カードローン会社の審査担当が明かす、審査ハードルと社員の本音

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消費者金融や銀行のカードローンに申込むと、必ずおこなわれるのが審査。

はじめての審査は誰でも緊張するものですし、はじめてでなくとも過去に他社の審査に落ちてしまった経験があれば、二社目の審査はとっても不安なはずです。

巷には、キャッシングの審査のポイントをまとめたサイトがたくさんありますが、どれも信ぴょう性に欠けていたり、取材元が明らかにされていないものばかりですよね。

実際に消費者金融会社の中の人は、個人情報のどこに注目しているのでしょう?

また、どのように融資額が決まるのでしょう?融資額を上げるために私たちが工夫できることはあるのでしょうか?

このあたりについて、今回は大手消費者金融に勤められていた男性に、審査の裏側をくわしく伺うことにしました。

審査がどのようにおこなわれ、結果が出るのか、社員のみぞ知る審査・申込みの流れをまとめています。

  • 目次
  • 元社員が明かす!大手消費者金融の実態
  • 「どんな人が審査に通るのか?」はだいたいわかります
  • 審査の具体的な流れ
  • 申し込みの時に聞かれること
  • この職業なら融資額はこれくらい
  • 収入証明書を出せば融資額が上がるって本当?
  • 在籍確認は省略できるか?
  • 信用情報で審査NGになるのはこんな人
  • 初回の融資額は多くても50万円
  • こんな人でも審査に通るかも
  • 借金の記録は顧客データに永遠に残る?
  • 自動契約機の向こう側はこうなっていた
  • インタビューを終えて

今回インタビューに答えてくれたのは...

名前:村上 守(仮名)
性別:男性
当時の年齢:21歳~23歳
勤めていた金融機関:大手消費者金融 L社
勤めていた期間:2002年~2004年
仕事内容:営業・債権回収

元社員が明かす!大手消費者金融の実態

今回お話を伺ったのは、消費者金融の元社員だった村上守(仮名)さん、33歳。気さくで明るい雰囲気の方です。

村上さんは19際から23歳まで、消費者金融大手のL社とT社、二つの業者で勤務された経験があります。そのうち2002年~2004年まではL社で、営業や債権回収業務を担当していました。

今回はこのL社での貸付業務について、お話を聞いています。

「どんな人が審査に通るのか?」はだいたいわかります

― 村上さんはL社でどんなお仕事をしていたのですか?

私はL社のとある店舗に勤務していました。スタッフは女性7人・男性4人の、L社ではごく普通の規模の店舗です。

私をはじめ男性社員は、主に督促の電話をかけたり、自宅を訪問して集金をする債権回収の仕事をしていました。

一方で店頭や電話で融資の受付をしたり、自動契約機の対応も経験しています。

ですから「お客さんが申込みをする時にどんな手続きをするか?」「どんな人が審査に通るのか?」はだいたいわかります。

ただし私がL社に勤めていたのは、今(2014年)から10年以上前のことなので、今とは状況がかなり違うかもしれません。でも基本的な仕事内容は同じなので、参考になることもあるでしょう。

審査の具体的な流れ

― L社でお金を借りる時は、どんな手続きが行われるのですか?

現在、消費者金融の契約は、インターネットが主流ですよね。しかし私が勤めていた頃はほとんどのお客さんが、店舗の窓口か自動契約機で申し込みをしていました。

お客さんが来店してからの手続きの流れは以下の通りです。

  • 1お客さんに「名前」「職業」「年収」などの個人情報を記入してもらう
  • 2窓口のスタッフがパソコンに個人情報を入力し、以下の確認作業をおこなう
    住所・連絡先の確認(自宅や勤務先の住所・電話番号が実在する住所・電話番号か?)
    本人確認書類(健康保険証、運転免許証等)の確認
    勤務先の在籍確認(勤め先で本当に働いているか?)
    信用情報の照会(他社で借入れしているか?借入総額はいくらか?)
  • 3お客さんの情報を本社に送り、本社で審査がおこなわれる
  • 4店舗に審査結果が通知され、そのうえで支店長が融資の最終判断
  • 5キャッシングカードの発行

ちなみにL社は、ちょうど私が勤めはじめた頃(2002年)、外資系の会社が経営するようになりました。

それまでは各店舗で審査をおこなっていたのですが、外資になってから、審査はすべて本社でおこなうようになったのです。

申し込みの時に聞かれること

― ではまず、お客さんが来店するところから詳しくうかがいましょうか?現在のL社の申し込みフォーム(L社のホームページ内)を見ると、お客さんは申し込みの時に次のような個人情報を記入するようですね?これは当時(2002~2004年)と変わらないですか?

名前、生年月日、性別、既婚・未婚、住所、居住形態、居住年数、家賃・住宅ローン、同居人数、固定電話の有無、自宅電話番号、携帯電話番号、家族承知の有無、有職・無職、勤務形態、勤務先名、業種、職種、勤務先電話番号、従業員数、保険種別、勤続年数、給料日、月収、年収、他社借入件数、他社借入金額、運転免許証の有無

はい。これは当時とほとんど変わりませんね。当時はお客さんに記入してもらった申込用紙を見て、窓口のスタッフが個人情報をパソコンに入力していきました。

それをさらに奥にいるスタッフに見せ、情報に嘘がないかどうかを隅々まで確かめていくのです。

まずは住所や電話番号が実在のものかどうか

― どんなことを確認するのですか?

自宅や勤務先の住所・電話番号を書いてもらいますが、これが本当に実在するのかを調べます。

当時は「104」に電話して、自宅と勤務先の名前・住所・電話番号を確認していました。

この確認作業は必須で、たとえ勤務先が誰でも知っているような大企業でもおこなっていました。

― なかには電話帳登録をしていない家・会社もありますよね?そういう場合はどうしていたのですか?

店舗スタッフが入力する「104」という項目があり、そこに「なし」と記入されます。ただしその住所に住んでいること、勤めていることが確認できれば問題ありません。

104の登録確認は念のためにおこなう作業ですね。

家族の連絡先を聞く理由

― 「住居形態」という項目には、以下のような選択肢があります。これらは審査に関係あるのでしょうか?

当時も持家か賃貸かは聞いていたと思いますが、審査に影響するかどうかははっきりわかりません。ただし「持家」の人には、当時L社が販売していた「不動産担保ローン」をすすめることはありましたね。

― 「家族承知の有無」という項目がありますが、これはなぜ確認するのですか?

「家族に借入のことを知っている人がいるかどうか?」を確認するものです。

ただし、たとえ家族でも、本人以外に支払いの請求はできませんから、「あなたが代わりに払ってください」などと言うことは絶対にありません。

― 家族の連絡先までは聞かないようですね?

現在はないようですね。でも当時は自己申告で実家など親族の連絡先を書いてもらっていました。

4割の人は書きませんでしたが、残り6割の人は信用を上げるために書いていましたよ。ほとんどの人が実家の電話、親・兄弟の名前でしたね。この連絡先まで電話帳で確認することはしません。

こうした電話番号には、本人と連絡がつかなくなった時にかけることがありました。

※ 編集より補足
現在は正当な理由がなければ、本人以外に電話をかけてはいけないことになっています。

この職業なら融資額はこれくらい

― 「勤務形態」「勤続年数」「月収」など、職業についての項目は審査に一番大きく影響しますよね?どういう職業が審査に有利なのか分かりますか?

審査を行うのは基本的に店舗ではなく、本社です。私たちはデータをまとめて本社に送り、審査された結果を確認する立場ですから、はっきりした基準は分かりません。

ただし、たくさんの審査結果を見ているので、どういう職業の人が審査に有利なのかはなんとなく分かります。その範囲での回答にはなりますが...

― 現在、L社の「勤務形態」という項目は、「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パートアルバイト」「自営業」「学生」から選択しますが、この中でもっとも審査に有利なのはどの勤務形態ですか?

順位をつけるとしたら、このようになりますね。

   雇用形態  初回融資額
1 正社員 30~50万円
2 契約社員、派遣社員 20万円
3 パート・アルバイト 10万円
自営業 ?円(規模による)
× 学生 0円

もちろん、一番審査に有利なのは正社員。公務員もここに含まれます。契約社員と派遣社員は同じような扱いです。それよりも下になるのが、パート・アルバイトの人ですね。

― それぞれの初回の融資額はどれくらいでしょうか?

正社員の初回の平均は30万円でしたね。一流企業で勤続年数が長ければ、50万円になることもあります。

ただ、たとえ一流企業でも、新入社員には50万円は出しません。はじめは融資額30万円で、半年後に問題がなければ「返済能力がある」とみなされて増枠されるという感じです。

契約社員や派遣社員は20万円。
パート・アルバイトは10万円程度でしょう。

― 自営業の方はどうでしょうか?

自営業は、従業員数や年数など会社の規模によりますが、初回の融資額はたとえ大きい会社でもせいぜい30万円ですね。

ただし「会社の経営のために借りる」場合は会社が傾いている可能性があるので、審査は慎重に行われます。

― 学生はどうですか?

学生には基本的には貸し出しをしていませんでした。ただしアルバイトをされている人は別です。アルバイト収入がある人は、「パート・アルバイト」の人と同じ扱いになります。

― 職業の「業種」には以下のような選択肢があります。このなかで審査に不利になりそうな業種はありますか?

サービス業・製造業・土木建設業・小売業・運輸業・情報システム業・卸売業・喫茶飲食業・スナッククラブ・医療機関・道路貨物運輸・広告サービス・教育・金融保険・地方国家公務・新聞出版放送・不動産業・通信業・電気ガス水道・農業造園業・警察消防自衛隊・水産漁業・鉱業・林業・法務

「金融保険」という業種は要注意ですね。
同業の消費者金融に勤めている人への融資はNGでしょう。銀行員もほぼダメで、融資額は多くても10万円でした。

また「喫茶飲食業」「スナッククラブ」などの水商売は、最初の融資額は10万円ぐらい。信用はあまり高くなかったです。

― 「職種」には以下のような選択肢があります。こちらはどうでしょうか?

役員・管理職・内勤事務・外勤事務・オペレーター・店頭販売・訪問移動販売・勧誘あっせん・商品セールス・接客サービス・店主個人経営・専門職技術職・作業労務

当時、ここまで細かく聞いていたかは、よく覚えていません。それほど影響はないとは思いますが...。

― 勤め先の「従業員数」を記入する欄もあります。「従業員数が何人以上だとOK」などの基準はあるのでしょうか?

勤務先の従業員数の制限は特になかったと思います。

― 「勤続年数」は「何年以上ならOK」という基準はありましたか?

勤続年数が3年以上なら、ほぼ問題はないでしょう。勤続年数が1年以内だと、たとえ大企業でも融資額は20~30万円ぐらいに抑えましたね。

大企業や公務員以外で勤続年数が「6ヶ月未満」の人には、融資は行わなかったと思います。

アルバイト・パートの人は、勤務年数が1年以上でないと厳しいでしょう。

― 「給料日」を記入するのはなぜですか?

「給料日」の数日後に「返済日」を設定するからです。つまりL社では、人によって返済日がバラバラでした。

― 「月収・年収」はどれくらい審査に影響しますか?

「年収」が130万円か108万円以下、「月収」は10万円か5万円以下だと、融資が難しかったと思います。この基準ははっきりと覚えていません。

― 「無職」という選択肢もありますが、こういう人は審査に通るでしょうか?

年金生活者でしたら、受給額に応じて融資が行われていました。当時、主婦は夫の年収に応じて融資していましたが、今は基準が大きく変わっていますよね。

収入証明書を出せば融資額が上がるって本当?

― 現在L社では、本人確認書類として「運転免許証」か「それ以外(健康保険証・パスポート・在留カード等)」の提出を求めているようですが、これは当時と変わりませんか?

当時の本人確認書類は健康保険証か運転免許証のみでした。そのうち重要視されたのは健康保険証で、特に社会保険証(あるいは組合保険証)を持っている人が有利でした。

国民健康保険証がダメなわけではありませんが、社会保険証の方が有利です。社会保険証なら、「勤務先が社会保険に加入できるほど、大きくてきちんとしている」と見なされますから。

パスポートは現住所の記載がないのでダメです。もしパスポートをご提出いただいた場合、「公共料金の支払いを証明するもの」「住民票」などを一緒にご提出いただいて「三点チェック」をしないといけませんでした。

― 「収入証明書」の提出は必須でしたか?

私が勤めていた当時、収入証明書は必要ありませんでした。ただし正社員の場合、収入証明書を提出して「給料が高い」ことがわかれば、融資額が上がることもありましたね。

― 自営業でも収入証明書は必要ないのですか?

希望額50万円以下なら、自営業でも必要ありませんでした。もし提出してもらうとしたら、青色申告の納税額です。これがあれば多少は審査に有利に働くこともありました。

― アルバイト・パートでも収入証明書は必要ないですか?

はい。不要でした。
それにアルバイト・パートの場合はそもそも年収が低いので、もし収入証明書を出してもらっても、融資額はたいして上がらないでしょう。

在籍確認は省略できるか?

― 在籍確認はどのようにおこなうのですか?

在籍確認は「本当に仕事をしているかどうか?」を確認するもので、勤務先に直接電話をかけます。

ただし「L社」の社名は名乗りません。親しい友人や業者のふりをして、「山田ですけど、伊藤さんはいますか?」というかんじで、個人名で電話をかけます。

電話に出た人が「伊藤は出かけています」「休みです」などと答えれば、在籍確認が取れたことになります。電話をとった相手の反応はあっさりしていて、ほとんど怪しまれることはありません。

在籍確認はすべてのお客さんに必ずおこないます。在籍確認ができなければ、お金は貸せません。

― 在籍確認はいつするのですか?

お客さんの来店中にかけます。ただし本人の目の前ではなく、裏の方でやっていました。

― 在籍確認の電話のかけ方について、お客さんから要求はありましたか?

たまにありましたね。
「業者的な感じで電話してほしい」とか...

ただし「N生命ですが...」というように、実在の会社名を使うと嘘になるので、「保険会社のアンケートですが...」程度の言い方をしていました。その辺はL社では「あいまいにしておくように」と指示されていたんです。

― 自営業の人はどのようにして在籍確認をするのですか?

自営業の方は、自宅と会社の電話が兼用なら、自宅にかけて確認できればOKです。自宅と会社の電話が別の場合は、自宅と会社の両方に電話します。

また、すべて一人で営業しているような自営業の場合は、まず本人に自宅へ戻ってもらい、指定の時間にこちらから電話をかけていました。

ちなみに奥さんが家にいて、借金のことを知らない場合は「女性からはかけないでほしい」と言われることはありましたね(おそらく浮気を疑われるからでしょう...笑)

― 派遣社員の在籍はどのように確認しますか?

派遣社員の場合、基本的に現在働いている派遣先に連絡します。そこで確認が取れない場合は、登録している派遣元にかけていました。

信用情報で審査NGになるのはこんな人

― 「信用情報の照会」とは、どんなことをするのですか?

L社では、CIC(シー・アイ・シー)という信用情報機関に加盟していました。

このCICのデータベースにアクセスし、お客さんの名前、住所、生年月日などを入力すると、その人のこれまでの借入履歴、借りた金額や返済状況等(信用情報)が出てくるのです。

そして、「他社で借入れをしているかどうか?」を確認します。借入れがある場合は「借入額はいくらか?」「返済状況はどうか?」を見ます。

審査においてもっとも重要な確認事項でした。

信用情報を確認した結果、他社の借入れが多かったり、事故情報(例:滞納歴、債務整理歴)があることがわかると、融資はできません。

― CICでは、どのように借入状況が表示されるのですか?

CICは、主に消費者金融や信販会社の情報を取り扱っています。

当時(2002~2004年)、L社がアクセスできたのはCICのデータベースだけでしたから、お客さんが銀行やその他の金融機関から借入れていたとしても、当時のL社ではそれらの借入れを把握することはできませんでした。

CICのデータベースにアクセスし、お客さんの名前、住所、生年月日などを入力すると、お客さんの「名前」「生年月日」「勤務先の会社名」が表示されます。

さらに、他社で借入れがある場合は、業者ごとに「最初の借入日」「現在借入残高」「最終返済日」が表示されます。

ただ、借入先の金融機関の名前は出ません。残高と日付が羅列されているだけです。複数社から借入れがある場合は、たとえば3件なら「3件」と表示されるだけです。

信用情報のイメージ(CIC)

名前 生年月日 勤務先名
伊藤かまとめ 昭和60年10月2日 きらきら商事
最初の借入日 現在の借入残高 最終返済日
◯月×日 50,000円 ◯月×日
◯月×日 30,000円 ◯月×日
◯月×日 50,000円 ◯月×日
借入件数 3件

また、「滞納」「債務整理」等があれば、それについて日付と記号が表示されます。

― お客さんは申込用紙に「他社借入件数」「他社借入総額」を書きますよね?本人が書いた情報とCICから得た信用情報が大きく違っている時はどうしますか?

お客さんに書いてもらう「他社借入件数」「他社借入総額」は自己申告なので、基本的には参考にしません。借入状況についてはCICの情報だけを信じます。

たとえ明らかに嘘をついている場合でも、それで「信用が落ちる」ということもありません。

― 信用情報を確認して、融資がNGになるのはどんなケースですか?

滞納、債務整理(自己破産、任意整理、特定調停、個人再生)の情報があればその時点で融資を断ります。また他社での借入れが多過ぎる人も難しいです。

― 「他社での借入れが多過ぎる人」は、どうやって判断するのですか?

たとえば、本人確認書類として国民健康保険証を提出した場合、他社借入件数3件まで、借入総額は150万円以下。

社会保険証(組合保険証)を提出した場合、他社借入件数5件まで、借入総額は300万~350万円以下。

といったような条件があったと思います。
件数より金額を重視していました。

たとえば国民健康保険証の人が「借入件数2件」でも「借入総額150万円以上」になるとNGでした。

※ 編集より補足
2014年現在、消費者金融やクレジットカード会社など、貸金業者からの借入金額は総量規制によって規制されています。貸金業者は、利用者の年収の3分の1以上の金額を貸し付けることはできません。

初回の融資額は多くても50万円

― 本社に情報を送る前に、店舗で「融資不可」を決定してしまうことはありましたか?

ありました。基本的に審査をするのは本社ですが、次のようなケースは店舗で断っていましたね。

  • 信用情報に問題があった人
  • 収入のない学生
  • 勤続年数が6ヶ月未満の人(大企業や公務員以外)

先ほど話したとおり、まず信用情報に滞納、債務整理の情報があると不可。借入件数・借入額が多い方も不可です。

また、収入のない学生にも貸しません。
そして、大企業や公務員以外で、勤続年数6ヶ月未満の人も店舗でお断りしていました。

― では、本社へ送る前に店舗で「融資」を決定することはありましたか?

それは絶対にありません。まずは本社に問い合わせて、判断を仰ぐ必要があります。

他社の消費者金融では、少額ならば現場の店舗で融資を決めてしまうところもあるようですが、L社の店舗にはその権限はありませんでした。

― 本社とはどういうやりとりするのですか?

お客さんが記入した個人情報とCICから得た信用情報の両方をオンラインで本社に送ります。本社では、その情報を元に「融資するかどうか(合格・不合格)」「与信枠(融資額)」を決め、やはりオンラインで返信が届きます。

この審査にかかる時間は10分くらい、もちろんお客さんがいる間に対応します。

― 本社でどのように審査がおこなわれているのかは、店舗のスタッフにはわからないのですか?

はい。私たち店舗スタッフは、本社で誰が審査しているのか、人なのか、コンピューターなのかすら知りません。「どんな人がいくらくらいの融資額になるか」の判断基準も教えられていないんです。

ただし、初回の融資額は最大50万円でした。これ以上になることは、まずありませんでしたね。

こんな人でも審査に通るかも

― 店舗に審査結果が知らされてからはどうなりますか?

審査結果をもとに、担当スタッフと支店長で貸すかどうかを最終判断し、支店長が決済します。「融資可能」ならば、融資額をお客さんに伝えて、カード発行です。

「融資不可」ならば、「今回は融資を見送らせていただきます」と伝えます。

ただし、本社の審査が不可でも、融資ができそうなお客さんは、「何とか融資できないか」を模索します。

また「本社は30万円と言ってるけれど、50万円にアップできないか?」など、融資額の引き上げを検討することもありました。

― 本社で「融資不可」なのに、店舗でわざわざ「融資可能」にしたり、融資額を上げようとするのはなぜですか?

L社では店舗同士で融資額と顧客数を競っていました。店舗には毎月の売り上げ目標があります。また融資が実行されると店舗スタッフ個人の営業成績(もちろん給料アップ)にもつながるんです。

だから、私たち店舗スタッフは「なるべくたくさんの人に貸したい!」と思っていました。

そのためには、不合格者にもいいところがないか、「収入が安定している」「他社の借入が少ない」など、融資できる要素はないかを再度よく確認するのです。

― 実際に「不可」から「可」に逆転しそうケースどはどのようなケースですか?

「国民健康保険を提示した人は、他社借入件数3件まで、借入総額150万円以下」というルールのために、「他社借入件数が4件、借入総額40万円」というような人は不可になります。

借入件数が多いから審査に通らないのですが、私たちは借入総額が少ないところに注目して、「貸してあげたい!」と提案するのです。

― そのような時はどのような手続きになるのですか?

支店長より上の立場の、支社長とかエリアマネージャーという複数の店舗を管理している上司に電話をして、「このお客さんはイケます!」と説明します。

それで「OK」が出れば融資可能です。この手続きに時間はかかりません。

このような店舗の裁量で、かなり厳しい条件の人でも融資可能になるケースもありました。この仕組みは、恐らく今も変わっていないでしょう。

― 他社の借入件数・借入総額が多く、条件から大きく外れていても、融資可能になることはありましたか?

他社借入れが多い人には、「ほかの借入れをうちでまとめませんか?そうすればうちで融資できます」と勧めていました。

当時はまだ「おまとめローン」というものがありませんでしたが、おまとめだと融資できることもあるのです。

また持ち家の人には、「不動産の担保ローンがあるので、それなら融資できますが?」と勧めていましたね。

こちらから「収入が安定していることを証明するものがないか?」を積極的にお客さんに聞くこともありました。

収入が少なくて審査に落ちてしまう自営業の人には、「収入がいい時の確定申告書はありませんか?」と聞いて、それを提出してもらったり...

今は厳しくなりましたが、当時はそれで融資が決まることもあったんです。

借金の記録は顧客データに永遠に残る?

― では反対に、本社の審査で通ったのに、店舗で融資不可になることはありましたか?

基本的にはありません。
ただしこういう例外もあります。

信用情報以外に、L社が独自で保有している「顧客データ」というものがあります。「顧客データ」には、L社で借入したことがあるお客さんの情報がすべて残っています。

CICの情報(信用情報)のうち、滞納や債務整理などの事故情報は5年で削除されますが、この社内顧客データは保存期限がありません。

たとえば改めて顧客データを確認してみたところ、信用情報にはなかった事故情報が見つかれば、その人には絶対に貸しません。

また「L社の利用は初めて」と言っていたのに、顧客データを見たら「25年前にL社で借りて返済しないで放置していた」ことが判明したケースもあります。

もちろんこういう悪質なお客さんには貯まりにたまった遅延損害金を含む返済額を請求しますし、新たに融資はできません。

― 顧客データにはどんな情報が残されているんですか?

申込用紙に書いた個人情報・借入記録・返済記録・滞納記録まですべてが保存されています。

またお客さんと電話で話した内容、クレーム対応した記録なども残されています。

― 今(2014年)でもすべての顧客データが残っているのでしょうか?

個人情報保護法ができた頃から、顧客データの扱いは難しくなってるみたいです。

保存期間は法律で決められていると思いますが、どれくらい保存されているのか、現在の状況は正直分かりません。

また、閲覧にも制限があるようです。私が勤めていたころ(2002~2004年)は、社内の誰でも閲覧できましたが、今は融資を受けたお客さん本人の了承や、社員ナンバー・IDの入力がないと見られないらしいですね。

自動契約機の向こう側はこうなっていた

― 自動契約機の手続きは、店舗での流れと同じですか?

はい、基本的な流れは同じです。
自動契約機は店舗の周辺エリアに複数ありますが、すべてどこかの店舗が管理しています。

店舗は土日休みですが、自動契約機は土日でも利用できます。

ただし土日に申し込みをしても、在籍確認ができませんから、その日のうちに貸し出しはできません。その時はカードだけ発行して、平日に在籍確認ができた時点で、顧客に審査結果を電話していました。

― 自動契約機の向こう側にいるオペレーターはどこにいるのですか?

自動契約機の受付をエリアごとに束ねている「集中センター」にいます。ここに多数のオペレーターがいて、自動契約機の対応をしているのです。

しかし、集中センターがおこなうのはお客さんの対応と、信用情報の照会までの一連の確認作業だけです。

審査をおこなうのはやはり本社で、その審査結果を受けて最終判断をするのは、その自動契約機を管理している店舗です。

― 自動契約機に来店されたお客さんは、管理する店舗の売上になるということですか?

はい。自動契約機に来たお客さんは、機械を管理している店舗のお客です。

当時は来店よりも自動契約機で申し込む人の方が多かったので、営業の仕事は自動契約機のお客さんの管理がメインでした。

はっきり言って、これがなければ店舗はかなり暇なんです!

インタビューを終えて

「もう10年も前のことですから、現在のL社とはまったく状況が違っているかもしれませんね...」と話していた村上さん。

確かに、村上さんが金融業界を離れた後に、貸金業法の改正があり、消費者金融の審査基準は大きく変わりました。

また、自動契約機からインターネット申し込みの時代になり、審査もコンピューターが主流になっています。

ただし、村上さんが店舗で「再審査」をおこなっていたように、「人の目」による審査は今でも多数の消費者金融で残されています。

また、融資をおこなう側が「合格要素がないかに注目している」というのは、今でも変わらないでしょう。

また、信用情報とは別に、「社内の顧客データ」が長期間保存されていることもわかりました。

もし滞納をしてしまうと、後々までその記録が残り、その業者からは二度と融資が受けられなくなるかもしれません。借入れは計画的におこないましょう。

さて村上さんは、L社で滞納者からの回収業務もおこなっていました。回収業務についてのお話は後半に続きます。

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