振出・受取前に絶対知っておきたい約束手形のメリットデメリット

この記事では、約束手形の基本的な仕組みやメリット・デメリット、利用時の注意点を解説しています。

手形について何も知らない方でも手形のことがわかるように書きました。手形初心者向けの内容です。

メリット・デメリット、注意点に関しては、振出人と受取人、双方の立場から解説しているので、どちらの立場の方にもおすすめできる内容になっています。

手形の基本をひと通り理解したいのなら、ぜひ一度目を通してみてください。

  • 目次
  • 手形って何?仕組みをわかりやすく解説
  • おいしいのは振出人だけ?受取人のメリットは?
  • 振出・受取前に知っておきたい!手形のこわーいデメリット
  • 手形振り出し時にチェックしておきたいポイント
  • 受取前に必ずチェックすべきポイント
  • 実は怖い融通手形!安易に応じてはいけないワケ
  • 最後に

手形って何?仕組みをわかりやすく解説

手形とは、「ある資格や権利を証明する文書」のこと。切手も手形の一種です。

手形にはいろいろな種類がありますが、今回とりあげるのは「約束手形」です。

約束手形とは、将来のある時点での支払いを約束した文書のことをいいます。

「今からXヶ月後の○月△日に□□万円支払います。」という約束を正式な文書にしたものだと思ってください。約束手形は、主に支払いを引き延ばす手段として使われます。

例を挙げて説明しましょう。

手形支払の例

4月1日、A店がB店からりんごを1,000個仕入れました。代金は10万円です。

A店はすぐに支払いを済ませたかったのですが、あいにく手元にお金がありませんでした。

そこで、A店は約束手形を振り出し(※)、いったん支払いを済ませることにしたのです(B店もそれに同意しました)。

※ 手形を発行することを「振り出す」といいます。

A店は、「3ヶ月後の7月1日に10万円支払う」約束をした手形を振り出しました。

そして3ヶ月後の7月1日。
B店は銀行に行き、A店から受け取った手形を提出。銀行から10万円を受け取りました(そして、A店の当座預金口座から10万円が引き落とされました)。

どうやって振り出す?誰でも振り出せる?

では、どうすれば手形を振り出せるのでしょうか?(以下、手形=約束手形として話を進めていきます)

手形を振り出すには、まず取引中の銀行で「当座預金口座」を開設する必要があります。

当座預金口座とは、手形や小切手を決済できる口座のこと。

ただし、普通預金口座のように誰でも開設できるわけではありません。開設にあたって銀行の審査があります(審査では、普通預金口座での取引実績や会社の信用状態をチェックされます)。

無事審査に通り、当座預金口座を開設できたら、手形を振り出せるようになります。

なお、手形を振り出す人のことを「振出人」、受け取る人のことを「受取人」といいます。通常は、お互いの会社の代表取締役がそれぞれ振出人、受取人となります。

期日はどのくらい?

手形の支払期日は、最大でも120日後(または4ヶ月後)までがひとつの基準です。ただしもっと長いものもあります。

210日後のものを「台風手形」、10ヶ月後のものを「お産手形」といい、長すぎて嫌われます。

おいしいのは振出人だけ?受取人のメリットは?

手形にはどのようなメリットがあるのでしょうか?まずは振出人のメリットを検証してみましょう。

振出人のメリット

支払いを延期できる

手形を振り出すと、事実上、支払いを延期できます。手形振り出しには受取人の同意が不可欠ですが、延期をお願いするよりも承諾を得やすくなるでしょう。

利息がつかない

代金支払いのために金融機関からお金を借りた場合、返済まで利息を払い続けなければなりません。その点、手形を振り出すと無利息で支払い延期ができます。これは振出人にとって大きなメリットですね。

受取人のメリット

では、受取人にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

「手形割引」で資金調達

「手形割引」とは、支払期日のきていない手形を金融機関で換金してもらうこと(普通預金口座あるいは当座預金口座が必要になるので、通常は受取人の取引先の銀行に依頼します)。

ただし、手数料や利息(期日までの日数分)を引いた金額のみ受け取れるので、事実上手形を担保に融資をしてもらうのと同じことになります(したがって、万一手形が不渡りになった場合、銀行にお金を返却しなければなりません)。

手形の期日まで待てば、満額受け取ることが出来るので、損は損なのですが、早急に現金が必要な場合 有効な資金調達法となります。

しかし、手形割引を断られることもあるので注意が必要です。さまざまな要因がありますが、金融機関からみて「信用力が低い」会社が振り出した手形は基本的に買い取ってもらえません。

口約束よりマシ

支払いを先延ばしにされますが、口約束よりマシです。手形があれば、確実に代金を回収できます。

交渉で優位に立てる?

手形の振り出しを認めてもらうのは、支払いの延期を認めてもらうことと同じです。したがって、振出人には少なからず負い目があります。

それを利用して...というと人聞きが悪いですが、受取人は交渉で優位に立てるしょう。

振出・受取前に知っておきたい!手形のこわーいデメリット

ここまでの読むと、「手形っていいことばっかり?」と思われるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。

ここから振出人・受取人に分け、デメリットを紹介していきます。

振出人のデメリット

「手形のジャンプ」をすると信用を失う

手形の支払期日までに必要な金額を用意できなかった場合、受取人に対し、期日の延長をお願いすることができます。

受取人から手形を戻してもらい、新手形を振り出すことになるのですが、これを「手形のジャンプ」と言います。

ただし、受取人が応じない可能性もありますし、「延長分の利息を付けて!」など、条件を提示される可能性もあります。

また、受取人の信用を失ってしまう可能性もあります。「あそこ(振出人)の会社は資金繰りが大変そうだ」なんて噂を立てられでもしたら、取引先から不信感を持たれてしまうかもしれません。

「手形の不渡り」が起こると最悪倒産する可能性も

手形の支払期日がきたら、受取人は金融機関で手形を換金してもらいます。

しかし、万一、振出人の当座預金口座の残高が不足した場合、受取人は金融機関に換金を拒否されます。

これを「手形の不渡り」といいます。また、振出人の会社が倒産した場合も不渡りになります。

6ヶ月以内に2回不渡りを出すと、以後2年間 は銀行取引停止処分となります。その間、当座預金口座は使用できませんし、取引先からの信用も失います。

また、不渡りを出すと、銀行は新規の貸付に応じてくれなくなります。すでに借入がある場合、無担保のものは担保請求をされるなど、厳しい対応をとられるケースが少なくありません。

しかも、全国にある「各地手形交換所」、「各地手形交換所の参加金融機関」、および全国銀行協会が設置・運営している「全国銀行個人信用情報センター」、「各地銀行協会」、「各地銀行協会の取引停止処分者紹介センター」等に、手形不渡りに関する情報が登録されます。

登録される情報は、不渡りとなった手形の振出人氏名・生年月日他の個人データ、会社に関する詳細、不渡りの経緯、手形の詳細など。

それにより、全国の銀行はじめ金融機関に、「この振出人は不渡りを出した」という情報が知れ渡ります。結果、資金的に身動きがとれなくなり、倒産に追い込まれることも考えられます。

過剰在庫・不良在庫のもとになることも

「手形支払だから当面の支払いは大丈夫」などと考えていると気が大きくなり、余分な仕入をしてしまいます。これは過剰在庫や不良在庫のもとになります。

交渉で不利になる?

手形支払にすることで受取人に負い目を感じていると、交渉の場で不利になります。相手の理不尽な要求を飲むことになってしまうかもしれません。

受取人のデメリット

回収できない可能性がある

手形が不渡りになった場合、受取人は代金を回収することができるのでしょうか?

答えは限りなく不可能です。不渡りになっても手形の効力は無くなくなりませんが、振出人に会って直接取り立てるほかありません。支払ってもらえないことが多いと思うので、現実的にはただの紙切れとなってしまいます

手形割引を断られる場合がある

振出人の会社の信用状態が悪いと、金融機関が手形割引に応じてくれません。

支払期日に注意

支払期日の前日までに、銀行に手形を持ち込んでおきましょう

手形の換金期間は支払期日を含む3営業日ですが、間に合わなかった場合、もう銀行では換金できなくなります(少なくとも支払期日の前日に持ち込んでおけば間に合います)。

期日を過ぎても手形の効力は継続しますが、振出人に直接請求しなくてはなりません。

この場合、振出人が支払を拒否しても不渡り扱いにならないので、最悪の場合、代金を回収できない可能性があります。また、支払いを引き延ばされることも考えられます。

こうした事態を避けるため、手形を受け取ったらすぐに銀行に提出しておく方が賢明でしょう。

これなら支払期日を忘れる心配もありません(ただし、この場合数百円~1,000円程度の取立手数料がかかります)。

手形振り出し時にチェックしておきたいポイント

手形振り出しの際に注意したいポイントをいくつか挙げていきます。

期日

手形を振り出すうえで最も重要なのは、「期日までにお金を用意できるか」これに尽きます。

仕入れや売上の管理、キャッシュ・フローの管理を確実に行い、「期日までにお金を用意できる」と確信したうえで振り出しましょう。

金額欄

手書きで金額を記入する場合、法令に基づいた大字の漢数字を使用します。

一般的な漢数字やアラビア数字は使用できません。たとえば「一、二、三」や「1、2、3」ではなく、「壱、弐、参」と表記します(後から数字が改変されるのを避けるためです)。

控え欄

手形用紙には控え欄があります。控えにも同じように記入して、切り離すまえに何度か見比べて合っているか確認しましょう。

受取前に必ずチェックすべきポイント

手形を受け取る際も、いくつか確認しておきたい点があります。

金額欄

金額が正しく記入されているか、しっかり確認してください。

手書きの場合は、改変された痕跡がないか確かめてください。大字の漢数字が使われていない場合は、再発行を依頼したほうが賢明です。

発行者印

発行者印は押されていますか?鮮明でないと銀行で受け付けてもらえなしことがあるので注意です。

支払期日

支払期日は記載されていますか?
正しい日付かどうかも確認しておきましょう。

誤った日付の例)
4月31日 ⇒ 存在しない日付
2013年 ⇒ 過去の日付

また、支払期日までの期間が長過ぎる手形は要注意です。受け取りを再検討した方がいいかもしれません。

回し手形の裏書き

受取った手形(受取手形)で代金を支払うことを「回し手形」といいます。

この場合、受取手形の受取人が手形の裏に署名、捺印します。これを「手形の裏書き」といいます。

受取人欄と裏書きに記入されている署名・捺印は同一人物のものでなくてはなりません(「手形の連続性」といいます)。回し手形を受け取る際は、ここをよくチェックしてください。連続性のない手形は手形として通用しません。

絶対的記載事項と有害的記載事項

手形には、絶対に記載しなければならないことと、絶対に記載してはいけないことがあります。

前者を「絶対的記載事項」といい、これが抜けていると手形が無効になってしまいます。

絶対的記載事項の例)
金額、振出人、支払期日など。

一方、絶対に記載してはならないことを「有害的記載事項」といい、これがあると手形が無効になってしまいます。

例えば、支払いに条件をつけたりするとそれが有害的記載事項となり、手形の効力がなくなります。

手形詐欺に気をつけよう

信頼できない取引先から手形を受け取る際は、十分注意しましょう。

手形詐欺の疑いもあるので、心配なら銀行に手形割引を依頼してみましょう。割引を断られたらあやしい手形だと疑ってください。

詐欺グループは、倒産企業などから入手した手形用紙を使い、それらしい印鑑を押して、回し手形に使用します。このような手形を受け取っても換金できないので、代金を回収できず大損することになります。

実は怖い融通手形!安易に応じてはいけないワケ

実際は取引がないのに振り出される手形のことを「融通手形」といいます。親しい企業同士が、お互い同じ金額・同じ期日のものを交換することが多いようです。

「それだと意味ないのでは?」と思われるかもしれませんが、目的は別にあります。それは、手形割引です。

つまり、期日前の手形を銀行で換金してもらうのです(もちろん審査があるので、必ず応じてもらえるわけではありません)。満額を受け取ることはできませんが、すぐに現金を調達できます。

「お互い同じ期日・同じ金額の手形を持ち合うのだから特に心配ないのでは?」

そう思って簡単に応じてしまいがちですが、ここに落とし穴があります。

融通手形は、資金繰りが厳しい企業の苦し紛れの一策です。倒産する可能性も十分あります。

万一倒産すると手形が不渡りになり、受取人が損害をこうむることになります。

いくら相手先の会社と親しくても、応じないほうが賢明です。

融通手形の例

4月1日 最近業績の悪いC社が、業績の安定しているD社に融通手形をもちかけました。

昔から経営者同士の仲が良いこともあり、断れなかったD社はそれに応じます。

C社、D社お互いが以下の手形を振り出したのです。

金額:100万円
支払期日:8月1日

しかし、7月にC社は倒産してしまいます。

結果、D社の持っていた手形は不渡りとなり、D社は100万円もの損害を被ってしまったのです。

最後に

いかがでしょうか?
手形は、振出人と受取人、双方にメリットのある支払方法ですが、やはり「支払期日にちゃんと換金できること」が前提条件となります。

万一不渡りになれば、双方とも大ダメージを負うことになります。

振出人も受取人も、手形のメリットとデメリット・危険性をよくわきまえて利用しなくてはなりませんね。

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この記事の筆者

露点 計(仮名)
1946年生まれ。大学は経営学を専攻。29歳で会社設立したが、経営不振で資金繰りに苦しむ。3年後、露点計のメンテナンス業務を開始し、業績を回復。バブル期に売上を飛躍的に伸ばし、以後順調に推移、現在に至る。本業は露点計・水分計のエンジニア。他にCDプロデュース、ウクレレ制作、掛軸や額縁を作る「表装」、経理業務など経験。またフラダンス教室とウクレレ教室を主宰。映画大好き人間、パソコン歴は35年、クルマドライブ歴50年。ライターの仕事は、アナログ時代から数えると30年以上。

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