が良い」と話していました。
契約した店舗も薄暗い雰囲気で、あまりいい印象ではありませんでしたね。
ですから数万円借りましたが、家にあるものを売ったりして2週間で完済させてしまいました。完済後はすぐにカードにハサミを入れましたよ。
― その後、仕事復帰はできたのですか?
だんだん病気に慣れてきたので、発病して1年ほどで復職しました。ただし出血があり、通勤がきつかったです。
「会社を辞めるか、いっそのこと死んでしまうか」と考えるくらい追い詰められるようになりました。するとストレスで病状が悪化して、四六時中腹痛に襲われるようになったんです。
結局、限界を感じて、復職して1年後の2007年に退職してしまいました。
パチプロで生活することはできるのか?
― 退職後はどうやって暮らしていたのですか?
在宅でSEの仕事をしていました。でも、単発の仕事しかないので、収入は安定していません。
しかも体調が悪いと、パソコンに向かうことも厳しいのです。「もっと高収入で、動かなくても良い仕事はないか...」と考えました。
それで思いついた仕事が「パチプロ」です。実は自分は学生時代に「パチプロ」を目指していたことがあり、パチンコには自信がありました。
さっそく近所のパチンコ店20件ほどの情報を調べ、体調のいい時にパチンコ店に通いました。すると毎月20万円は稼げるようになったんです。
― パチスロで稼ぐのは大変なのでは!?
パチンコ店はタバコの煙とパチンコ台の音がうるさくて、辛かったです。
それに稼ぎ過ぎると、お店側から「インチキをした!」と疑われることがあります。だから体調が悪くても、お店を移動して遠くの店舗まで行かなくてはならないこともありました。
またパチプロの間には、独特のルールがあります。たとえば「新人のパチプロは、先輩に台を譲らなければいけない」みたいな。
ルールを守らないと先輩から怒られてしまうので、気を遣うことも多かったです。
― パチンコだけで生計を立てることができるのですか?
会社に勤めていた頃より、稼いでいたかもしれません。ただし借金の返済があるので、余裕はありませんでした。
とりあえず滞納せずに返済しているという状態。元本は減らず、利息を払っているだけです。
生活が厳しくなると、返済して空いた枠からまた借りて返済してを繰り返していました。
債務整理をし、故郷に帰ることに
― その後、債務整理をしたそうですが、どんなきっかけですか?
病状が悪化して、パチンコ店にほとんど行けなくなってしまいまったんです。開店から閉店までお店に居ることもしんどくて。
それで収入が途絶え、借金総額が200万円まで膨れ上がってしまったんです。
パチプロをはじめて1年後の2008年に、債務整理することにしました。
― 弁護士はどうやって見つけたのですか?
インターネットで弁護士事務所を探し、15件くらいの事務所に電話をかけました。
でも高圧的な態度の人や、「本当に生活費目的で借り入れたのか?」と疑ってくる人もいて...。
5件ほど直接出向いて話をしてみて、一番印象の良かった弁護士さんに決めました。
― 債務整理の方法は?
最初は借金がすべて免除になる「自己破産」を考えていました。
私の体ではいつまで働けるか分かりません。クローン病は、重篤化して寝たきりになってしまう人もいるからです。
しかし弁護士さんは、「たった200万円で自己破産するのはもったいない。自己破産は最後に使う切り札ですよ。人生はまだまだ長い。任意整理で頑張ろう」とおっしゃって。
※自己破産すると、「官報」に名前や住所が掲載されたり、特定の職業に就けなくなったりしますが、任意整理にはそういうリスクはありません。
「任意整理」は、弁護士さんが消費者金融と交渉して借金の利息を免除してもらい、残債を3年以内に返済する債務整理です。
でも私の場合は体のこともあるので、弁護士さんが「3年」を「5年」で返済できるように動いてくれました。
― 債務整理が決着するまでにどれくらい時間がかかりましたか?
弁護士さんと業者側の交渉がまとまらず、1年くらいかかりました。
返済期限を5年に延ばすことを、消費者金融は渋っていたようですね。月々の返済額がなかなか決まらなかったみたいです。
しかし交渉中は返済がストップするので、かえって助かりましたが...。
― 過払い金は発生しましたか?
トータルで15万円くらいの過払い金が戻ってきました。それを弁護士費用と元本の返済に充てることができたんです。
借金問題は一人で抱え込まないで
― 債務整理後はどのように生活していたのですか?
債務整理の最中に実家に戻りました。
それまで母には、借金のことは内緒にしていたんです。
帰省した時、ようやくすべてを正直に打ち明けました。母からは「もっと早く言ってくれればよかったのに」と言われましたね。
私には下に兄弟がたくさんいて、学費などお金の心配が絶えませんでした。
だから「長男だからしっかりしなければ」という思いが強く、なかなか言い出せなかったのです。
でも結果的にこういうことになって、家族にも申し訳なく思っています。
― 現在はどんなお仕事をしているのですか?
帰省後、しばらくの間はアルバイトやパートで生活をしていました。
今は体調も落ち着いてきたので、地元のIT企業で、webやandroid、iphoneのアプリ開発する仕事をしています。
月に数回事務所に出向くだけで、ほとんど在宅で働くことができるので助かっています。
― 債務整理した返済はどうなりましたか?
滞ることなく5年かけて返済して、つい最近(2013年末)完済しました。
もし債務整理していなかったら、いつまでも元本が減らずに、未だに完済できていなかったかもしれません。債務整理して本当によかったです。
― これまでを振り返って、借り入れ以外に方法があったと思いますか?
あったと思います。周りの人に相談をすれば、もっといい手段を知ることができたかもしれませんね。
病気になるまでは「何事も一人でやってきた」というプライドがあったので、「自分でどうにかしなければ。人に相談すると迷惑をかけてしまう」と考えていたのです。
― これからの生活は?
病気も快方に向かっているので、近い将来実家を出て一人暮らしをしようと思っているんです。
そのためにクラウドソーシングに登録して、在宅の仕事を増やせるように動いているところです。
インタビューを終えて
借り入れする人は、上野さんのように責任感が強く、「他人に頼りたくない」という人が多いという印象を受けます。
しかし返済の目処が立たないのに借り入れをすると、かえって家族や友人に迷惑をかけてしまう結果になるかもしれません。
上野さんのように病気やけがで働けなくなった人は、消費者金融などからお金を借りる前に、公の支援を受けてください。例えば「生活保護」はそういう人のためにある制度です。
生活保護については、『生活保護を受けるには?申請の流れ・必要書類・申請時の注意点まとめ』をご覧ください。
また上野さんのように重い後遺症が残る人は、「障害年金」を受けられるかもしれません。
まずはお近くの市区町村役場か、保険事務所などに相談してみましょう。
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