更新日:2018/10/05
意外に知られてない医療費の自己負担額を減らす高額療養費制度とは?
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評価を設定してください ×日本には国民皆保険制度があり、基本的にかかった医療費の3割が自己負担額と決まっています。
病院の領収書をみてみると、たとえば、3,000円の診療費でも、実際の支払いは1,000円程度に減額されていることがわかるはずです。
この3割負担の原則については、皆さんすでにご存知ですよね。
しかし、今回ご紹介する「高額療養費制度」は、3割どころではなく、いくら医療費を使っても毎月最大8万円までしかかかりませんよ
...という制度です。
国民健康保険や健康保険など、公的医療保険に入っていれば利用できる、ものすごい医療費軽減の仕組みなんですが、
残念ながら、ほとんどの人が知りません。
高額療養費制度を利用すれば、入院費用はもちろん、通常の病院代などの医療費がいくら高くなったとしても最大8万円の自己負担で済んでしまうのです。
※実際は、所得によって自己負担額が変動します。詳しくは後ほど説明します。
こんな便利な制度、使わない手はありませんよね。
しかし、高額療養費制度は申請しないと利用できません。
また、複雑な利用条件があったりします。
そこで、今回はその素晴らしい「高額療養費制度」を、はじめて利用する人にもわかりやすく解説しました。
いつ・どんな方法で医療費を請求できるのか、しっかり勉強して、いざというときに利用できるようにしておきましょう。
- 目次
- 医療費はいくら使っても毎月最大8万円まで
- 高額療養費制度の対象にならない医療費
- 高額療養費制度の利用方法は2つ!
- 払い戻しの請求方法
- 限度額適用認定証の入手方法は?
- 1年に4回以上利用すると自己負担限度額が下がる
- 無利子で医療費を借りられる!高額医療費貸付制度を活用しよう
- 保険料を滞納していると高額療養費制度を利用できない!?
- まとめ
医療費はいくら使っても毎月最大8万円まで
高額療養費制度とは、1ヶ月間に負担した医療費が上限額(自己負担限度額)を超えた場合、超えた分が全額補助される制度です。
高額医療費制度と思っている方も多いのですが、正しい名称は高額療養費制度です。
これを利用すれば、高額な医療費・治療費を全額負担しなくて済みます。
国民健康保険や健康保険など、公的医療保険に入っていればどの方でも利用できる制度です。
自己負担限度額っていくらなの?
自己負担限度額は、年齢や年収によって異なります。
70歳未満の場合
70歳未満の方の自己負担限度額は下記のようになっています。
区分 | 自己負担限度額 |
---|---|
ア | 25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1% |
イ | 16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1% |
ウ | 8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1% |
エ | 5万7,600円 |
オ | 3万5,400円 |
では、区分ア、イ、ウ、エ、オにはそれぞれどんな方が当てはまるのでしょうか。
国民健康保険の場合と、健康保険(健康保険組合、共済組合、全国健康保険協会など)の場合で基準が異なるので、下記の表を参考にしてください。
区分 | 国民健康保険の場合 | 健康保険の場合 |
---|---|---|
ア | 世帯の基準所得額 901万円超 |
保険加入者の標準報酬月額 83万円以上 |
イ | 世帯の基準所得額 600万円超901万円以下 |
保険加入者の標準報酬月額 53万~79万円 |
ウ | 世帯の基準所得額 210万円超600万円以下 |
保険加入者の標準報酬月額 28万~50万円 |
エ | 世帯の基準所得額 210万円以下 |
保険加入者の標準報酬月額 26万円以下 |
オ | 住民税非課税者 | 住民税非課税者 |
基準所得額とは?
収入(売上げなど)から必要な経費を引き、そこからさらに基礎控除額(33万円)を差し引き、残った分が基準所得額となります。
国民健康保険の場合、世帯全員の基準所得額を合計するの?
全員が国保加入者なら、すべて合計します。世帯内に他の保険に加入している人がいる場合、その人の所得はのぞいて合計します。
標準報酬月額とは?
4月~6月(いずれも17日以上働いた前提)に支給された報酬(給料や手当)を合算し、3で割って平均額を出します。そして、その平均額を「標準報酬月額表」と照らし合わせれば、標準報酬月額がわかります。たとえば、平均額が27万円だった場合、標準報酬月額は28万円です。「標準報酬月額表」については、下記を参考にしてください。
株式会社セルズ「標準報酬月額表」
http://www.team-cells.jp/hyoujyun/hyoujyunhousyu.php
<2017/03/21 アクセス>
また、細かい計算は面倒だけれど、おおよその目安を知りたいという場合は、下記の表を参考にしてください。
区分 | 年収の目安 |
---|---|
ア | 約1,160万円~ |
イ | 約770万円~1,160万円 |
ウ | 約370万円~770万円 |
エ | ~約370万円 |
オ | 住民税非課税 |
ここでいう「年収」とは、国民健康保険の場合は世帯所得、健康保険の場合は保険加入者の所得を指します。
70歳以上75歳未満の場合
また、70歳以上75歳未満の自己負担限度額は下記のようになっています。
所得区分 | 自己負担限度額 | |||
---|---|---|---|---|
外来 (個人ごと) |
外来・入院 (世帯) |
|||
(1)窓口負担3割の世帯 | 4万4,400円 | 8万100円+ (医療費-26万7,000円) ×1% |
||
(1)と(3)以外の世帯 | 1万2,000円 | 4万4,400円 | ||
(3)低所得者世帯 | 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 2万4,600円 | |
住民税非課税世帯で、世帯収入から必要経費・控除(年金の控除額は80万円)を引いたら所得が0になる世帯 | 1万5,000円 |
世帯内に70歳未満と70歳以上が両方いる場合はどうなる?
健康保険の場合、「保険加入者の収入」と「受診者の年齢」が基準となります。
たとえば、下記のような家庭の場合はどうなるのでしょうか?
- 保険加入者が夫(65歳)で、妻(70歳)がその扶養家族
- 夫の区分は「70歳未満の場合」の「イ」
このケースで妻が高額療養費制度を利用すると、「70歳以上75歳未満の場合」の「(1)窓口負担3割の世帯」の自己負担限度額が適用されます。
また、国民健康保険の場合、「世帯の所得」と「受診者の年齢」が基準となります。
たとえば、下記のような家庭の場合、
- 夫(65歳)と妻(70歳)の2人世帯
- 世帯所得の区分は、「70歳未満の場合」では「イ」、「70歳以上75歳未満の場合」では「(1)窓口負担3割の世帯」
このケースで妻が高額療養費制度を利用する場合、「70歳以上75歳未満の場合」の「(1)窓口負担3割の世帯」の自己負担限度額が適用されます。
自己負担限度額はいくら?シミュレーションしてみよう!
下記のようなサービスを利用すれば、簡単に自己負担限度額がわかりますので、ぜひ利用してみてください。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ 高額療養費パーフェクトマスター「高額療養費の計算方法 - 1.シミュレーションの手順と結果の見方」
http://www.bms.co.jp/kogakuryoyo/program/program01.html
<2017/03/21 アクセス>
具体的にいくら補助されるの?
たとえば、70歳未満で、ウの区分に当てはまる方が4月に15万円の病院代を支払ったとします。
この場合の総医療費(保険適用される前)は50万円です。
そのため、この方の自己負担限度額は、
8万100円+(50万円-26万7,000円)×1%=8万2,430円
8万2,430円なので、それを超える部分は補助されます。
つまり、今回の場合、
15万円-8万2,430円=6万7,570円
6万7,570円が補助されることになります。
70歳以上75歳未満の場合は?
70歳以上75歳未満で、「(1)と(3)以外の世帯」の区分に当てはまる方が、4月に外来で3万円、入院で5万円の医療費を支払ったとします。
この方の「外来(個人ごと)」の自己負担限度額は1万2,000円となりますので、
3万円(外来の自己負担額)-1万2,000円=1万8,000円
1万8,000円が補助されます。
また、「外来(個人ごと)」の自己負担限度額(1万2,000円)と入院の自己負担額(5万円)を合算し、そこから、「外来・入院(世帯)」の自己負担限度額(4万4,400円)を引くと、
(1万2,000円+5万円)-4万4,400円=1万7,600円
1万7,600円が補助されます。
よって、今回の場合、
1万8,000円+1万7,600円=3万5,600円
計3万5,600円が補助されることになります。
同じ月なら、世帯内の医療費(自己負担額)を合算できる?
同じ種類の保険に加入しているなら、家族(扶養家族)の医療費(自己負担額)を合算することができます。
また、1人で2つ以上の病院で受診した場合や、同じ病院で入院と通院をした場合も合算できます。
これを世帯合算といいます。
合算するときの注意点(70歳未満の場合)
1ヶ月にかかった自己負担額を、病院ごとに計算してください(薬局の薬代は、処方箋を出した病院の金額に含めます)。
また、同じ病院内で、複数の科を受診した場合は、医科入院・医科外来・歯科入院・歯科外来に分けて計算してください。
そして、それぞれの金額が、2万1,000円以上でないと合算できません。
かなりややこしいので、例を見てみましょう。
70歳未満で、ウの区分に当てはまる猫田さん世帯の、1ヶ月あたりの自己負担額を下記にまとめてみました。
受診者 | 受診日 | 病院名 | 科 | 外来/入院 | 自己負担額 | 総医療費 |
---|---|---|---|---|---|---|
夫 (保険加入者) |
4月1日 | A病院 | 医科 | 外来 | 3万円 | 10万円 |
4月5日 | A病院 | 医科 | 外来 | 4万5,000円 | 15万円 | |
妻 (夫の扶養家族) |
4月20日 | B病院 | 医科 | 入院 | 6万円 | 20万円 |
4月25日 | B病院 | 歯科 | 外来 | 1万5,000万円 | 5万円 | |
合計 | 13万5,000円 (合算できるもののみ) |
50万円 |
では、病院ごと、また医科入院・医科外来・歯科入院・歯科外来に分けて自己負担額を計算してみましょう。
A病院の医科の外来...7万5,000円
B病院の医科の入院...6万円
B病院の歯科の外来...1万5,000万円
4月1日、4月5日の分は、「同じ受診者・同じ病院・医科・外来」なので、合算して7万5,000円となります。
上記のうち、合算対象にならないのは(2万1,000円未満なのは)、「B病院の歯科の外来」の1万5,000円だけです。
それ以外のものは合算できるので、合計13万5,000円となります。
猫田さんの自己負担限度額は、下記の計算式で計算できます。
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%
8万100円+(45万円-26万7,000円)×1%=8万1,930円
猫田さんの自己負担限度額は、8万1,930円です。
猫田夫の4月の自己負担額(計7万5,000万円)では、自己負担限度額(8万1,930円)に届きませんでしたが、夫婦の分を合わせれば(計13万5,000円)、自己負担限度額を超えます。
つまり今回の場合、
13万5,000円-8万1,930円=5万3,070円
5万3,070円は補助されるのです。
70歳以上の場合はどうなるの?
世帯の医療費を合算する際に制限があるのは、70歳未満の世帯だけです。70歳以上の世帯の場合、「2万1,000円以上」の制限はありません。単純に、世帯内の自己負担額を合算できます。ただし、同じ種類の健康保険に加入していることが前提です。
月をまたいだ場合は合算できない!
高額療養費制度は、1ヶ月に負担した医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が全額補助される制度です。
つまり、医療費の負担が月をまたいでしまった場合は、それぞれ別に計算しなければなりません。
4月に支払った分なら4月分、5月に支払った分は5月分として計算しなければならないので、注意してください。
実際、支払いがふた月に分かれてしまったせいで、高額療養費制度が適用されなかった事例もあります。
よろしければあわせてご覧ください。
高額療養費制度の対象にならない医療費
すべての医療費が高額療養費制度の対象になるわけではありません。
たとえば保険の適用がない自由診療はすべて対象外です。
他にも、対象になるもの、ならないものがあるので、下記の表にまとめてみました。
対象 | 対象外 |
---|---|
|
|
出産費用は?
出産費用は高額療養費制度の対象外ですが、別途、健康保険から「出産育児一時金」が支給されます。
対象外の費用は、自己負担額にも総医療費にも含めません。
高額療養費制度の利用方法は2つ!
高額療養費制度の利用方法には、
- 1後から払い戻しを受ける
- 2はじめから自己負担限度額しか負担しない(限度額適用認定証を提示する)
の2種類があります。
それぞれについて説明しましょう。
1. 後から払い戻しを受ける
病院や薬局では通常通り医療費を支払い、後日加入している保険に高額療養費の申請をしてください。
すると、自己負担限度額をオーバーした分の払い戻しを受けられます。
2. はじめから自己負担限度額しか負担しない(限度額適用認定証を提示する)
「手術する」「入院する」など、費用がふくらむことが予想できる場合は、あらかじめ限度額適用認定証を入手しましょう。
限度額適用認定証を医療費の会計時に提示すれば、最大でも自己負担限度額までの支払いで済みます。
たとえば、70歳未満で、ウの区分に当てはまる方が限度額適用認定証を利用した場合はどうなるのでしょう。
ウの区分にあてはまる方の自己負担限度額は、下記の式で求めることができます。
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%
この場合、1ヶ月の自己負担額が8万100円以下なら通常通り支払い行いますが、8万100円を超えた部分については総医療費の1%を支払っていくことになります。
より詳しい例を出しましょう。
受診日 | 病院名 | 科 | 外来/入院 | 本来の自己負担額 | 総医療費 |
---|---|---|---|---|---|
4月1日 | A病院 | 医科 | 外来 | 3万円 | 10万円 |
4月20日 | A病院 | 医科 | 外来 | 12万円 | 40万円 |
4月25日 | A病院 | 医科 | 外来 | 9万円 | 30万円 |
この場合、窓口ではどのように支払うことになるのでしょうか。
- 14月1日に3万円を支払います。
- 24月20日の時点で高額療養費制度の適用条件を満たします。このときの自己負担限度額は、8万100円+(50万円-26万7,000円)×1%=8万2,430円。そのため、8万2,430円から4月1日に支払った3万円を差し引き、5万2,430円のみを支払います。
- 34月20日の時点で、月間の自己負担額が8万100円を超えているので、4月25日の支払いの際は総医療費(30万円)の1%のみ支払えばOKです。つまり、3,000円のみ支払います。
このように、窓口での支払いを自己負担限度額までにおさえることができます。
ただし、月間の自己負担額を計算する際は、病院ごとに計算します(薬局の薬代は、処方箋を出した病院の金額に含めます)。
また、同じ病院内で複数の科を受診したり、入院した場合は、医科入院・医科外来・歯科入院・歯科外来に分けて計算する必要があります。
そのため、窓口で限度額適用認定証を提示していても、あとから世帯合算による払い戻しを受けられる場合があります。
このような場合は、別途 高額療養費の申請(払い戻しの請求)が必要です。
「あとから世帯合算による払い戻しを受けられる」のはどんなとき?
さきほどと同様、ウの区分に当てはまる方が限度額適用認定証を利用したケースを仮定しましょう。
受診日 | 病院名 | 科 | 外来/入院 | 本来の自己負担額 | 総医療費 |
---|---|---|---|---|---|
4月1日 | A病院 | 医科 | 外来 | 3万円 | 10万円 |
4月20日 | A病院 | 医科 | 入院 | 6万円 | 20万円 |
4月25日 | B病院 | 歯科 | 外来 | 3万円 | 10万円 |
この場合、
- A病院の医科の外来
- A病院の医科の入院
- B病院の歯科の外来
この3つの自己負担額はすべて別々に計算されるため、どれも自己負担限度額には達しません。
よって、窓口では自己負担額全額を支払うことになります。
しかし、世帯合算により、後ですべて合算できるのです。
この場合の自己負担限度額は、
8万100円+(40万円-26万7,000円)×1%=8万1,430円
よって、あとから高額療養費の申請をすれば、
(3万円+6万円+3万円)-8万1,430円=3万8,570円
3万8,570円の払い戻しを受けることができます。
払い戻しの請求方法
高額療養費の申請方法(払い戻しの請求方法)を詳しく紹介しましょう。
申請可能なのはいつまで?
申請が可能なのは、医療費の領収書にある日付の翌月1日から2年以内です。
たとえば、領収書にある日付が2017年4月15日なら、2019年4月30日までに申請しましょう。
2年を過ぎると時効になり、払い戻しを受けることができなくなります。
月ごとに申請が必要
月ごとに申請する必要があります。
たとえば、4月と5月にそれぞれ自己負担限度額を超える医療費を支払った場合は、両月とも申請する必要があります。
申請方法・申請時に必要なもの
ここで、主要保険別に、申請方法・必要書類などをまとめてみました。
健康保険組合 共済組合 |
全国健康保険協会 (協会けんぽ) |
国民健康保険 | |
---|---|---|---|
申請先 (問合わせ先) |
加入している健康保険組合か共済組合 | 協会けんぽの都道府県支部 | 市区町村の役所 |
申請方法 | なし (医療機関からの診療明細をもとに自動で払い戻される) |
|
|
必要書類 | - |
|
|
※組合、支部、自治体によって申請方法や必要書類が異なります。詳しくはお問い合わせください。
※健康保険組合、共済組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)は、広い意味で「健康保険」に含まれます。
健康保険組合・共済保険の場合
大企業の社員が加入する健康保険組合や、公務員が加入する共済組合の場合、申請自体不要なことが多いです。
支払った医療費の明細は、病院等から企業・機関に送信されるので、それをもとに払い戻し金額が計算され、自動的に給与振込口座に振り込まれます。
ただし、一部申請が必要な場合もありますので、勤務先の担当部署に確認してみてください。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合
中小企業の社員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、申請手続きが要ります。
協会けんぽのホームページから「健康保険高額療養費支給申請書」をダウンロードし、必要事項を記入して、各都道府県支部に提出しましょう(支部によっては郵送可)。
全国健康保険協会「健康保険高額療養費支給申請書」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r119
支部によっては、申請書に医療費の領収書を添付しなければならないので、必ず保管しておきましょう。
また、「ケガ(負傷)の場合」「低所得者の場合」などは別途必要書類が増えますので、詳しくは各都道府県支部に問い合わせましょう。
国民健康保険の場合
主に自営業が加入する国民健康保険の場合、高額療養費の支給対象になったら、数ヶ月以内に通知書や申請書が送られてきます(※1)。
通知書や申請書が届いたら、必要書類を用意して役所の担当窓口へ申請に行ってください(自治体によっては郵送可)。
ただし、国民健康保険の場合は、必要書類が多い上に自治体によって種類が異なるので注意が必要です。
事前にホームページや電話で、下記のようなことを確認しておきましょう。
- 申請書の入手方法や提出方法、提出先
- 必要書類(誰の、何が必要か)
※1
なかには通知が届かない場合もあるので、念のためご自身で医療費や自己負担限度額を把握しておきましょう。
いつ頃払い戻されるの?
受診した月から最低3ヶ月はかかります。
なお、3ヶ月以上経ってから申請した場合は、最短1ヵ月ほどで払い戻されるようです。
指定した口座に振り込まれるのが一般的です。
限度額適用認定証の入手方法は?
限度額適用認定証はどこで受け取れるのでしょうか?
まずは加入している保険への申請が必要です。
申請方法・申請時に必要なもの
限度額適用認定証の入手方法について主要保険別に調べてみました。
健康保険組合 共済組合 |
全国健康保険協会 (協会けんぽ) |
国民健康保険 | |
---|---|---|---|
申請先 (問合わせ先) |
加入している健康保険組合か共済組合 | 協会けんぽの都道府県支部 | 市区町村の役所 |
申請方法 |
|
|
|
必要書類 (郵送) |
申請書 | 申請書 |
|
必要書類 (窓口での即日発行) |
- |
|
|
※組合、支部、自治体によって申請方法や必要書類が異なります。詳しくはお問い合わせください。
※健康保険組合、共済組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)は、広い意味で「健康保険」に含まれます。
保険の組合、支部、自治体によって申請方法や必要書類が異なるので、事前に下記を問い合わせて確認しましょう。
- 申請書の入手方法
- その他の必要書類(誰の、何が必要なのか)
- 申請方法
- (どこの)窓口に行けば即日発行できるのか
申請書等はホームページでダウンロードできることもあります。
たとえば、協会けんぽの場合、申請書は下記のページからダウンロードできます。
全国健康保険協会「健康保険限度額適用認定申請書」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r121
いつ限度額適用認定証を受け取れるの?
郵送で申請した場合は、認定証が手元に届くまで通常1週間ほどかかります。
一方、協会けんぽと国民健康保険の場合、窓口に行けばその場で認定証を受け取れます。
ただし、協会けんぽは、支部によって即日発行に対応していません。
また、国民健康保険の場合、支所・出張所では発行できないので、注意してください。
なお、健康保険組合・共済組合は即日発行に対応していないことが多いのですが、組合によっては、「2営業日後に発送」「FAX対応可能」などの方法で日数を短縮できるケースもあるようです。
詳しくは各組合に問い合わせてみましょう。
低所得者の場合は申請書の種類が異なる!
低所得者(住民税非課税)の方は、申請書の種類が異なりますので注意してください。
たとえば、協会けんぽの場合、通常は「健康保険限度額適用認定申請書」ですが、低所得者の場合は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」を提出することになります。
詳しくは、加入している保険の担当部署に問い合わせてみましょう。
70歳以上は限度額適用認定証が不要
70歳以上になると、高齢受給者証が限度額適用認定証の代わりになるので、限度額適用認定証は不要です。
この場合、病院の窓口で保険証と高齢者受給者証を提示すればOKです。
限度額適用認定証の有効期限は1年
限度額適用認定証の有効期限は申請月の初日から最長で1年間です。
それ以降も利用したい場合は、再度発行手続きが必要です。
1年に4回以上利用すると自己負担限度額が下がる(多数該当)
複数回 高額療養費の払い戻しを受けた場合は、多数該当により自己負担限度額が下がることがあります。
具体的には、直近12ヶ月以内に、4回以上払い戻しを受けた場合は、4回目以降から自己負担限度額が下がります。
70歳未満の場合、多数該当が適用された自己負担限度額は以下のようになります。
区分 | 自己負担限度額 (多数該当適用) |
---|---|
ア | 14万100円 |
イ | 9万3,000円 |
ウ | 4万4,400円 |
エ | 4万4,400円 |
オ | 2万4,600円 |
また、70歳以上75歳未満は、多数該当が適用されると自己負担限度額が4万4,400円に下がります(「(1)窓口負担3割の世帯」の「外来・入院(世帯)」の場合のみ)。
保険の種類が変わると多数該当が適用されない
途中で加入する保険が変わるとカウントがゼロになるので、注意してください。
たとえば、下記のようなケースです。
- 1協会けんぽに加入していて、3回、高額療養費の払い戻しを受けた
- 2退職したため、協会けんぽから国民健康保険に加入
- 3国民健康保険でも高額療養費の払い戻しを受けた
この場合、1~3が12ヶ月以内でも、多数該当は適用されません。
国民健康保険に加入してからの分が新たにカウントされることになります。
無利子で医療費を借りられる!高額医療費貸付制度を活用しよう
高額療養費の払い戻しを受ける場合、お金が振込まれるのは3ヶ月以上先になります。
もし生活が苦しくなるようなら、高額医療費貸付制度を利用しましょう。
高額医療費貸付制度は、高額療養費制度で払い戻されるお金の8割(国民健康保険の場合は最大9割)までを無利子・無担保で借りられる制度です。
申請方法・申請時に必要なもの
ここで、主要保険別に、申請方法・必要書類などをまとめてみました。
健康保険組合 共済組合 |
全国健康保険協会 (協会けんぽ) |
国民健康保険 | |
---|---|---|---|
申請先 (問合わせ先) |
加入している健康保険組合か共済組合 | 協会けんぽの都道府県支部 | 市区町村の役所 |
申請方法 |
|
|
|
必要書類 |
|
|
|
お金の受取り方法 | 加入者の口座に振込まれる | 加入者の口座に振込まれる |
|
※組合、支部、自治体によって対応や必要書類が異なります。詳しくはお問い合わせください。
※健康保険組合、共済組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)は、広い意味で「健康保険」に含まれます。
加入している保険の組合、支部、自治体によって申請方法や必要書類が異なるので、事前に下記を問い合わせて確認しましょう。
- 申請書の入手方法
- その他の必要書類(誰の、何が必要なのか)
- 申請方法
申請書等はホームページでダウンロードできることもあります。
たとえば、協会けんぽの場合、申請書は下記のページからダウンロードできます。
例)協会けんぽ 大阪支部の場合
全国健康保険協会「高額医療費貸付制度について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/osaka/cat080/kashitsuke/kasitukekouryou
いつ頃借りられるの?
お金を受け取れるのは申請から2~3週間後。
加入者の口座に振込まれることが多いですが、国民健康保険の場合は自治体から医療機関に直接入金される場合もあります。
いつ・どうやって返済するの?
高額療養費が払い戻されるときに相殺されるので、返済手続きの必要はありません。
仮に高額療養費のほうが多い場合は残額が振込まれ、高額療養費のほうが少なかった場合は差額を支払うことになります。
保険料を滞納していると高額療養費制度を利用できない!?
保険料を滞納している場合は、高額療養費制度・高額医療費貸付制度を利用できないことがあります。
特に、滞納が1年以上続いていて、保険証を返還してしまっていると、高額療養費の支給を止められる可能性が高いです。
なお、国民健康保険には保険料軽減制度があるので、保険料の支払いが難しい場合は自治体の窓口で相談しましょう。
まとめ
いかがでしたか。
今回の主なポイントをおさらいしましょう。
高額療養費制度とは?
- 1ヶ月間に負担した医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が全額補助される制度
- 自己負担限度額は年齢や収入によって異なる
- 例 70歳未満で、年収約370万円~770万円の場合は「8万100円+α」
家族の自己負担額を合算できる
- 家族(扶養家族)の医療費(自己負担額)を合算することができる
- 1人で2つ以上の病院を受診した場合や、同じ病院で入院と通院した場合も合算できる
- 同月内に支払った医療費で、家族が同じ保険に加入していれば合算できる
- 病院ごとに、医科入院・医科外来・歯科入院・歯科外来に分けて自己負担額を計算し、金額が2万1,000円以上の医療費でないと合算できない(70歳未満の場合のみ)
高額療養費制度の対象にならない費用
- 入院時の食事代
- 入院時の身のまわり品
- 交通費
- 保険がきかない差額ベッド代
- 先進医療
- 混合診療の自由診療部分
- 人間ドッグ
- 出産費用
補助を受ける方法
- 後から払い戻しを受ける
- はじめから自己負担限度額しか負担しない(限度額適用認定証を提示する)
払い戻しの請求について
- 申請が可能なのは、医療費の領収書にある日付の翌月1日から2年以内
- 月ごとに申請する必要がある
- 郵送や窓口で申請する(申請不要の場合もある)
- 払い戻しが受けられるのは、受診した月から最低3ヶ月後
限度額適用認定証について
- 入手するには、郵送や窓口で申請が必要
- 郵送の場合は認定証を受取るまで1週間ほどかかるが、窓口に行けばその場で認定証を受け取れるところもある
- 70歳以上の場合は限度額適用認定証が不要(高齢受給者証を提出すればOK)
- 限度額適用認定証の有効期限は申請月の初日から最長1年間
高額医療費貸付制度とは?
- 高額療養費制度で払い戻されるお金の8割(国民健康保険の場合は9割)までを無利子・無担保で借りられる制度
- 郵送や窓口で申請すれば、2~3週間で貸付けが受けられる
- 高額療養費が払い戻される際に相殺されるので、返済手続きは不要
いかがでしたか。
医療費が高額になったときは、高額療養費制度・高額医療費貸付制度を使わない手はないですね。
ちなみに、医療費が払えないときに使える制度についてはこちらでも特集しています。
また、病気やケガで働けない場合は傷病手当金をもらえるかもしれません。
こちらもぜひチェックしてみてください。
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この制度の詳細がわからないので調べてると、いろいろな説明があります。
まず冒頭の「医療費はいくら使っても毎月最大8万円まで」は説明不足で、実際は後述の「同じ月なら、世帯内の医療費(自己負担額)を合算できる?」の説明にあるように「21,000円以上のみ合算可」であり、8万円を超えても21,000円未満のものは戻りません。
問題は合算可能な21,000円の内容です。
(1)レセプトあたり21,000円でなく、同一医療機関の月当り合算が21,000円以上であればいいのか?
(2)何を以て同一医療機関なのか?地方のA大学付属病院分室に診察にいき、その病院から「ここは施設がないので都心のA大学医学部病院で検査してこい」と指示された場合、地方のA大学付属病院分室と都心のA大学医学部病院(病院名と住所が異なる)は同一医療機関なのか?
(3)「(薬局の薬代は、処方箋を出した病院の金額に含めます)」と説明にあるが、病院の薬局でなく市中の処方箋薬局の場合もそうなのか?(所得税の医療費控除の場合は処方箋を出した病院の記載でなく薬局の記載を求められます)
以上の3点がよくわかりません。
解説していただけると有難いです。
先のコメントの追加です。
(1)の21,000円以上は、レセプトあたりか、同一医療機関(医科・歯科・入院・外来ごと)の月当たり合算かですが、ある自治体の説明には以下のように記載されてます。
1.同じ月内に個人ごとに、同じ医療機関で受けた療養の一部負担金が自己負担限度額を超えた場合
2.同じ月内に同じ世帯の人が、21,000円以上の一部負担金を2回以上支払い、その合計額が自己負担限度額を超えた場合
2.の説明で「21,000円以上を2回」と書かれていますので、同一病院・医科・外来で、1ヶ月に2万円を4回払っても合算対象とはならないのではないでしょうか?(つまりレセプトあたり21,000円以上でないといけない)