なぜ普通の主婦が月4万円もソーシャルゲームに使ったのか【体験談】

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かつて、私は某有名ソーシャルゲームにハマり、子どもの医療費のためにとっておいたお金をゲーム代につぎ込んでいた時期がありました。

家計を預かる主婦として、最初は「ゲームにつぎ込むのは月に1,000円まで」と決めていたのですが、だんだん使う金額はエスカレート。遂に、子どもの医療費にまで手を出し、予防接種を打たせてやることさえできなくなったのです。

体験者の情報

名前:中谷 由紀子(仮名)
性別:女性
お金に困った理由:ソーシャルゲームのやりすぎ
何を滞納したのか:子どもの医療費
滞納金額:15,000円
当時の職業:主婦
当時の年齢:28歳

こうして私は、子どもの医療費をソーシャルゲームに注ぎ込んだ

子どもは保育園に通っており、園内ではおたふく風邪が流行り始めていました。保育士からも「おたふく風邪の予防接種を受けていない子は早めに受けるように」と促されていました。

地域にもよるのですが、おたふく風邪の予防接種は自費で5,000円~10,000円程度かかります。さらに、私の子は水ぼうそうも未接種だったため、そちらも受けなければなりませんでした。そのために大事に取っておいたお金だったのです。

ゲーム1回に使ってしまったのは15,000円。その程度と思われるかもしれません。けれど、決して裕福とは言えない家計の中で、ようやく工面した大切なお金だったのです。

「予防の1オンスは治療の1ペンスに勝る」という格言がありますが、子どもに病気をさせないことが、親の努めだと私は思っています。そう理解していたはずなのに、気がついたらそのお金はウェブマネーになり、ゲーム内カードに変わっていたのです。

子どもに予防接種を受けさせられない。
しかし、困ったことはそれだけではありませんでした。

一度アプリで大金を使ってしまったら、後にひけなくなり、次の月も万単位でお金を使ってしまったのです。気が付いていたら課金スパイラルにハマってしまったのです。

課金への最初の一歩

課金のきっかけはゲームの中で行われるイベントです。ソーシャルゲームでは、一定期間イベントを行い、ランキング上位者はそこでしか手に入らないレアなカードを獲得できる仕組みがあります。

このイベントにはゲームを盛り上げて楽しむ側面と、課金を促す側面の2つがあるのですが、私はまんまと運営側の意図に乗ってしまったのです。つまり、「もっと強くなりたい!ランキング上位になってレアカードが欲しい!」と思うようになり、ガチャを回すために課金をするようになったのです。

GREEのアプリ(ゲーム)は、基本的にバーチャルなカードゲームが大半で、私がプレイしていたのもカードゲームなのですが、中でも強いカードを得るためには、ガチャを回さないといけない仕組みになっておりました。

「ガチャ」とは、おもちゃ屋の店頭にあるガチャガチャを模したシステムで、一定の確率でレアなカードが手に入るガチャガチャのようなものです。

無料ガチャでもカードは手に入るのですが、レア度も低く、弱いカードばかりで、使い物になりません。有料のガチャであれば、レアカードは確定です。

さらにコンプリートガチャとなると、特定のカードを一揃い揃えることで、スーパーレアなカードを獲得できるのです。

例 「A、B、Cのレアカードを集めると、スーパーレアなDを獲得できる」というような感じです。

私がプレイしていたアプリでは、コンプリートするために必要なカードは6枚。ガチャは1回300円なので、(絶対にあり得ないことですが)6枚をストレートに集められたとしたら、6回ガチャを引くだけでOK。かかるお金は1,800円だけ。

そんなことを考えていた矢先、ゲーム内の友人が2,400円でコンプリートできたと言うのです。ならば私も、3,000円だけやってみよう...。そんな軽い気持ちでコンプガチャに手を出してしまったのです。

「3,000円でやめる」ができないコンプリートガチャ

3,000円分、10回ガチャを回しました。
そして、コンプリート対象カード6枚のうち、揃ったのは4枚。

カードがダブるので、なかなかすんなり集まりません。さらにコンプ対象カード以外のカードも出てくるので、対象カードが出てくる確率はかなり低いといえます。

それでも、当時の私はそのことに気づかず......いえ、薄々気づいてはいたのですが、「あと2枚だから」という気持ちでガチャを回し続けました。

しかし、回しても回しても、あとの2枚が出てくることはありません。投入した金額はもう10,000円を超えています。けれどここまできたら、もう後には引けない。コンプするまで回し続けるしかありませんでした。

ようやく15,000円でコンプできました。
ホッとしたのもつかの間、私は別のコンプガチャをまた回していたのです。

なぜなら、コンプで手に入れたスーパーレアなカードを「進化」させ、さらに強くさせるためです。進化させるには同じカードが必要になります。しかし1つのコンプガチャをコンプリートしたら、もうそれを回すことはできません。

わかりやすく説明すると、今回Aというスーパーレアなカードを手に入れたとしたら、もう1枚Aのスーパーレアカードが必要なのですが、次はBというスーパーレアカードを獲得する必要があるのです。

そして、Bを獲得したら「Aを持っていて、Bを集めている人」と交換するのです。

直接Bが欲しいわけではありませんが、自分の欲しいAを獲得するために、Bを求めてコンプガチャを回すのです。

こうして、結果的に私はひと月で4万円以上をゲームに費やしたのでした。

このゲームにそれだけの価値があるだろうか?

4万円超。今までいくら使ってしまったかをざっと計算したら、この金額になりました。冷や水を浴びせられたかのように、スッとゲーム熱は冷めました。

このお金があったら、他に何ができたでしょう?
同じゲームをするにしても、ゲーム機本体とソフトを買ってもなお お釣りが出る金額です。

「Wii」や「PlayStation3」なら、飽きたら売ることもできます。
しかしバーチャルゲーム内のカードを現金取引することは「リート」と呼ばれ、規制禁止されているのです。

ゲームだけの話ではありません。
このお金があったら、子どもに予防接種を受けさせることができました。

新しい服やおもちゃも買ってあげられたでしょう。
一緒においしいごはんを食べに行けたし、遊びにも行けたでしょう。

また、自身のスキルアップのためにセミナーに通ったり、教室に通ったりもできます。これらのことができていたら、自分の身になる何かが残っていたことでしょう。

4万円超。
このゲームにそれだけの価値があったでしょうか?

いいえ、ゲームでは何も残りません。
ただお金と時間を浪費するだけ。
そのことに気づいて、私はもう課金はしないと固く心に決めました。

しかし課金しないと決めても、毎日のようにアプリで遊んでいれば、また課金欲求が湧いてくるかもしれません。「ならば、しばらくゲームから離れよう。」そう決めても、ふと気づくと携帯を手にして遊んでしまえるアプリの手軽さは、逃れるのが難しかったです。

そこで、日常を忙しく過ごすことに決めました。
初日はつい携帯をさわりたくなりましたが、それよりも別のことをしなければと、自分の気を逸らしました。

2日目は「ゲーム内の友人たちが心配しているかも...」などと思いましたが、そんなことはないと強く思い直しました。

3日目には、「ゲームを進めなければ!」と思っていた焦りが完全になくなりました。そして4日目になり、久しぶりにアプリにログインしてみたのです。

それは、「もう大丈夫」だと思ったから。
案の定、ほどほどに遊んだものの、以前のように「強いカードが欲しい」という、燃えるような欲求はなくなっていました。

もし課金をやめていなかったら困るのは自分だけではない

もしゲームの課金から離れられなかったら、今ごろどうなっていたでしょうか?

もしかすると、消費者金融などで無茶な借り入れをしていたかもしれません。ガチャの課金と同じで、少しだけのつもりが、膨大な借金に繋がっていた可能性もあります。

私は良い歳をした大人ですが、もし中高生だったら、ゲームをするお金欲しさに、カツアゲや窃盗事件を起こしていたかもしれません。

子どもがゲームに刺激され、カードが欲しくてどうしようもなくなってしまう気持ちは、私にも理解できます。実際、遊ぶ金欲しさに犯罪に手を染める子どもたちはいるのですから。

課金地獄を抜け出した今でこそ、そこまで欲しがらなくても...と思える私ですが、ゲームにドハマリしているときは、そんなふうには思えなかったのです。

コンプガチャ課金が世間で問題となり、ついにコンプリートガチャは消費者庁によって規制されることになりましたが、「これでむやみにゲームにお金を費やすことはなくなった」と安堵してはいけません。

先述のとおり、コンプリートガチャは「A、B、Cのレアカードを集めるとスーパーレアなDを獲得できる」システムになっています。

しかし、NHN Japan、GREE、サイバーエージェント、DeNA、ドワンゴ,ミクシィの6社によって構成されるソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会は、従来のコンプガチャは廃止するが、「Aのレアカードを3枚集めるとスーパーレアなDのカードを獲得できる」というガチャは問題ないとする見解を出しています。これでは従来のコンプガチャとほとんど変わりないのです。

ゲームを続ける限り、課金地獄に繋がる落とし穴はまだまだ健在しています。私自身、二度とソーシャルゲームにお金を費やさないために、節度ある遊び方を肝に銘じなければいけないのです。

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