更新日:2018/07/20
倒産会社の給与未払い解決方法!これだけで最大8割まで取り戻せる!
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「賃金の未払いが続いていた!」
「未払い賃金を取り戻すことはできるの?」
最近は倒産件数もやや減少傾向のようですが、そうはいっても平成25年度に倒産した会社は、約1万800社!(東京商工リサーチ調べ)
もしあなたが勤めている会社が突然倒産してしまったら、未払いの賃金はどうなるのでしょうか? 涙をのんで、あきらめるしかないのでしょうか?
いえ、実は会社が倒産してしまったとき、未払いとなっている賃金を立て替えてくれる制度があります。
それが「未払賃金立替払制度」です。
すでにこの制度は広く利用されていて、多くのサラリーマンがこの制度のおかげで、未払いになりそうだった賃金を取り戻しています。
今回はこの未払賃金立替払制度について、制度の概要から対象となる賃金、実際の請求方法、まで、詳しく解説します。
未払賃金立替払制度ってなに?
未払賃金立替払制度は、勤めていた会社が倒産したときに、未払いとなっている賃金のおよそ8割を政府が立替えてくれる制度です。
独立行政法人である労働者健康福祉機構が窓口をしています。
未払賃金立替払制度のメリット
この未払賃金立替払制度、労働者にとってはなんとも嬉しい制度ですよね。
まずはそのメリットを紹介していきましょう。
- 勤めていた会社が倒産したとき、未払い賃金(退職金含む)のうち、最大8割を受け取ることができる
- アルバイトやパートなど、正社員でなくても受け取ることができる
- 外国人であっても受け取ることができる
- 労働者自身が会社側と交渉する必要がない
- (倒産前に退職した場合)退職の理由は、自己都合でも会社都合でもよい
自分で交渉する必要なし。
必要な手続きを踏めば、未払賃金のうち最大8割を受けとれるのです。
これはとてもありがたいですね。
利用するための条件とは
この未払賃金立替払制度を利用するためには、いくつかの条件があります。
ここで確認しておきましょう。
会社が倒産していること
会社(※1)が倒産していることが必須です。
※1
この場合、会社ではなく、個人事業主でもOKです。ただし、同居の親族以外の労働者を1人以上使用していなければなりません。
会社の倒産には、下記2つの種類がありますが、どちらの場合でも申請できます。
- 法律上の倒産
- 事実上の倒産
法律上の倒産とは
裁判所にいわゆる倒産の申立て(破産、民事再生など)をし、それを受けた裁判所が手続き開始の決定をおこなうと、法律上の倒産となります。
事実上の倒産とは
破産等の手続きはしていなくとも、「事業活動が停止していて再開の見込みがなく、賃金が払えない状態」であることを労働基準監督署が認めた場合、事実上の倒産となります。
例)
法的な倒産手続きはされてないが、社長が行方不明になってしまい事業はストップ。賃金も未払いのまま
ただし、事実上の倒産が認められるのは、中小企業のみなので注意してください。
ここでいう中小企業とは、下記のうちいずれかに当てはまる場合です。
業種 | 常時使用する労働者数または資本金の額 |
---|---|
一般産業 | 300人以下 または 3億円以下 |
卸売業 | 100人以下 または 1億円以下 |
サービス業 | 100人以下 または 5000万円以下 |
小売業 | 50人以下 または 5000万円以下 |
会社が1年以上事業活動していたこと
会社が事業活動を1年以上継続して行っていたことも必須条件です。
未払い賃金の総額が2万円以上
未払い賃金の総額が2万円以上でないと立て替え払いを請求できません。
退職日が、倒産の半年前から倒産後1年半の間であること
退職日が倒産の半年前から倒産後1年半の間であれば、立て替え払いを請求できます。
引用元:厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要 〔参考〕立替払を受けることができる人」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/tatekae/980902_1.htm
倒産後、2年以内に手続きをおこなうこと
会社の倒産後2年以内に立て替え払いを請求しなければなりません。
役員は対象外
正社員だけでなく、アルバイト・パートも対象となりますが、役員は対象外です。
役員は、そもそも会社を経営していく立場なので、この制度を利用することはできないのです。
ただし兼務役員という立場で、役員だけでなく社員としても賃金を受け取っていた場合は違います。この場合、社員として受け取っていた賃金については、立て替え払いを請求できます。
自分の立場が微妙でよくわからない場合は、近くの労働基準監督署に相談してみましょう。
対象となる賃金
未払賃金立替払制度の対象となる賃金がなにかを見ていきましょう。
定期賃金と退職手当(退職金)が対象
対象となるのは、毎月定期的に支払われる賃金(基本給と通勤・住宅・残業手当などの各種手当)と退職手当です。
ボーナスや祝い金などは対象になりません。
ちなみに、立て替え払いを請求した結果 受けとれるのは、税金(所得税、住民税など)や社会保険料などが控除される前のもの、つまり額面の金額となります。
いつの賃金が対象になるの?
対象となるのは、退職日の6か月前の日から立替払請求をおこなった日の前日までの間に支払期日があり、未払いになっている定期賃金や退職手当です。
また、退職手当に関しては、退職日が月の途中だった場合、日割りで計算します。
引用元:労働者健康福祉機構「Ⅰ未払賃金の立替払制度の概要」
https://www.johas.go.jp/tabid/687/Default.aspx
年齢によって受けとれる金額が異なる
受けとれるのは、未払賃金の総額、あるいは限度額のうち、いずれか低い方の8割となります。
では、限度額とはいくらのことでしょうか?
限度額は、退職日の年齢によって決められています。
退職日の年齢 | 限度額 |
---|---|
45歳以上 | 370万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 |
30歳未満 | 110万円 |
たとえば、退職日の年齢が35歳の場合、限度額は220万円になります。
この人の未払い賃金が250万円だった場合、
未払い賃金(250万円)>限度額(220万円)
このようになるので、より金額が低いのは限度額(220万円)のほうですよね。
したがって、この場合は
220万円×80%=176万円
176万円を受け取ることができるのです。
立て替え払いを受けるまでの流れ
未払賃金を受け取るまでの流れを、「法律上倒産」と「事実上の倒産」の場合に分けて解説します。
法律上の倒産の場合
まずは、法律上の倒産の場合の手続き方法です。
STEP1.証明書を交付してもらう
証明者(※2)、または裁判所から、倒産日や未払い賃金の金額などを証明する証明書を交付してもらいます。
※2
証明者は手続きの種類によって異なります。
破産・会社更生の場合:管財人
民事再生の場合:再生債務者(管財人が選任されている場合には管財人)
特別清算の場合:清算人
会社整理の場合:管理人
STEP2. 証明書に必要事項を記入し、労働者健康福祉機構に提出
STEP1で受け取った証明書の左半分に未払賃金の立替払請求書と退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書があります。
この書類に、住所、氏名、請求金額、振込先の金融機関、勤続期間、退職日などの必要事項を記入し、労働者健康福祉機構に提出します(証明書は1枚綴りになっているので、切り離さずに提出してください)。
なお、証明書は、労働者健康福祉機構のホームページからダウンロードできますし、労働基準監督署でも入手できます。
労働者健康福祉機構「未払賃金立替払請求書・証明書」
https://www.johas.go.jp/chinginengo/miharai/tabid/418/Default.aspx
STEP3. 指定した口座に振込まれる
提出した書類が審査され、その内容に問題がなければ、約30日以内に指定した口座へ立替払金が振り込まれます。
事実上の倒産の場合
次に、事実上の倒産の場合の手続き方法について解説します。
STEP1. 労働基準監督署に認定申請書を提出
まずは退職日の翌日から起算して6ヶ月以内に、倒産した会社所在地の労働基準監督署に認定申請書を提出し、事実上の倒産について認定を受けます(他の退職者がすでにこの手続きを済ませている場合は必要ありません)。
そして、無事認定を受けられたら、認定通知書が交付されます。
なお、認定申請書は、労働基準監督署に用意されていますが、e-Gov(電子政府の総合窓口)のホームページからダウンロードすることもできます。
電子政府の総合窓口e-Gov「事実上の倒産認定申請」
http://shinsei.e-gov.go.jp/search/servlet/Procedure?CLASSNAME=GTAMSTDETAIL&id=4950000009652&fromGTAMSTLIST=true&SYORIMODE
※ページ下部の「書面による手続に関する情報」の「申請書様式」からダウンロード
STEP2. 労働基準監督署に確認申請書を提出
認定通知書が交付されたら、未払賃金を受ける労働者ひとりひとりが個別に、労働基準監督署に確認申請書を提出する必要があります。
この書類に、住所、氏名、事業所の住所、名称、未払い賃金額などを記載します。
その際、未払い賃金についての資料(給与明細やタイムカード、出勤簿など)も添付します。
そして、確認申請書に問題がなく、未払いを証明する資料も十分にそろっていれば、確認通知書が交付されます。
なお、確認申請書は、労働基準監督署に備えてありますが、e-Gov(電子政府の総合窓口)のホームページからもダウンロードできます。
電子政府の総合窓口e-Gov「未払賃金額等の確認申請」
http://shinsei.e-gov.go.jp/search/servlet/Procedure?DISPLAY=DETAI&SEQNO=0000010925&SYORIMODE=SID001&TETNAME=%96%A2%95%A5%92%C0%8B%E0%8Az%93%99%82%CC%8Am%94F%90\%90%BF&keywordOr=&dspcnt=&frompos=&CLASSNAME=GTAMSTDETAIL&id=4950000009653&fromGTAMSTLIST=true&fromGRPTETMSTLIST=&keywordNameIn=&displayHusho=&grpid=&procID=&keyword=&serverState=1
※ページ下部の「書面による手続に関する情報」の「申請書様式」からダウンロード
STEP3. 確認通知書に必要事項を記入し、労働者健康福祉機構へ提出
確認通知書の左半分には、未払賃金の立替払請求書と退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書があります。
さきほどの「法律上の倒産の場合」の「STEP2. 証明書に必要事項を記入し、労働者健康福祉機構に提出」のところ同じなので、そちらを参照してください。
STEP4. 指定した口座に振込まれる
提出書類が審査され、内容に問題がなければ、約30日以内に指定した口座へ立替払金が振り込まれます。
事実上の倒産の場合、手続きがかなり複雑なので、流れを下記に示してみました。
引用元:労働者健康福祉機構パンフレット「未払賃金の立替払制度のご案内」
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/tatekae_seido_Pamphlet2808.pdf
退職前に準備しておきたいもの
正確な未払い賃金の金額を証明するための書類は、労働基準監督署で提示を求められる場合があります。
下記のような書類の原本、もしくはコピーをあらかじめ用意しておくといいでしょう。
- 過去の給与明細
- タイムカード
- 出勤簿
- 労働契約書
- 就業規則
経営者と労働者の間で、賃金の金額の認識が合わないことも考えられます。
そうすると、申請が通らなかったり、時間がかかったり、時には経営者側との間でトラブルが生じることもあります。
そうならないためにも、これらの書類はきちんと用意しておきましょう。
また、労働者名簿に自分の名前が入っていないかもしれません。そんなときに役立つはずです。
おまけ 退職所得控除が受けられる!
立て替え払いによって受け取った賃金は、基本的に退職所得として課税されます。
この場合、退職所得控除が受けられるのです。
控除額については、下記の表を参照してください。
勤続年数 | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下の場合 | 40万×勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年を超える場合 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
退職所得控除を受けるためには、前章にでてきた退職所得の受給に関する申告書・退職所得 申告書を労働者健康福祉機構に提出する必要があります。
この書類を提出しないと、受け取った金額の20%相当額が源泉徴収されます。
いかがでしたか?
未払いの賃金を取り戻すために、ぜひこの未払賃金立替払制度を利用してください。
そして、不明点や疑問点がありましたら、近くの労働基準監督署や労働者健康福祉機構に相談してみてください。
労働基準監督署は、各県の主要な市区町にあります。
厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/location.html
また、労働者健康福祉機構には、電話の相談窓口もあります。
労働者健康福祉機構 産業保健・賃金援護部 審査課 立替払相談コーナー
電話相談窓口:044-556-9881
相談受付時間:月~金の9時15分~17時
気軽に相談してみてください。
最後になりましたが、会社が倒産して失業したなら、未払賃金を取り戻すだけでなく失業保険を受け取りましょう。
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