更新日:2017/07/10
社長のための人件費削減。社員のやる気を維持したまま給料カットする方法
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資金繰りが苦しくなると、コスト削減のため 人件費をカットしなくてはならないときもあるでしょう。
しかし、人権費をカットすることで社員のやる気を削いでしまうかもしれません。
また、「これからどうなるのだろう...」と不安にさせてしまいますよね。
では、社員のモチベーションを下げずに、人件費を削減する方法はあるのでしょうか?
今回は、下記3つの方法を紹介していきます。
- 残業代など、割増賃金の削減
- 給与・ボーナスのカット
- 副業の解禁および推奨
会社のため、泣く泣く人件費削減を検討している社長は、ぜひ一度目を通してみてください。
まずは残業代・割増賃金の削減から
残業代・割増賃金の削減はもっともリスクが少なく、社員にとっての抵抗も少ない施策です。
割増賃金は、所定時間外や休日、深夜時間帯に労働させた場合に会社側が支払わなければならない賃金のこと。
この場合、通常に比べ最低でも25%増の賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。
では、割増賃金を削減する方法として、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
ノー残業デーの実施
ノー残業デー。
つまり、残業禁止日をつくることで、強制的に残業時間を削減する方法です。
そして、残業禁止には、「人件費の削減」と「仕事の効率化」という2つのメリットがあります。
今まで残業して終わらせていた仕事を定時で終わらせるには、業務の効率を改善するしかありませんからね。
ノー残業デー実施に成功した会社の例
トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社では、残業をなくすため下記のような施策を実行しました。
- ノー残業デーを徹底実施。定時になったら電気をすべて消灯する(最終的に毎日ノー残業デーに)
- 残業してしまった部署に再発防止の反省会を義務付け。反省会では、原因を徹底的に洗い出し、再発させないための対策を練る
- 残業した社員が属する部署全体のボーナスを減額する
以上を徹底した結果、残業する社員はゼロになりました。
また、社員ひとりひとりが「残業せずに仕事を終わらせるにはどうすればいいか」考え、工夫するようになったため、業務の効率が劇的に改善されました。
結果的に、トリンプの業績は19期連続増収増益。
以前とくらべて労働時間は減っているのに、業績は延びていったのです。
残業許可制を採用する
残業許可制とは、事前に上司に残業を届け出、許可が下りた場合のみ残業できますよ、という制度です。
これで、やることはないけどダラダラ残業してしまう"なんとなく残業"や、みんなが帰らないから帰れない"お付き合い残業"、残業代を稼ぎたいだけの"小遣い稼ぎ残業"など、ムダな残業を減らすことができます。
ポイントは、あくまで"許可制"であることです。
届け出があったらからといって、なんでもかんでも許可していたら許可制の意味がありません。
「届け出にある残業の内容・時間が適切なものであるか?」
上司がきちんと判断する必要があります。
1年単位の変形労働時間制を導入する
労基法32条により、「1日8時間以上、または週40時間以上労働させた場合は割増賃金を支払わなければならない」と定められています。
これは、繁忙期・閑散期がある会社にとってはやっかいな問題です。
「暇を持て余してしまうくらいやることがない時期」と「いくら残業しても仕事が終わらない時期」があるなら、それに合わせて労働時間を変更したいですよね。
そこで、1年単位の変形労働時間制を導入するという手があります。
1年単位の変形労働時間制とは、ある期間(1年以内)を一定の期間とし、その期間内における週間労働時間の平均が40時間を超えない範囲なら、労働時間や出勤日を多少融通できる、という制度です。
これなら、繁忙期・閑散期に応じて融通をきかせられます。
たとえば、一定の期間を半年としましょう。
その半年の間で、週間労働時間が43時間になる週や、45時間になってしまう週があっても、平均して40時間を超えないようならOK(割増賃金を支払う必要なし)なのです。
これをうまく利用できれば、割増賃金を削減することができますね。
フレックスタイム制を導入する
フレックスタイム制とは、ある期間(1ヶ月以内)を一定の期間とし、その期間内における週間労働時間の平均が40時間を超えない範囲なら、労働時間や出勤日を多少融通できる、という制度です。
さきほどの変形労働時間制と似ていますね。
ただ、両者には大きな違いあります。
フレックスタイム制は、労働時間を社員の裁量で決められるのです。
つまり、「いつ出勤していつ退勤するか」自分で決められます。
労働時間帯には「出勤していなければならない時間帯(コアタイム)」と、「どちらでもいい時間帯(フレキシブルタイム)」の2つがあり、この配分は会社側が定めます。
業務のアウトソーシング(外注化)や配置転換を検討する
特に残業が多い部署に関しては、業務のアウトソーシング(外注化)や配置転換を検討しましょう。
業務のアウトソーシング(外注化)
業務の一部をアウトソーシング(外注化)するのもひとつの手です。
特にシステム開発や調査業務、会計業務などは、専門の会社にアウトソーシングしたほうが人件費等のコストをおさえられる場合があります。
配置転換
配置転換によって、人が足りない部署・余っている部署のバランスをとりましょう。
ただ、配置転換をする際は、社員の資質や能力、仕事内容などの事情をじゅうぶん考慮する必要があります。
給与カットは社員が納得するやり方で
給与のカットを検討する際は、その順番が大事です。
ボーナスカット
⬇
給与の一時カット
⬇
給与のベースダウン
まずはボーナスをカットし、それでも間に合わないようなら次の段階を検討しましょう。
社員の生活に影響が出ないよう、配慮しなければなりません。
また、実際にカットすることになったら、まず上の役職から実施していきましょう。
役員
⬇
管理職
⬇
一般社員
⬇
アルバイト、契約社員等
役職の高い順でカットしていけば、少しは社員の理解も得られやすくなるでしょう。
ボーナスのカット
業績に応じてボーナスを支給する、いわゆる業績連動型を導入している会社なら、ボーナスカットも進めやすいでしょう。
一方、一定のボーナスを支給している会社はどうでしょうか。
この場合は、業績連動型のボーナス制度を導入する必要があります。
導入にあたっては、まず社員に現状を説明し、制度の変更について理解を得てください。
そして、今後はどういう基準でボーナスの金額等が決まるのか、その基準をはっきり示す必要があります。
給与の一時カット
やむを得ず給与の一時カットをおこなう場合は、10%程度におさえるのが無難です。
また、現状や今後の見通しを社員に説明し、理解を得る必要があります。
- 資金繰りの現状
- 給与カットが資金繰りにもたらすメリット
- 経営再建の見通し
- カットする期間
上記のことをきちんと説明しましょう。
なお、カットの期間については、「業績が回復するまで」など曖昧な表現ではダメです。
3ヶ月、半年など、具体的な時期を明示してください。
給与のベースダウン
給与のベースダウンをおこなう際は、これまでより慎重な配慮が求められます。
まず、可能なら年度はじめの給与改定のタイミングでおこなうのが望ましいです。
そして、ダウンの内容ですが、昇給を据え置くか、カットをするのであれば10%以内におさえるのが妥当でしょう。
また、現状や今後の見通しを社員に説明する必要があります。
- 資金繰りの現状
- 経営再建の見通しを含めた、今後の展望
- 社員をリストラしないためのベースダウンであること
社員の理解を得るため、上記のことをきちんと説明しましょう。
副業を解禁し推奨する
少し遠回しな方法ですが、副業を解禁するという手もあります。
副業が軌道にのれば、その社員に対して労働時間短縮や給与カットを伝えやすくなりますよね。
うまくいけば 社員は収入が増え、会社は人件費削減しやすくなる方法です。
しかし、この方法は、他と違い人件費削減の効果がわかりにくい、現れにくいという欠点があります。
- 副業を実施する社員がどれほどいるか?
- 副業で収入を得られるようになる社員がどれほどいるか?
- 結果的にいくらの人件費削減につながるのか?
こういった不確定要素が多すぎるのです。
したがって、副業解禁を人件費削減策の中心に据えるのはおすすめできません。
他の方法と併用しましょう。
また、副業を解禁するだけでなく、推奨するため、会社側で施策をとることもできます。
例)
- 副業に関する書籍を会社で購入し、貸し出す
- 業務終了後も会社のツール(パソコンなど)を使ってOKとする
おまけ 社員を休業・出向させるときに使える助成金
会社の経営が悪化、事業の縮小を余儀なくされ、人員に余剰が生じた場合、最後の手段であるリストラを検討する経営者も多いでしょう。
しかし、リストラを実行すると、残った社員のモチベーションを大きく下げてしまうおそれがあります。
そこで、ひとまず下記のような手段を検討してみてはいかがでしょうか。
- 社員を休業させる
- 社員を子会社・関連会社に出向させる
このとき、大きな助けになってくれるのが「雇用調整助成金」です!
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化その他 経済的な理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(主に休業、出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されるお金のことです。
対象者
雇用保険に入っている事業主であり、雇用保険料を支払っている社員(被保険者)であれば、支給対象となります。
主な受給要件
- 最近3ヶ月の生産量、売上高などが前年同期と比べて10%以上減少していること
- 大企業の場合:最近3ヶ月の雇用保険被保険者、または派遣労働者の人数(平均)が、前年同期と比べて5%以上、かつ6人以上増えていないこと
- 中小企業の場合:最近3ヶ月の雇用保険被保険者、または派遣労働者の人数(平均)が、前年同期と比べて10%以上、かつ4人以上増えていないこと
受給額
大企業 | 中小企業 | |
---|---|---|
社員を休業 させる場合 |
休業手当または賃金相当額 のうち、1/2を受給できる | 休業手当または賃金相当額のうち、2/3を受給できる |
社員を出向 させる場合 |
出向元事業主の負担額のうち、1/2を受給できる | 出向元事業主の負担額のうち、2/3を受給できる |
※ 1人1日あたりの受給額の上限は、7,805円までとなっています(平成26年8月1日時点)
まずはハローワークや都道府県労働局に相談してみましょう。
参考:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/guide.pdf
さて、人件費削減手段に関する3つの方法+αはいかがでしたか?
すぐに着手できるものから、人事体制を大幅に変えるものまで、さまざまな手段がありましたね。
できるだけ社員のモチベーションを下げずに人件費を減らす方法で進めていきましょう。
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